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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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謎のおじいさん

「どうしたの」

 商店街からの帰り道、急に立ち止まった繭をかおりが見下ろす。

「あれ」

 繭が前方を指さす。

「ん?」

 かおりが繭の見ている方を見る。

「あっ」

 見ると道の脇に、何やらおじいさんがしゃがみこんでいた。おじいさんは今時めずらしく着物を着ていて、さらに頭には、明治時代の小粋な人のように、小さな麦わら帽子を乗せている。

「どうしたんだろう」

 二人はおじいさんに近寄って行った。

「大丈夫ですか」

 かおりが声をかける。

「ん?ああ」

 おじいさんが二人を見上げた。

「ちょっと、下駄の鼻緒が切れてしもうてのぉ」

 見ると、確かに左の下駄の鼻緒が切れている。

「どうしよう」

 繭がかおりを見上げる。

 すると、かおりはバックから布を取り出した。かおりは服飾系の専門学校に通っているので、バックに実習で使う生地が入っていた。

「私こういうの、テレビの時代劇で見たことある」

 そう言ってかおりは、布を口に当て引き裂いた。そして、おじいさんの足元から下駄を手に取ると、布を器用に丸め、鼻緒の通っていた穴に通した。

「かおりちゃん器用だね」

「うん、こういうの得意なんだ」

 かおりは器用に布で作った即席の鼻緒を結びつけ、下駄を直していく。

「ありがとうお嬢ちゃん」

 そんなかおりにおじいさんが言う。

「いえ」

 かおりは夢中で下駄の鼻緒を直してゆく。

「出来た」

 しばらくしてかおりが顔を上げた。鼻緒の色は違っていたが見事に、下駄の鼻緒は直っていた。

「大丈夫ですか。履けますか」

 治った下駄を履くおじいさんを、かおりが心配そうに見つめる。

「おお、これはこれは」

 おじいさんは下駄を履いて、笑顔で立ち上がる。履き心地はいいらしい。それが笑顔に出ていた。

「よかった」

 かおりも笑顔になる。

「かおりちゃんすごい」

 その隣りで繭がかおりを賞賛する。

「ありがとうお嬢さんたち」

 おじいさんが言った。

「いえ」

「ちょっとうちに寄っていってくれ。家はすぐそこじゃ」

 二人の帰る方向とは反対の方をおじいさんは指差し言う。

「はあ、でも・・」

 二人はこれから練習が待っていた。

「ほっほっほっ」

 しかし、おじいさんはにこにこともう歩き始めている。

「・・・」 

 二人は顔を見合わせたが、仕方なく、おじいさんの後を追った。

 おじいさんは、駅から東の方へ行った金白城跡公園の方に歩いてゆく。

「・・・」

 二人は黙ってその後ろをついてゆく。二人はこちらの方にはまだ来たことがなかった。金白城跡公園周辺は、城下町だったこともあり、まだ古い建物も結構残っていて独特の雰囲気を醸していた。そんな町並みを二人は見回しながらおじいさんの後ろをついて行った。

「ここじゃ」

 ほどなくして金白城跡公園近くまで来ると、おじいさんが、持っていたステッキを上げた。

「えっ」

 二人がその建物を見た。

「わあ」

 辿り着いたのは、江戸時代の大名屋敷のような純和風の豪邸だった。

「す、すごい・・」

 二人はおじいさんの入って行った家の門を見上げた。門だけで、普通の家が二、三軒建ちそうなほどの豪華さだった。二人は驚愕した。

「こんなお屋敷みたいな家があるんだね」

 繭が呟く。

「うん」

 二人は唖然とする。

「お帰りなさいませ」

「うん」

 門をくぐり、屋敷の入り口まで行くと、何やら着物姿のお手伝いさんらしき人まで出て来て三人を出迎える。 

「あのおじいさん・・、何者・・」

 二人は顔を見合わせた。

「長っ」

 これまたものすごく広い玄関を上がり、奥へと入って行くと、そこに伸びる廊下に二人は驚き、同時にその廊下の長さにツッコミを入れるように叫んだ。中庭のきれいな日本庭園の脇に伸びるその廊下は恐ろしく長かった。

「はあああ・・」

 二人は茫然としてしまう。

「こっちじゃ」

 おじいさんが廊下のその先で二人を手招きする。

「広っ」

 そして、二人が通されたそこは、大河ドラマのお殿様が出てくるような畳何畳あるのかという大広間だった。

「・・・」

 二人はしばし茫然と部屋の中を見回す。欄間には壮大な彫刻、襖には華美な日本画が描かれている。

「熊田君は元気かな」

 そんな二人に、上座にあるバカでかい座布団にちょこんと座ったおじいさんが訊ねた。

「えっ、熊田コーチをご存じなんですか」

 二人が驚くと、ふぉっ、ふぉっ、ふぉっ、とおじいさんは笑った。

「・・・」

 二人は顔を見合わせた。このじいさんはいったい・・。

「まあ、座りなさい」

「は、はい」

 二人はいつの間にか用意されていた二つの座布団に座る。この座布団もまたビックルするくらいふかふかで厚みのある座布団だった。

「熊田くんをこの町に呼んだのはわしじゃ」

「えっ!」

 二人はさらに驚く。

「熊田君にはこの国を変えてもらわにゃいかん」

「国?」

 二人が驚きおじいさんの顔を覗き込むと、おじいさんはにこにこしながらうんうんとうなずく。

「サッカーじゃないんですか」

 かおりが訊く。

「熊田くんはこの国を変えられる人材じゃ。あの男しか今のこの国を救える男はおらん」

「はあ・・」

 サッカーを飛び越え、国という何か壮大な話になって二人は、その場にただ言葉もなく座ることしかできなかった。

「ご用意が出来ました」

 そこに襖を開け、お手伝いさんが、何やら重厚そうな重箱を持って入ってきた。そして、二人の前に一つずつそれを静かに置くと、スーッと二人の前に差し出した。

「お礼の気持ちじゃ、これを持って行ってくれ」

 おじいさんがにこにこと言った。

「えっ?」

 そして、二人は何やら重厚なお土産の箱を持たされ、屋敷を後にした。


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