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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
81/122

二人の商店街散策は続く

「あらっ」

 繭とかおりが商店街を歩いていると、二人の横から聞きなれた声がした。二人はその方を見る。

「繭ちゃん、かおりちゃん、二人そろってどうしたの」

「あっ、柴さん」

 商店街の雑貨屋に柴がいた。二人は驚く。

「何してんですか、柴さん」

 繭が言う。

「何してんですかって、ここは私のお店よ」

「ええっ、そうだったんですか」

 二人は驚く。

「柴さん、ここでお店やってたんですか」

「そうよ」

 柴は少し胸を張って答える。

「そうだったんですか」

 二人は驚いた。

「全然知らなかった」

「そう言えば言ってなかったわね」

「そうですよ。なんで言ってくれないんですか」

「ふふっ、そうだったわね」

 柴は笑っている。チームの中ではしっかり者とされている柴も、案外呑気だ。

 二人はあらためて柴の店を見た。昔ながらの古い店が多い中、商店街の雰囲気に合わせた白を基調としたちょっとおしゃれな店構えだった。

「中見てく?」

 柴が言った。

「はい」

 二人は同時に答えた。

「へぇ~、かわいいお店ですね」

 二人は店の中に入り店の中を見回す。柴の店は、かわいい小物や置き物で溢れていた。

「わあ、これかわいい」

 かおりが棚の真ん中に乗っている小さな置物を覗き込み言った。

「あ、本当だ」

 繭もそれを見る。それは雪だるまの形をしたろうそくだった。くりくりとした目の個性的な雪だるまが、シルクハットをかぶり、コミカルに傘をさしている。

「すごい良い匂いがする」

 かおりが置物に鼻を近づける。

「ほんとだ」

 繭も並んでその置物に鼻を近づける。置物は、何とも爽やかな花の香りがした。

「良かったらあげるわよ」

 柴がそんな二人の横から言った。

「えっ、いいんですか」

 二人が柴を見る。

「うん、私からの入団祝い。ちょっと遅いけど」

「やったぁ」

 二人は喜ぶ。

「うちに来てくれて本当に感謝しているのよ。あなたたちが来てから、うちのチームも活気が出て来たし」

 二人は照れた。

「包んであげるわね」

「はい、ありがとうございます」

 包みを持って、二人は柴の店を出た。

「柴さん、あそこでお店してたんだね」

 再び商店街を歩き出し、繭が言った。

「うん、いいお店だったね」

 かおりが答える。

「うん、また行こうね」

「うん」

「あらっ、繭ちゃん、かおりちゃん」

 その時、二人は背後から突然声を掛けられた。二人は声の主を振り返る。しかし、そこに立っていたのは見慣れない女性だった。

「ええと?」

 二人は困惑気味に女性を見て、首を傾げる。

「ふふふ」

 そんな二人を見て女性は笑う。

「あっ」

 その笑い方で、かおりが気付いた。

「ママ」

「えっ」

 繭も女性を見る。

「あっ」

 そこで繭も気付いた。それはあかねのママだった。普段着物姿のママが、洋装で、長い髪を下ろしていたので二人は最初まったく分からなかった。

「ふふふ、二人で商店街の散策?」

「は、はい」

 確かに声はママだった。しかし、洋装のママは、メイクも普段とは違い、どこか色っぽく、全く別人のようだった。しかし、こうも着ているもので変わるものなのか。女性である二人も驚いた。

「楽しいでしょ。この商店街」

「はい」

「ふふふっ」

 ママはなんか一人楽しそうだ。

「これからお店ですか」

 かおりが訊く。

「そう、これから開店準備」

 ママは買い物袋を持ち上げ言った。

「由香ちゃん(宮間のこと)たちが、今日も来るでしょうから、お芋の煮っころがしと肉じゃがの仕込みしなくちゃ」

「ははは、そうですか」

 繭とかおりは、苦笑いを浮かべる。宮間たちは毎日のようにあかねに通っているらしい。毎日、熊田の猛練習の後ですごい体力だった。

「じゃ、また来てね」

「はい」

 そう言って、ママは二人にかわいく手を振って去って行った。

「・・・」

 二人はその後ろ姿を見送った。

「全然分からなかったね」

 繭がかおりを見上げる。

「うん、そういえばママの店も商店街にあったんだったね」

「うん」

 二人はあらためて金城町商店街の通りを眺める。夕方近くになり、買い物客も増え、商店街の通りはさらに賑わいを増していた。

「そろそろ帰ろうか」

 かおりが言った。

「うん」

 十分商店街を堪能した二人は、そろそろ夕焼け色に傾き始める空の下、銀月荘に向かって歩き始めた。

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