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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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寝ている宮間

「大変だ。宮間さんに知らせなきゃ」

 驚愕の展開に、周囲が言葉を失っている時、志穂は一人慌てて、寮の二階で寝ている宮間の部屋に向かった。

「グゥオー」

 真昼間だというのに、宮間は六畳一間の畳の真ん中に大の字になって豪快に寝ていた。

「宮間さん、宮間さん」

 志穂がそんな宮間の傍らに行き、その肩を揺する。だが、宮間は全く起きる気配はない。

「宮間さん、大変ですよ」

 更に強く揺するのだが、目を覚ます気配すらない。

 そこに、野田と仲田もやってきた。そして志穂に加勢して一緒に三方から、宮間の体を揺すった。

「宮間さん、宮間さん、大変です、宮間さん」

 三人に揺り動かされ、これにはさすがの宮間も薄目を開けた。

「なんだ。なんだ」

 宮間は眠そうに、まだ半分目を閉じたままむくりと起き上がった。

「宮間さん。大変です」

 志穂がすぐに、そんな宮間に顔を近づける。

「変態です。変態がコーチに」

 仲田が更にその反対側から顔を近づける。しかし、宮間はまだ寝起きで話しを聞いているのかいないのか布団の上でまだボーっとしている。

「宮間さん。変態ですよ。変態がうちのチームのコーチになるんです」

 志穂が一生懸命、そんな宮間に訴える。

「そうなんです。変態なんです。それがコーチですよ」

 野田も身を乗り出し、宮間に訴える。

「何?変態にコーチ?」

 しかし、三人の必死さに反して、宮間は眠そうな声で全くとんちんかんな答えを返す。

「違います。変態がコーチなんです」

 慌てて野田が訂正するが、それも宮間が聞いているのかいないのか、目がうつろだ。

「しかも、その変態が監督の知り合いなんですよ」

 志穂が更に説明する。

「しかも、そいつにものすごく心酔しちゃってる感じなんですよ」

 仲田も必死に説明する。

「先輩とか言ってたし」

 野田が言うと、

「そうそう」

 野田の発言に志穂と仲田も大きくうなずく。しかし、当の宮間は何のリアクションも無く、相変わらず布団の上でボーっと座っている。

「み、宮間さん?」

 そこで、志穂がそんな宮間に確認するように問いかけた。

「聞いてます?」

 野田も宮間を覗き込むように問いかける。

 しかし、目はかろうじて開いているのだが宮間はやはり何の反応も示さず、眠そうにボーっと座っているだけだ。

「・・・」

「・・・」

「・・・」

 三人はしばらく、話すのを止め、そんな宮間の反応を黙って見つめた。

 どさっ、

「あっ」

「グォオ~」

 結局、宮間は布団に仰向けに倒れ込むと、そのまま再び寝てしまった。

「あ~あ、こりゃダメだ」

 三人は宮間の豪快な寝顔を見つめ呟いた。

「あ、あの~」

 その時、入口の方から聞きなれない声が聞こえた。三人は一斉に入口の方を見る。すると、そこに見慣れない女の子が一人立っていた。

「あの~、ここ私の部屋だって聞いてきたんですけど・・」

 繭だった。

「あんた誰?」

 しかし、顔を知らない三人は、初めて見る繭を見て、目を丸くして一斉に叫んだ。

 

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