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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
74/122

サイドバック消える

 追いつかれた鹿山は、一気に攻めに転じてきた。試合の流れ的には、逆転される可能性もあった。だから、このまま同点でもよかったのだが、相手がいつも勝ってる金城で、さらにもめ事、乱闘があり、そして、何よりもみんな宮間に腹を立てていた。そのせいもあって、鹿山はリスクを背負いながらも攻めてきた。その勢いに押される形で金城は劣勢になる。

 ガア~ン

 そして、クロスバーにボールが当たる音がピッチに大きく響いた。

「うわっ」

 たかしが思わず声を上げる。

 普段なら絶対に入らないようなペナルティエリアのはるか外からの超ロングシュートが、金城側のクロスバーを直撃した。

「・・・」

 金城の選手たちは、一瞬言葉を失う。

 この時、金城の選手たちは再び呪いを、ふと脳裏に浮かべてしまった。もしかしたら・・。

 勝負事は、ビビった方が負ける。金城の選手たちはそこでビビってしまった。そこに鹿山がさらに攻勢をかける。

「わわわっ」

 たかしもその流れの変化に動揺する。さっきまでの追いついた勢いが嘘のように、金城は劣勢になってしまった。

「どうしよう。このままじゃ・・」

 たかしの脳裏にも呪いという文字が浮かんだ。

「かすみ」

 その時、熊田がベンチのかすみを呼んだ。

「野田、おまん下がれ」

 そして、丁度ポジション的に目の前にいた野田に向かって、熊田は言った。

「はっ?」

 野田が驚いて熊田を見る。野田は今までメンバーが足りないこともあり、途中交代などしたことがなかった。しかも、野田はサイドバックで、かすみはフォワードだ。

「あたし?」

 野田はいまだに信じられないと言った表情で自分に指を差し、再度確認する。

「おまんじゃ」

 それに対し熊田は容赦なく言い放つ。

「どうなってるの?」

 ベンチメンバーも驚き、首を傾げて目の前の状況を見守る。

「かすみ」

「はい」

「おまん、そのままサイドバックやれ」

「えっ?」

 かすみも驚く。

「あの・・、でも、私やったことないんですけど・・」

 かすみが困惑気味に言う。

「大丈夫じゃ、おまんは前におったらいい」

「はい?えっ」

「前に行って、サイドに張り付いとれ」

 熊田は前線を指さした。

「サイドに張り付いとれって言われても・・」

 かすみは困惑しながらも言われた通り、右サイドの前に入って行った。

 しかし、試合は劣勢だった。かすみは、後ろのスペースを気にして、下がっていく。

「下がるな。かすみ」

 それに対し、熊田が怒鳴る。

「えっ」

 かすみは困惑しておろおろする。

「でも私、サイドバック・・」

「かすみ、おまんはセンターラインから下がるな。下がったら、その頭、下駄でかち割るぞ」

 熊田は無茶苦茶言う。

「未来(仲田)、おまんも下がれ」

 そして、熊田はさらに仲田に向かって叫ぶ。

「えっ?」

 呼ばれた仲田も驚く。野田同様、仲田も今まで途中交代の経験はない。

「志穂」

 志穂が呼ばれた。

「おまんは左に張り付いとけ、絶対下がるな」

 熊田はやはり前線を指さし叫ぶ。

「は、はい」

 指示はそれだけだった。

「後ろどうするんだろう・・」

 ピッチに立った志穂の後ろには、広大なスペースがあった。

「サイドバックがいなくなったわ・・汗」

 ピッチでは、茫然としながら柴がめぐみを見る。

「・・・汗」

 めぐみも困惑気味に柴を見返した。

「柴、めぐみ」

 そこへ熊田がセンターバックの二人を呼ぶ。

「ディフェンスはおまんら二人でなんとかせぇ」

「ええっ!」

 驚く二人。

「何とかしろって・・」

 柴とめぐみは顔を見合わせる。そして、再び熊田を見た時には熊田はもう二人を見ていなかった。

「しかも、指示それだけ・・?」

 柴とめぐみは茫然とするしかなかった。

「静江、前からプレスじゃ」

 今度はさらに静江に対し熊田が叫ぶ。

「えっ!」

 静江が驚き、熊田を二度見する。

「前線から、プレスをかけろ。前へ行け」

「えっ?」

「いいから行け」

 躊躇する静江に、熊田は怒気を含み叫んだ。

「は、はい」

 そして、静江は戸惑いながら上がっていった。上がりながら、時々、柴やめぐみを心配そうに振り返る。

「もっと前じゃ」

 そこに熊田がさらに怒鳴る。

「静江ちゃんもいなくなったわ・・」

 柴が呟く。センターバックの二人は、困惑するばかりだった。

「宮間さんは絶対帰ってきませんよ・・」

 めぐみが柴を見る。宮間はただでさえ守備をしない。実際、熊田の指示などなくとも、もうFwよりも前のポジションにいて、そこから戻ってこないし、戻って来る気配もない。

「本当に私たち二人で何とかしろってことね・・」

 金城のセンターバック二人は、広大なスペースの中にポツンと二人立ち尽くした。

「というか私、本来センターバックじゃないんだけどな・・」

 本来ボランチの柴は、最後に自分の置かれた状況と運命を呪うように呟いた。

 だが、二人は忘れていたが、その後方では、ゴールキーパーののり子が、二人よりもさらに一人ぽか~んと立ち尽くしていた。

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