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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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商店街を散策

「あっ、かおりちゃん」

「あっ、繭ちゃん」

 繭とかおりの二人は金城駅のホームでばったりと出会った。

「同じ電車だったんだね」

 かおりが繭を見下ろす。

「うん、今日は午後の講義がなかったんだ」

 繭がかおりを見上げる。

「私も、午前で終わったの」

「そうなんだ。偶然だね」

「うん」

 二人はそのまま並んで改札を出た。

「ねえ、ちょっと、商店街見てかない」

 改札を出たところで、かおりが商店街の方を指差して言った。

「私まだ、ちゃんと見たことないんだよね」

「ああ、そういえば私もだ」

 時間はまだ三時前、時間はあった。二人は帰り道とは反対方向の商店街に向かって歩き出した。

「私たちのスポンサーなんだよね。そういえば」

 繭が商店街に並ぶ店店を眺めながら言った。

「うん」

 かおりも店や商店街の雰囲気を見回しながら答える。歴史は古いが、改装したばかりの白を基調とした明るいきれいな雰囲気の金城町商店街は買い物客で賑わっていた。

「いろんなお店があるんだね」

 昔ながらの八百屋から、お肉屋、総菜屋、和菓子屋、オシャレな雑貨屋など、様々な店が並んでいた。中を歩いてみると、二人が思っていた以上に店は多く、通りも長かった。

「あっ、コロッケ、おいしそう」

 繭がお肉屋さんの前で立ち止まった。店の前のショーケースの上にはコロッケが山のように盛られ置いてある。さらにお店の中からは揚げたてのコロッケの香ばしい匂いが漂ってくる。

「食べようか」 

 かおりが言った。

「うん」

 繭は大きくうなずく。

「コロッケください」

 かおりがショーケースの前に立つおばちゃんに声をかける。

「はいよ。いくつ」

 威勢のいいおばちゃんが愛想よく答える。

「一つください」

 かおりが人差し指を一本立てる。

「私十個」

 繭は両手を広げた

「繭ちゃん・・、やっぱり桁が違う・・汗」

 かおりはあらためて繭の大食いに目を見張る。

「あっ、あんた繭ちゃんだろ」

 その時、お肉屋さんのおばちゃんが繭を見て言った。

「えっ」

 繭は驚く。

「あんたはかおりちゃん」

 今度はかおりを見上げて言った。

「は、はい」

 二人は驚いた。なぜ知っているんだ?二人は同時に顔を見合わせる。

「まあ、かわいい子が入ったね」

 おばちゃんは繭を見てうれしそうに言う。

「あんたはモデルさんみたいにきれいだし」

 今度はかおりを見上げてまぶしそうな目で見る。

「この間、銀月荘にお肉届けに行った時、あんたたちを見かけたんだよ」

 おばちゃんが言った。

「そうだったんですか」

 かおりが応える。

「有望な新人が入ったって、この商店街じゃもっぱらの噂だよ」

「そうですか」

 有望な新人と言われ、二人は照れ笑いを浮かべた。

「ほんと、かわいい子が入ったね。期待してるよ」

 おばちゃんはコロッケの入った袋を二人に渡しながら言った。

「はい、ありがとうございます。あの、おいくらですか」

 かおりが訊く。

「あっ、お金はいい、いい」

 おばちゃんは右手を顔の前で激しく横に振った。

「ええっ、そんな」

「コロッケくらいだったらいつでもあげるから、いつでもおいで」

 おばちゃんは明るく言う。

「いいんですか」

「いい、いい、若いんだから、そんなこと気にしなくていいんだよ」

「はい、ありがとうございます」

 二人は深々とお礼を言った。

「うまい」

「うまい」

 再び商店街を歩き出した二人は、同時にコロッケを頬張り、お互いに顔を見合わせ笑顔を見せた。揚げたてのコロッケは、ころもがサクサクで中はふわっとほくほくしていて、何とも言えずおいしかった。

「なんか得しちゃったね」

 かおりが隣りの繭を見下ろす。

「うん」

 繭はコロッケのたくさん入った袋を抱えるようにして持ちながら、次々口いっぱいにコロッケを頬張る。

「おっ、繭ちゃんとかおりちゃんだね」

 再び商店街を歩きはじめると、今度は八百屋のおっちゃんが二人に声を掛けてきた。この人も二人のことを知っているらしい。

「おっきいな」

 そして、その突き出た腹をさらに突き出しておっちゃんはかおりを見上げて言った。

「こりゃ、大型新人だ。はっ、はははっ」

 二人もおっちゃんの陽気な話し方につられて笑う。

「この子たちがそうかい」

 奥から奥さんもできた。

「へぇ~、こんな若い子が入ってくれたんだ。よかったねぇ。日曜日はかき入れ時だから応援には行けないけど、応援しているよ」

「はい、ありがとうございます」

 二人は恐縮しながら頭を下げた。

「これ、食べな」

 おっちゃんの手にあったのは焼き芋だった。

「八百屋なんだけど、焼き芋始めたんだよ」

 焼きたてのさつまいもは、甘い何とも言えない香ばしい匂いがする。

「いいんですか」

 かおりがそれを受け取りながら言った。

「ああ、持ってきな」

 おっちゃんは陽気に言った。

 焼き芋を受け取り、二人は再び商店街を歩き出した。

「また得しちゃったね」

 繭が焼き芋を頬張りながら言う。

「うん」 

 かおりも焼き芋を頬張りながら答える。

 それから、次々といろんな人が、二人に話かけて来た。お店の人だけでなく、商店街の常連さんやお客さんたちまでが、二人をすでに知っていて、気さくに声をかけてくる。

 そして、商店街のお店の人たちが、次々と二人に食べ物をくれた。焼き鳥屋さんは焼き鳥を、タイ焼き屋さんはタイ焼きと大判焼きを、たこ焼き屋さんはたこ焼きを、お菓子屋さんはお菓子を、道行くおばさんはアメを、気付けば、二人の両手は、主に繭だったが、抱えるほど食べ物で溢れかえっていた。

「なんかがんばらなきゃって思うね」

 繭が笑顔で言った。

「うん」

 かおりも笑顔で答える。

 金城町商店街女子サッカーチームは、商店街やこの町の人たちに応援されている。二人はそのことを実感した。

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