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 王城に着くといつもとは違う雰囲気が感じられる。あと半年で結婚式を迎えるはずだった王城の華やかさは影に隠れ、重苦しく緊張に包まれているよう。


私は顔を青くしながら父のエスコートで謁見の間へと向かう。



 謁見の間の扉の前では先触れで話を聞いた兄が落ち着かない様子で待っていたけれど、私達を見つけて駆け寄ってきた。


「アレット、私の可愛い妹よ。まさかこんな事になるとは。父上、私も謁見の間に同席します」


「… お兄様」


今にも泣き出したい気持ちをグッと堪える。


扉は従者によって開かれ、謁見の間に3人で入場する。入り口より続く赤い絨毯の先には国王陛下と王妃様、第一王子のオディロン様と宰相が既に居た。


父が登城の言葉を述べると陛下は片手を挙げて挨拶が終わる。その場に居る誰もが厳しい表情だった。


空気が止まったかのように沈黙が辺りを包む。


「アレット、本当の事なの?」


1番初めに口を開いたのは王妃様だった。私は震える手を差し出して頷く。


堪えていた涙がぽたりぽたりと流れはじめる。


「あぁ、アレット。神よ、嘘だと言ってくれ」


オディロン様は涙を流す私に駆け寄り、抱き寄せて女神の采配に憤っている。


「アレット、こうなっては致し方ない。結婚式は魔王討伐後に行う。それで良いな?」


「… はい」


陛下の言葉に私は震えながらも何とか頷く。


「… して、話はここからだ。女神の紋章の事は知っておるな?努力した分だけ強くなり、使える魔法やスキルが増えていく。幸い、騎士団から剣士の紋を持つ者、魔法使い師団から魔法使いの紋を持つ者がおった。


あと2人はまだ解らぬが国を挙げて探す指示を出した。アレットは今から王城へ住まいを移し、明日から他の2人と訓練を開始するように。魔王討伐のため頑張って欲しい」


私は恐怖心や不安が込み上げてくる。オディロン様と離れたくない。苦しい感情が涙と共に湧き出そうになるのをグッとこらえ、震えながら返事をした。


 謁見の間を出ると、王城の侍女達に連れられて客室の1室へと案内された。


窓もない質素な部屋。


父と兄とはここでお別れ。婚約者のオディロン様ともしばらく会えない。


きっとこの部屋が用意されていたのは紋章持ちが逃げ出さないような意味合いもあるのだろう。

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