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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
9/121

顔合わせ

「今日からうちのチームに入ることになった三浦繭ちゃんだ」

 たかしが、グランドに整列した全メンバーの前で繭を紹介する。

「三浦繭です。よろしくお願いします」

 初めて袖を通した真新しい赤いユニホームを着た繭は、整列する選手に向かって丁寧に頭を下げた。

「十七歳で代表に呼ばれたすごい逸材だぞ」

 たかしは得意になってみんなに向かって言う。

「い、いえそんな」

 しかし、その隣りで繭は、困惑するように本気で照れていた。

「これで、うちのチームも生まれ変わってだな・・、これからは優勝争いに絡むようなチームに・・」

 そのまま、たかしは一人興奮し、熱い思いを語り出した。

「絶対に今年こそは・・」

 たかしは理想に燃え過ぎて、目はどこか別の世界を見ていた。

 しかし、その時、肝心の選手たちは、そんなたかしの熱い話など全く聞いてはいなかった。

「頭いてぇ」

 列の後ろで宮間は頭を押さえ、顔をしかめていた。

「昨日飲み過ぎた」

「またですか」

 隣りの野田が宮間を見る。

「大丈夫ですか?宮間さん」

 その反対側の隣りではやさしい志穂が宮間を気遣う。

「やっぱ焼酎ストレートはダメだな」

「そういう問題じゃないでしょ」

 野田の隣りにいた仲田が突っ込む。

「もう、やあね」

 麗子がその後ろで、そんな宮間に顔をしかめる。

「こんなすごい子が来てくれたんだ。これで、うちのチームも変わるぞ。もう弱小チームなんて言わせない・・」

 たかしの演説はそんな中でも続いていた。

「監督ぅ」

「ん?」

 その時、熱く語っていたたかしの演説を遮るように野田が手を挙げた。

「あいつがうちのチームのコーチって本当ですか」

「本当なんですか?」

 野田の隣りに立っていた仲田もそれに続いた。

「ああ、それは・・」

「あんな奴がコーチなんて私嫌ですよ」

 矢継ぎ早に野田が叫ぶように言う。

「っていうかあいつは何者なんですか」

 仲田が更に続く。

「う、うん、まあ、その事はまた後で・・・、そう言えば先輩遅いなぁ。午後から練習だって言ってあるのに」

 たかしはグランドの入り口の方を見た。

「そうですね」

 信子さんも、たかしの隣りで小首を傾げた。

「あ、あのう」

 その時、繭がおずおずと口を開いた。

「ん?なんだい、繭ちゃん」

 たかしが繭をやさしく見る。

「あの人なら、寮のおばちゃんと食堂で酒盛りしてましたけど・・」

「えっ」

「出がけにちょっと見えたんで」

「せ、先輩・・」

 たかしはがっくりとその場に大きくうなだれた。

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