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26 ヒカリ4

 そうこうしている間に時は過ぎ去り2年が経とうとしていた。


「ロドリグ先生。少しは淑女っぽくなった?」


「…そうですね。下級貴族並みにはなったと思いますよ」


覚えの悪い私に匙を投げる事もなくロドリグ先生は教えてくれている。少しは先生達とも距離が近くなったような気がするわ。


あれから一度もオディロン殿下に会っていない。


「先生、私はもうオディロン殿下にお会いする事は出来ないの?」


「… 難しいとは思いますが申請をしてみると良いと思います。マーリンがやってくれるので後でお願いすると良いと思いますよ」


「分かりました。ダメ元で申請してみます」


 そう言ってマーリンにオディロンに会うお願いを出す事にした。


この2年後悔ばかりだった。


貴族としての立ち振る舞いや考え方を勉強してはじめて気づいたの。私って本当にどうしようもないほどの事をしていたんだと。後悔ばかりが頭を擡げる。





1週間ほどした後、


「ヒカリ様、王太子様との面会が叶ったようです」


「マーリンありがとう。ずっとオディロンに謝りたかったのよね!」


「… そうでございますか」


2年ぶりに後宮から出る。


 嬉しくて浮き足立っているとマーリンが『ヒカリ様の魅力が増す魔法薬をお持ちしました。是非お使い下さい』って。


彼女に言われるまま魔法薬を飲んだ。これで前より私は良く見られるわ。


オディロンは許してくれるかしら。




 マーリンと共に王城のオディロン殿下の元へと向かう。絆に会える喜びと自分のしでかしてしまった事の後悔が頭の中をぐるぐる回っている。一歩、また一歩とゆっくり進む。


廊下には行き交う貴族がチラチラと私に視線を投げている。


好奇心や恨み、軽蔑、様々な視線を感じる。


今はそんな視線も全く気にならないわ。


 マーリンは『しばらくお待ちください』と扉をノックし、入室の許可を得ている。扉は開かれ、彼の執務室に初めて足を踏み入れた。


そこには華美が一切ない。執務をこなすだけの部屋。唯一、この部屋には似つかわしくない可愛い猫のペーパーウェイトが置かれている。


やっと会えた。


絆と会えた嬉しさが込み上げてくる。けれど、私の気持ちとは裏腹に彼は憮然とした表情をしている。


最後に会った時より彼は窶れている。絆である私と会っていなかったからよね。


「ヒカリ、久しぶりだな。今日は何か用か?」


私は声をかけられてからすぐに平伏し、オディロン殿下に謝罪する。


「オディロン殿下、すみませんでした。私、何も分かっていませんでした。この世界の事、オディロン殿下の事。知ろうとしなかった。世界の小説やゲームの話の登場人物に私がヒロインとして招かれたと思っていました。知らなかったとはいえ、オディロン殿下と婚約者様の仲を引き裂いてしまった」


オディロン殿下は苦悶の表情で机を叩く。


「…だっ」


「えっ?」


私は驚き、思わず聞き返してしまった。


「今更だ!!お前が、お前が今更謝った所でアレットはもう帰って来ないんだ!」


「ア、アレット…様…?」

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