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1000文字後に妻を寝取られる男 if

作者: 青水

 ある日、知人の紹介で、よく当たる占い師に占ってもらうことになった。

 正直、俺は占いというものを当てにしちゃいない。信じていないというか、こういうのは誰にでも当てはまるようなことを言うものだ。だから、どうせしょうもないことを言われるんだろうな、なんて思っていたのだが……。


「占いました。大変不幸な未来が見えました」

「どんな未来が見えたんだ?」

「……寝取られる未来です」

「もう少し具体的に」

「あなたが、妻を、寝取られる、未来です」


 占い師は言葉を区切ってはっきりと言った。


「なんだってっ!? そんな――」

「しっ」


 占い師は口に指をあてて、喋るなといったジェスチャーをした。


「それ以上、不必要に『文字』を消費してはいけません」


 今、この占い師の発言に気になる言葉があったぞ。


「今、文字って言ったか?」

「ええ、言いました。『文字』です」

「文字ってなんだ?」

「占いの結果、あなたが妻を寝取られるのは1000文字後だと判明したのです」

「1000文字って……いつから?」


 なんかメタっぽい発言だな……。


「冒頭からです。つまりは『ある日』の『あ』からです」

「とすると……」


 俺は、どうしてこの占い師が地の文を把握しているのか疑問に思いつつも、そのことについて深く考えてはいけないのだとなんとなく察した。


「現在、550文字を過ぎたあたり。まだ多少の余裕がありますね」


 俺は口を閉じた。そこまで余裕がないので、思案や描写はできるだけ控えよう。


「この残酷な未来を変えるためには、1000文字以内にこの物語を終わらせるしかありません」

「どうすればいい?」

「簡単です。奥様を抱きしめてキスをして『妻が寝取られることなどなかった。END』とでもまとめればいいのです」

「わかった」


 頷くと、俺は妻に電話をした。


「今、どこにいる?」

『行きつけのイタリアンレストラン』

「あそこか……。わかった、今すぐ行く」

『え? どうし――』


 電話を切って、強制終了。

 俺は駅まで駆けて、電車に飛び乗った。

 目的地に到着すると、一人でパスタを食べている妻に駆け寄った。


「あなた、どう――」


 それには答えず、妻を抱きしめて熱情的なキスをした。抗議の声を上げようとする妻を、俺は唇と舌で阻止する。

 周囲を見ると、驚く客と、悔しそうな顔をするレストランの主人の姿が視界に入る。こいつが妻を寝取ろうとした男だろうか。しかし、残念だったな。


 妻が寝取られることなどなかった。

 HAPPY END


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