閑話 バレンタイン ④
長くなりすぎたバレンタイン閑話を分割したので本日2話目です。
僕達がサンの勘を頼りに南の方へ歩き始めて10分ほど経った時にサンが僕にモンスターとプレイヤーを見つけたぞと伝えてきた。モンスターは7体ほどいて、近くにはプレイヤーが2人いるらしい。恐らく戦闘中だと言われた。
「エア。とりあえず近くまで行くぞ。それで、プレイヤーがピンチだったら助けを必要としてるか聞いてから助けるぞ」
「うん。そうだね」
僕達は走ってモンスターとプレイヤーが居る方角に向かう。
「エア!森を抜けるみたいだぞ!モンスターの場所はそれなりに近いから気を付けろよ」
「分かったよ」
森を抜けたらそこにはチョコのような匂いを放つトレントが何体もいるのが見えた。
「エア。プレイヤーがカカオトレントと戦ってるみたいだ。しかも、その近くには住人がいる場所がある。恐らくそこが村がある。フォンド村だろうな」
「なるほど?プレイヤーはフォンド村をカカオトレントから守ってるのかな‥‥?頑張ってるね」
「こういうイベントで村を守ろうとしてる奴がいるのは助かるな。村が無くなってたら失敗だろう。だから、俺たちが同じ状況でも助ける選択をするだろうな」
「村が無くなってクエスト失敗って‥‥そんな事があるの?」
「ベータ時代にモンスターの大群、モンスターパレードから村を守りきれってクエストがあってそれに失敗した時にそうなった‥‥あれはきつかったなぁ‥‥住人が何人もモンスターに殺されてしまったんだ‥‥」
「そう、なんだ‥‥」
「ま、その話は置いておこう。とにかく、状況の確認の為に戦ってるプレイヤーに聞いてみるか。見た感じだとギリギリ押さえられてる状況だけど余裕があるなら邪魔だって言われるかもしれないだろ?」
「その可能性はあるね。じゃ、サン聞いてみて?」
僕が同意したのを確認するとサンは戦ってるプレイヤーに対して手伝うかの確認をする。
「おーい!手助けは必要か~!?」
「私達以外のプレイヤーが来たのか!?ありがとう!助かるよ!3人いたけど1人やられてしまったんだ。モンスターが村に行かないようにするだけで精一杯なんだ!」
「了解した!エア。俺がこいつらを一気に殲滅するからウォール系の魔法でカカオトレント達を囲んでくれるか?」
「ん~サンがどんな攻撃をするか分からないけどとりあえず今、僕が使えるのを使うね~」
「出来ればグラウンドウォールが良いな。使えるよな?」
「まあ、うん。グラウンドホールの前に覚える魔法だからね」
「んじゃ、よろしく」
「了解したよ。グラウンドウォール×8」
〈多重詠唱〉でのグラウンドウォール8つはMPギリギリだな‥‥まあ、これなら耐えるよね。
「よし、詠唱完了!あんたらはとりあえず退避してくれ。これから俺がこいつらを一気に魔法で殲滅する!巻き込まれないように完成した囲いからなるべく離れてくれ!壊れないとは思うけどもしもがあるからな!巻き込まれたら死ぬぞ!」
「了解した!退避する!」
さっき、戦っていたプレイヤー達が退避したのを確認してサンが魔法を解き放つ。
「さあ、行くぞ!サンライトフレア!」
サンがその魔法を解き放つと一瞬にしてとてつもない炎が僕の作った囲いの中に注がれた。そして、8枚張って作った二重の囲いが溶解しそうになっている。ヤバイと思った僕はMPポーションでMPをフルにしてからさらに魔法を重ねる。
「ちょっと!?サン!?威力高すぎるんだけど!?どう考えてもこれだけじゃ耐えきれないじゃん!ウォーターウォール×8!グラウンドウォール×4!」
僕は、溶けそうになっている囲いの外にウォーターウォールの囲いを二重にして張った。更にもう一回りグラウンドウォールで囲いを作成した。ここまでやって耐えられなかったら村まで被害が及びそうなんですけど。大丈夫かな?
