呪いのジンクス
「商店街あげて、お祓いとか祈祷とかもしてもらったんだけどな」
野田が言う。
「そっちですか・・」
かおりが思わずツッコむ。練習とかではないところが、金城らしかった。
「実力はそんなに変わらないんだ。そんなに特別強いわけじゃないし」
仲田。
「なのに、なぜか勝てない」
野田。その隣りで志穂がうんうんと頷く。
「やっぱ呪いだよ」
野田が力を込めて言う。
「呪いですか・・」
かおりが困惑気味に呟く。
「ああ、呪いだよ。これは絶対呪いだよ」
「どんなサッカーなんですか」
「まあ、システムはいつも伝統的にオーソドックスな4-4-2なんだけどな。戦い方も典型的なしっかり守ってのカウンター型サッカー」
「へぇ~」
「しかし、それになんかはまっちまうんだよ。毎回」
「そうそう、分ってるんだけどな。戦い方。でも、気付くとはまってるんだよ。相手の術中に」
仲田。
「はあ」
「ディフェンスラインは、最終ラインとその前とで二つのラインを作ってしっかり固める。ミドルシュートは結構打てるんだけど、その先にはなかなか入れない」
再び野田。
「なかなか厄介そうですね」
「そう、でもな、何度も言うけど、そんなに強い相手って訳でもないんだよな。うちらだってがんばれば勝てそうな相手なんだ。それに、ずっとやってりゃ、いくら強い相手でもまぐれで一回くらい勝つことだってあるだろ」
「はい」
「でも、あそこだけはそれすらも一回もないんだよ。ほんと、呪われてるとしか言いようがないよ」
「よくいう、相性が悪い相手ってやつですね」
「そのレベルを超えてるね。ここまで負けると」
「・・・」
「ねえ、柴さん」
ここで野田が柴に話を振る。
「そうねぇ、確かになんか勝てないのよね。別にそんなに強いわけでもないのに」
柴も首を傾げる。柴はこのチームで十年以上プレーしている。
「呪いなんだよ」
野田が眉間にしわを寄せて力強くかおりを見る。
「呪いですか・・」
「呪われてんだよ」
野田はさらに強調してかおりを見る。
「・・・」
「鹿山?」
そこに、遅れた罰の追加練習を終え、宮間が遅れて野田たちのところにやって来て話に入ってきた。
「次の対戦相手ですよ」
志穂。
「ほら、全然勝ててない、あの」
仲田。
「そうだっけ?」
宮間は一人、呑気だ。
「なんで知らないのよ」
麗子がツッコむ。
「そんなに負けてたのか」
「今知ったんですか・・」
志穂が宮間を見る。
「ここ最近負けまくってたからな」
確かに、ここ何年か全ての試合で殆ど勝った記憶がないほど、金城は負けこんでいた。
「ほら、宮間さん、あの双子にいつもキレてたじゃないですか」
仲田が言った。
「あっ、あいつらか」
宮間はそこでハッと思い出した。
「双子?」
かおりが野田を見る。
「むかつく双子がいるんだよ」
野田が眉間に思いっきり皺を寄せる。
「あいつらにはぜってぇ、勝つぞ」
宮間は急に燃え出した。
「どうしたんですか」
かおりが野田を見る。
「ま、まあな」
「はあ・・」
「私怨だな」
仲田が呟いた。
「何かあるんですね・・」
「そうか次は鹿山か」
「あっ、監督」
そこに、たかしもやって来た。
「僕が社会人でやっていた時もいたよ。苦手な相手って。なんか勝てないんだよなぁ。メンバーは変わってるのに、何年も勝てないんだよ。不思議と」
「へぇ~、やっぱそういうのあるんですね。不思議ですね」
かおりがたかしを見上げる。
「でも、さすがにここまで勝てないっていうのはなかったな」
たかしも首をひねる。
「そうなんですか・・」
かおり。
「二十六年か・・、もうそんなになるんだな」
「監督、感慨にふけってる場合じゃないですよ」
感慨にふけるたかしに、すかさず野田がツッコむ。
「う~ん、しかし、どんな苦手な相手でもたまには勝つもんなんだが・・」
たかしも腕を組みうねる。
「やっぱ呪われてんだよ」
野田がまたかおりを見る。
「・・・」
野田はしつこく呪いにこだわる。
「さっ、飲みに行くぞ」
話が途切れたところで、宮間が立ち上がった。
「えっ!」
野田たち三人組が同時に叫び宮間を見る。昨日試合で、今日は思いっきり熊田に走らされ、みんな身も心もボロボロだった。
「昨日は、あいつのせいで全然飲めなかったからな。今日は徹底的に飲む」
宮間は身も心も鉄人だった。
「・・・」
野田たちにとって本当の地獄はここからだった。




