政略結婚であり、君を愛することは永久にできないといったはずの殿下、真実の愛の相手を見つけたので愛に生きるといわれましたが…どうしてその相手が私の妹なのですかね?
「僕は君を愛することはできない…所詮政略だ」
「ええそうですわね」
私は婚約者に開口一番これを言われました。
憧れの殿下との婚約と浮かれた私がバカでした。
そこからずっと王宮のはずれの部屋で捨て置かれて、ハズレ婚約者などと陰口まで言われましたわ。
しかし、真実の愛とやらを見つけた殿下がぜひ婚約を破棄してくれと珍しく私の私室まで来たと思ったらこう言ったのです。
「……はあ」
「婚約を破棄してくれ、真実の愛の相手が見つかったんだ!」
はずれ部屋で私が困っていると、楽しそうにこう破棄を切り出す殿下。
家同士のことだというと、どうもそれは問題ないと言ってきたのです。
「相手は君の妹だ、相手が変わるけど問題ない!」
「……え?」
「だから大丈夫だ、早く出て行ってくれ!」
私は荷物をまとめる時間もなく放り出され、館に帰ると、妹がごめんなさーいと泣きながら縋り付いてきて。
いえ……この子にはずっと迷惑というか、幼い時から好きな人をとられつづけてきましたが、まさかそこまで……。
「舞踏会で殿下が私に一目ぼれしたというのですわあ」
「……」
舞踏会でそういえば変に殿下にすり寄るバカがいたというのは噂で聞きましたが……。
男を落とす手管を身に着けたあなたでしたか妹よ。
私は妹を許しておやりという両親の言葉にうんとうなずくしかない状態でした。
というか……真実の愛が妹なら、婚約者は妹でもよかったのでは?
そういえば……魔力が足りないとかではじかれたと聞きましたが妹よ。
ふつふつと怒りがわいてきました。
私はこの怒りをどこにぶつけようかと考え、真実の愛とやらを見つけたという殿下に妹の真実を見せてやろうと考えたのです。
「お前さすがにその仏頂面はよせ、妹に……」
「ええわかってますわお父様」
婚約式に出た私は、ふっと笑いました。どうも人を小ばかにした印象があるといわれる笑いでしたが、やってられませんわよ!
「私はここに婚約を宣言する!」
私は殿下の言葉とともに、懐から魔法の水晶玉を取り出しました。
お父様がおい何をすると怒鳴りますが知るものですか!
『あのおバカな殿下なんて真実の恋とかいう理想の相手を演じるのは簡単でしたわ。あははは、お姉さまもそれくらいはきちんと調べておかないとだめですわ!』
私が手に持った水晶玉から流れる妹の声と映像、映し出されるそれを見て絶句する皆。
妹が慌ててこちらに走ってきて、取り上げようと必死ですわ。
『はあ? 別れたかって? お姉さまの元婚約者のシュタイン様とはもう別れましたわ。たいしたことがなかったですわ、あっちもたいしたことなかったですし』
下品なセリフが流れると顔を真っ赤にするご令嬢たち、私はふんと鼻で笑い、妹に水晶玉を投げつけました。ごつん、頭に命中しましたわ。死にはしませんわよ!
「……ここに妹の真実を私は明かします。あとはご勝手に」
私がセリフとともに退場すると、会場は大騒ぎになりました。
はずれ令嬢の妹もはずれということになり、まあ……私は連座は免れるようにきちんとしてましたわよ? 王妃様に妹の行状を申し立てておきましたの。
婚約は破棄、殿下は廃嫡、妹は辺境送り、お父様は所領を没収、ああ全部でなくてよかったですわという結果になりました。
私はもうはずれなどと言われるのはごめんだと、魔法研究の一環、薬草栽培の腕を生かし、今は薬屋として働いています。ハズレ婚約者などと言われない恋人もいまはおります。幸せですわ。
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