サンが放った炎は二重に張ったウォーターウォールの囲いを全て蒸発させた。その周囲にもう一回り張っていたグラウンドウォールの囲いでなんとか押さえきれたようだ。良かった。
「あはは‥‥な~にこの威力‥‥俺も予想外だったわ~前放ったときはここまで凄くは無かったんだけどなぁ‥‥」
魔法を放った本人であるサンも驚いていた。そして、村を守ってたプレイヤーもその状況を退避した先から見て絶句してるように感じられた。
「‥‥サン。後でお説教」
「ごめんなさい。次から気を付けるから説教は止めて?お願いします。お前の説教は軽くトラウマがあるんだけど‥‥」
「とりあえず、このイベントが終わってから話し合おうね?」
「ハイ。ワカリマシタ」
そんな話をしていると村を防衛していたプレイヤーの1人が僕達に近付いて来て声を掛けてきた。白髪で、凄く中性的な顔立ちをしてる人だ。声では性別がどっちか分からないね。
「ありがとう。助かったよ。凄い威力の魔法だったね」
「あはは‥‥すまんなあの数を一気に倒せそうなのがあの魔法しかなかったんだ」
「凄いね‥‥私達もこのゲームを始めてそれなりに経ってるけどあそこまで凄いのは初めてみたよ」
「まあ、前線の方だとあの威力の魔法でも致命傷にならないモンスターがいるからなんとも言えないけどな~」
「前線にいてあの高威力の炎魔法を使えるって‥‥あなたはアポロンのリーダーのサン!?」
「まあ、そうだけど‥‥そこまで驚かなくても良いんじゃね?ただの1プレイヤーなんだしさ」
「いやいや!有名人じゃないですか!あなたの出てるUSOのPVを見て火系統の魔法を覚えた人もいるくらいです!」
なんか、敬語になってる。サンってそんなに有名人なんだ~面白いね。
「お、おう‥‥そこまで話題になってたのは予想外だな」
知らなかったのはサンだけって感じかな?アポロンのメンバーは知ってても教えなそうだし。サンが小声で「ま、アレは火の系統じゃないんだけどな‥‥」と言ってるのが聞こえた。
「それで‥‥あなたがなぜここに?」
「そりゃあ、このイベントのためだぞ。素材を集めてクエストの発注者のショコラさんにチョコをつくらせて呪いを解いて貰うという話のクエストだっただろ?」
「え?私達はこのフォンド村を一定期間村をモンスターから守ってくれってクエストでしたよ?」
「んん?受けた場所によってクエスト内容が違うのか?まあ、ショコラさんに話を聞いてみれば分かるか?しかし‥‥プレイヤー少なすぎやしないか?いるのは俺達だけだぞ?」
「そうですよね‥‥少なすぎますよね‥‥受注した時は周囲に沢山人が居たのにこの村に転移してからは全く居ないんですもん。私達、凄く困惑しましたから‥‥」
「ま、運営の考えは分からないから考えるだけ疲れるな。エア。さっさとショコラさんに素材が集まった事を伝えてショコラさんにチョコを作らせようぜ?すまないがカカオトレントがドロップしたカカオは俺達が貰ってもいいか?」
「はい。大丈夫ですよ。あなたがほとんど倒していましたし、私達のクエストはクリアになっているようなので。ついでに死んでしまった仲間もクエストクリアになったと連絡が入りました」
「それは、良かったよ。じゃ、俺達は行くから。まだ、クエストの途中なんでな」
「はい!お手伝いありがとうございました!」
サンと白髪のプレイヤーの会話が終わったようなのでサンに声を掛ける。
「さっきの人‥‥最後まで僕の事が見えてなかったね‥‥まあ、意図的に気配は薄くしてたから仕方ないけど」
「してたのかよ。道理で途中からお前の気配感じないなと思ってたんだよ‥‥」
「ほら、さっさとショコラさんに報告に行くよ」
「話を逸らされたし‥‥良いけどよ」
そんな会話をしながら僕達はフォンド村の中に入っていった。
サン「あいつの説教受けるのは嫌だな‥‥このイベント終わったらさっさとログアウトして逃げるか」
作者からのコメント
自分は、結構勢いでこの物語始めています。設定が甘かったり緩い部分が見受けられると思いますが優しく見守って下さい。




