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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
35/122

止まらない鉄の女

 後半に入り、疲れの見え始めた、今日は珍しく献身的な動きを見せていたサイドハーフの麗子に代え、最前線にかおりを投入すると、前線は更に活性化した。繭とかおりのツートップは想像以上にフィットし、機能した。繭がボールを持ち、そこに人が集まればかおりがフリーになる。例え繭を囲んでも、その足技で巧みにその囲みを崩され、かおりに合わされてしまう。しかも、ゴール前での決定力はかおりは卓越したものがあった。

 隣り町商店街チームはもう何もできなかった。かおりは入って十分でハットトリックを達成した。

「すごいですね」

 ピッチ脇の信子さんが嬉しそうに隣りのたかしを見る。

「うん」

 たかしも腕を組み、坊ちゃん刈りのその子供のような顔に満足そうな笑みを湛える。

「今年は、変わる気がする」

 たかしは力強く言った。

「おらおらー」

 そんなのほほんとした空気とは対照的に、ピッチでは引き続き鬼神と化した宮間が休むことなくプレスをかけまくる。

「まるで重戦車のようだ・・」

 繭が呟いた。ベンチから見るより、ピッチで見るとその迫力は桁違いに凄まじかった。

「キャーッ」

 ぶつかった相手選手たちは、次々と悲鳴と苦悶の表情を上げ吹っ飛んでいく。

「宮間さんは、なんか体も異様に強いんだよな」

 隣りにいた野田が言った。

「そうなんですか」

「練習なんかで肩で競り合ったりなんかするだろ」

「はい」

「なんか知らないけど、宮間さんとの場合、めっちゃ痛いんだよ」

「そう、異様に痛いの」

 そこに仲田も加わった。

「私あざだらけですよ。宮間さんと競り合うと」

 志穂も加わる。

「そうなんですか・・」

「ほんと鉄の女なんだよ」

 野田が言った。

「うん、確かに鉄だな」

 仲田もうなずいた。

「はあ・・」

「キャーッ」

 そう言っている端から、隣り町のひ弱な選手たちは、容赦なくその鉄の体に吹っ飛ばされていった。

 この日、一人大車輪の宮間を止めることはもう誰にも出来なかった。


「暇ねぇ・・」

「はい・・」

 前線の喧騒とはかけ離れた後方で、柴とめぐみちゃんが静かに呟いていた。そんな二人の上をのんびりと大きな雲が流れてゆく。

 本来一緒に最終ラインを形成するはずの両サイドバックは上がったまま帰って来ず、ボランチの宮間は最前線でFWと完全に同化していた。

「暇ねぇ・・」

「はい・・」

 いつもなら、弱い金城は守備陣が一番忙しいのだが、この日ばかりは全くすることがなかった。

「前の方楽しそうね」

「はい」

 ゴール前では、宮間がシュートを放ち、それが相手DFに当たりコーナーキックになるところだった。

「めぐみちゃん、上がって来ていいわよ。私一人でもなんとかなりそうだし」

「はい・・、でも、人いっぱいいるし、なんか宮間さんに怒られそうですし・・」

「そうね・・」

 ゴール前の人の群れの中で、興奮する宮間の叫び声が響き渡る。

「でも、話し相手がいてよかったわ」

 柴が、前方にいるもう一人のボランチ静江を見る。一人ゴーグルメガネを掛けた静江は、時々、飛んでくるクリアボールを拾い、また前に送るという仕事以外、することもなく、グランドの中央で一人黄昏ていた。

「今日はいい天気ねぇ・・」

「はい・・」

 二人の上を、また大きな雲がふわふわと流れていった。


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