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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
51/122

変わるものと変わらないもの

 ピーッ、ピーッ、ピーッ

 試合終了のホイッスルが鳴った。慌てて攻める池井戸FCだったが、残された時間はなかった。

 金城町商店街女子サッカー部は、打ち合いを制し4-3で勝った。

「勝った」

 選手たちはお互いの顔を見合わせる。勝った本人たちが一番驚いていた。

「あたしたち勝ったんだよな」

 野田が隣りの繭を見る。

「え?ええ」

「夢じゃないよな」

「え、ええ、多分大丈夫です」

 そう言われると、繭もなんだか不安になった。万年最下位争いの金城が、三部リーグでは強豪である池井戸FCに勝った。これは、ほとんど奇跡に近いことだった。

「やったぁ」

 野田は、繭に思いっきり抱き着いた。

「ううっ、苦しい」

 繭は呻いた。しかし、野田に思いっきり抱きしめられ苦しいながらも、繭もうれしかった。

「やりましたね」

 繭も野田の野太い胴体に手を回す。

「勝ったぁ」

 そこにさらに飛びかかるように、繭の背中から仲田も抱き着いてきた。

「ふぅ~、やったぜぇ」

 さらに宮間、志穂、かおりと続く。

「やった、やったぁ」

 ベンチメンバーの麗子やかすみも出てきてその輪に加わった。ピッチ上は、金城の選手たちが飛び跳ね抱き合い、もう文化祭の最後の大騒ぎのように、もうしっちゃかめっちゃかのお祭り騒ぎになった。

「壮絶な打ち合いでしたね」

 そんな選手たちのはしゃぎまわる光景を眺めながら、たかしが熊田の隣りに立った。

「ああ、これがわしのサッカーじゃ」

「攻めを貫く?」

「そうじゃ。百点取られても百一点取って勝つ。それがわしのサッカーじゃ。がはははっ、どうじゃ参ったか」

「ははははっ・・、さすが先輩。豪快ですね」

 たかしは苦笑しながらも、そんな熊田に底知れぬ頼もしさを感じていた。


 試合終了後の選手同士のあいさつを終え、選手たちがベンチに戻って来る。その表情はみな明るかった。それは、ここ数年見せたことのない輝くような喜びに溢れていた。

「このチームは変わる」

「えっ」

 信子さんが、一人呟く隣りのたかしを見上げる。

「このチームは本当に変わるよ」

 たかしは目を輝かせて、そんなベンチに戻って来る選手たちを見つめていた。たかしの表情にも喜びと希望が溢れていた。

「・・・」

 そんなたかしを、更に目を輝かせ信子さんが見つめた。

「おまんら、何浮かれちょる」

 だがその時、ベンチに意気揚々と戻ってきた選手たちに向かって熊田が怒鳴った。

「何って勝ったからだよ」

 野田がそれに対して、すかさず食って掛かる。

「そうだ、そうだ、何訳の分からんこと言ってんだよ」

 仲田がそれに追随する。

「浮かれんのは当たり前だろ」

 野田もさらに言う。

「何勘違いしちょうんじゃ。おまんら」

「何ってなんだよ。何も勘違いなんかしてねぇよ」

 野田が言う。

「そうだよ、実際勝っただろ」

 仲田が続く。

「勝ったのはおまんらの力やない。全てわしの力じゃ。一から十まで全部わしの力じゃ。おまんらはまだまだ実力不足じゃ。調子に乗るな」

「なんだとこのやろう」

「お前なんか攻めろ攻めろ言ってただけじゃねぇか」

「わしには深い深い考えがあるんじゃ。それを凝縮した言葉じゃ。そんなこともおまんらには分からんのか」

「分かるか」

「うそつけ」

 野田と仲田が同時に言った。

 そこから熊田と選手たちの壮絶な言い合いが始まった。

「この辺りは金城らしいままだね・・」

 たかしが隣りの信子さんに呟くように言った。

「え、ええ、そうですね。こういうところは全然変わらないですね・・」

 二人はさっきの会話を早くも後悔し始めていた。

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