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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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練習終わり

「クッソォ、何回も何回も、アホみたいに走らせやがって、うちらは犬ぞりの犬か」

 野田が叫ぶように毒づく。今日の練習は、タイヤ引きだった。今日は、初めから最後まで、選手たちはタイヤを引いてグラウンドをひたすら何往復も走らされていた。

「高校の部活思い出しますよね」

 かおりが疲れた表情で言った。

「あったく、何考えてんだあいつは」

 野田はなおも毒づく。いつもの、野田、仲田、志穂、繭、かおり、めぐみ、のりちゃんの寮メンバーたちはいつものように練習終わり、グラウンドの片隅でだべっていた。

「昭和なんだよな。あいつの練習は」

 仲田も毒づく。

「軍隊とか多分こんな感じなんでしょうね」

 志穂。

「軍隊の方がまだましだよ」

 野田が呟くように毒づく。

「しかし、宮間さんうまく逃げたよなぁ」

 仲田が言う。

「そうそう、宮間さんうまいんだよなぁ。練習きつい日に限って休むもんなぁ」

 野田。

「前の地獄の階段昇降の時も休みましたよね。実家の法事とか言って」

 繭。

「嘘くさいんだけどなぁ・・、父方も母方も両方祖父も祖母も生きてるはずなんだけどな。うちは頑丈な家系なんだっていつも自分で自慢してたんだから」

 野田が首をかしげる。

「今日は何ですか」

 繭が野田を見る。

「歯医者」

 野田が答える。

「それも嘘くさいんだよなぁ。宮間さん虫歯が一本もないってのが自慢だったからな。それも自分で言ってたんだよ」

 仲田が言う。

「でも、なんで分かるんですかね。今日が練習きついって」

 繭が首をかしげる。

「感だよな」

 野田。

「そうそう、そういうところの感はすごいんだよ。あの人。野性的っていうか、超常的っていうか」

 仲田。

「感・・」

 繭が呟く。感だけでそこまで的確に分かるものなのだろうか。しかし、宮間さんならあり得る話だとも思った。

「それにしても権蔵の野郎、調子乗りやがって、サッカーの練習しろってんだよ。走ってばっかで勝てるかよ」

 野田が再度毒づき始める。

「でも、最近勝ってますよね。うちのチーム」

 志穂が野田の方を見る。不思議と、花乃町との試合以降も金城町女子サッカーチームは連戦連勝が続いていた。

「もう六連勝じゃないか」

 仲田が首をひねりながら言う。

「そう言われればそうだな」

 野田も首をひねる。

「不思議ですね」

 かおりが言う。

「ああ、練習も戦術も無茶苦茶なんだがなぁ」

 野田が腕を組む。

「なぜか勝っている」

 仲田。

「不思議だ」

 野田。

「熊田監督が来てからですね・・」

 繭がぼそりと呟いた。

「・・・」

 全員黙る。

「権蔵が監督になったからじゃねぇ。それはぜってぇにない」

 野田が強い口調で言う。

「熊田コーチは、監督じゃなくてコーチですよ」

 志穂が言った。

「あっ、そうか。あいつはコーチか」

 野田。

「監督影薄いからなぁ・・」

 仲田。

「熊田コーチが入ってからさらに影薄くなりましたよね・・」

 志穂が言う。

「ああ、ほぼマネージャーだもんな」

 仲田。

「しかし、権蔵のおかげとは思いたくないな」 

 野田が顔をしかめながら言った。

「実際違うだろ。あいつの無茶苦茶な練習。無茶苦茶な采配」

 仲田が強い口調で言う。

「むしろ足引っ張ってるよな」

 野田が言う。

「そうだよな」

 仲田が同意する。

「繭とかおりも入ったしな」

 野田。

「そうそう、絶対にあいつのおかげではないよな」

 仲田。

「そう、お前たちのおかげだ」

 野田が繭とかおりの肩を叩く。この二人はどうあっても熊田の功績は認めたくないらしい。

「うちら控えメンバーすらいなかったからな」

 仲田。

「そうそう、そんなんで勝てるわけないよな」

 野田。

「なっ、繭、お前たちのおかげだよな」

 野田が繭の肩をもう一度叩きその顔を見る。

「・・・」

 だが、繭は何かを考えこんでいる様子で黙っている。

「どうしたんだよ」

 野田がそんな繭の顔を覗き込む。

「私、熊田コーチでふと思ったんですけど」

 その時、繭が突然、呟くように言った。

「うん?」

 みんなが繭に注目する。

「最近宮間さんと麗子さんけんかしてませんよね」

「あっ、そういえば」

 野田と仲田が、そこで初めて気づき、驚いたように目を見開いてお互いを見た。

「確かに最近けんかしてないな」

 二人はその事実に驚く。そんなことはここ数年であり得ないことだった。

「それは二人の怒りの矛先が、熊田コーチに向かっているからじゃないかと・・」

 繭が再び呟くように言う。

「・・・」

 全員黙る。

「熊田コーチを共通の敵として、みんなまとまりが出てきているのね」

 そこに信子さんがやって来て、いつものようににこにこと言った。

「歪な連帯ですね・・汗」

 かおりが呟く。

「そうでもしないと、このチームはまとまらないわよ」

 信子さんが言う。

「う~ん、確かにそれも一つの真実ではあるな」

 野田が渋い表情で言った。熊田の功績はどんなものでも絶対に認めたくない野田だった。

「もしかして、それを狙って無茶苦茶してるのかしら」

 信子さんが言った。

「まさか」

 野田と仲田が口をそろえる。熊田がそこまで考えて、やっているとは思えなかった。

「でも、もしかしたら・・」

 だが、その時繭は一人、たかしが前に言っていた言葉を思い出していた。

「先輩は、呑気そうにしているけど、とても、深い考えを持った人だよ」

「まさかね」

 しかし、繭はその考えを一瞬で打ち消した。やはり、繭にも熊田がそれほど思慮深い深謀遠慮な人間とは到底思えなかった。

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