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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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人影

「なんでしょう」

 信子は不安な表情で監督の顔を覗きこんだ。

「中からだったよな」

 たかしを先頭に三人は、開いている方の扉から恐る恐る中を覗きこんだ。中はまた、何事もなかったみたいにシーンと静まり返っている。人の気配もない。三人は再び顔を見合わせた。

 と、その時、薄暗い廊下の奥の方で何やら何人かの人影が動いているのが見えた。

「ん?」

 三人はその人影に目を凝らした。何やらその人影は、少しずつ大きくなって来るように見える。

「んん?」

 何事かと三人は更に目を凝らす。それはやはり人影だった。その人影はどんどん大きくなって来る。そして、 

「わぁー」

 という、ものすごい叫び声とともに、その人影は三人の方にものすごい勢いで走って来た。

「わぁー」

 たかしたち三人も思わず叫ぶ。

「わあー」

 走ってくる人影も三人だった。その勢いは止まらない。どんどん、たかしたちの方へ迫って来る。

「わぁー」「わぁー」

 走って来る三人が遂に玄関まで来て、お互いの叫び声が重なりあった時、

「ん?」

 たかしがふと気付いた。

「あっ、何だ。お前たちか」

 たかしたちの方に走って来ていたのは、宮間の取り巻き三人衆、野田と仲田と志穂だった。

「あ、監督」

 三人は、そこで初めて、たかしたちに気が付いた。

「監督、変態です。変態が風呂に」

「変態、変態」

「変態です。監督」 

 すると、野田たち三人は慌てた様子で、それぞれがそれぞれにたかしに興奮して矢継ぎ早にまくしたてた。

「何?変態?」

 たかしも思わぬ展開に慌てて聞き返す。

「変態が風呂に入って、鼻歌歌ってたんです」

 野田が更に興奮してたたみかける。

「酒も飲んでた。湯船に徳利浮かべて」

 体は小さいが気が強い仲田も続く。

「何?鼻歌に酒?」

 思わぬ緊急事態に、たかしもだんだん興奮して来る。

「頭がもじゃもじゃで無精ひげ生やして、あれは完全に変態ですよ」

 普段大人しい色白の志穂も、顔を赤く高揚させて興奮気味に野田たちの言葉に重ねる。

「もじゃもじゃにひげ?」

 これはタダごとじゃないぞと、たかしが思ったその時、

「あ、出て来た」

 野田が目を剥いて、玄関から真っすぐ伸びた廊下の奥を指さし叫んだ。

「なに?」

 その場に居た全員が廊下の奥を見つめる。そこには確かに、男の影があった。全員に緊張が走った。

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