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金城町商店街女子サッカー部  作者: ロッドユール
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乱闘騒ぎ

 宮間は、足元にあったペットボトルをグイッと掴み上げた。

「あっ、宮間さん」

ハラハラしながら状況を見守っていた、野田と仲田と志穂が同時に叫んだ。

しかし、宮間は周囲が止める間もなく、掴んだ給水ボトルを、ベンチに向かって歩いてゆく麗子の後ろ姿めがけて思いっきり投げつけた。

「ああああ」

 野田たち三人の悲痛なため息にも似た叫びが広いピッチに木霊する。

宮間の投げたペットボトルはきれいな弧を描き、麗子の後頭部に見事に命中し、中の水を麗子にぶちまけた。

「いったぁ」

麗子は素っ頓狂な声を上げると、頭を押さえうずくまった。

「ちょっと、何すんのよ」

 が、すぐに何が起こったか察した麗子が、ずぶ濡れでうずくまりながら宮間に向かって振り返る。その目はキッと宮間を睨み据えていた。だが、宮間は素知らぬ顔で、明後日の方を見て口笛を吹いている。それを見て怒り狂った麗子は、足元に転がっていたペットボトルを掴み上げると、宮間に投げ返した。

「あっ」

また、野田と仲田と志穂が同時に叫んだ。

「ぐわっ」

まだ水の半分残っていたそのペットボトルはこれまた見事に、直球ストレートで宮間の眉間に命中した。

「だ、大丈夫ですか」

 野田と仲田と志穂は慌てて、額を押さえうずくまる宮間に掛け寄る。

「ヒーッ」

 しかし、顔を上げた宮間のこめかみに青筋立てた鬼のようなものすごい形相を見て、三人はすぐに一斉に身を引いた。

「麗子、テメェ、やりやがったな」

 宮間はそう言うか早いか、履いていたスパイクを神技のごとく素早く脱ぐと、それを麗子に向かって思いっきり投げつけた。金属のポイントがついたスパイクは凶器のように回転しながら、麗子を襲う。

「きゃー」

 麗子は叫びながら、抜群の反射神経でそれをすんでの所でなんとかかわした。

「今本気で当てる気だったでしょ」

 麗子が叫んだ。

「当たり前だ」

「私を殺す気?」

 麗子も履いていたスパイクを脱ぎ、それを宮間に思いっきり投げつけた。

「うをぉ」

 今度は宮間が叫ぶと、それをこれまた抜群の反射神経でぶつかるすれすれのところで、体を反らしてかわした。

「この野郎、殺す気か」

 宮間は自分のしたことは棚に置きブチギレる。そして、宮間はもう片方のスパイクを素早く脱ぐと、これも麗子に向かって思いっきり投げつけた。こうなるともう、とまらない。二人とも近くにある投げられそうな物を、すべてお互い投げまくった。宮間は野田や仲田のスパイクまで脱がせて投げた。麗子はベンチ前に並べてあった給水用のペットボトルや、給水ボトル、テーピング、他の選手の置いてあった荷物まで、手当たり次第投げた。

「宮間さんも麗子さんもやめて下さい」

 野田も仲田も周囲にいた選手が悲痛な叫び声を上げるが、もうこうなっては二人はどうあってもとまらない。

「・・・」

 遠くで対戦相手の選手やスタッフが、呆然とその醜い凄惨な光景を見つめている。試合に負けただけでなく、仲間割れを起こし、醜態を晒したその光景は、まさに悲惨の極致だった。

「おらぁ~、これでもくらえ」

 しかし、そんな視線など気づくこともなく熱くなっている宮間は、そう叫ぶと渾身の力を込めて、水のまだたっぷり入った給水ボトルを麗子に向かって投げつけた。が、しかし、表面が水で濡れていたせいで手元が狂った。

「あっ」

 宮間だけでなくそこにいた全員が息を飲んだ。麗子も振り返り様「あっ」と叫んだ。

給水ボトルはまっすぐ回転して水を撒き散らしながら、ベンチ前で敗戦から立ち直れず、試合が終わってなお、うなだれている監督のたかしの方にまっすぐ飛んでいく。

「ああ~」

 全員が同時に叫んだその時、度重なる敗戦のショックで呆然としていたたかしはよけることも出来ず、ペットボトルの直撃を受けた。

「・・・」

 たかしは頭からペットボトルの水を被り全身びしょ濡れになった。

「・・・」

 一同はそれまでの騒ぎが嘘のように静まり固まった。

「か、監督、大丈夫ですか?」

 隣りにいたマネージャーの信子さんが、ずぶ濡れのたかしを慌ててタオルで拭く。

「ああ、大丈夫だ」

 ずぶ濡れのたかしは、水を滴らせながら別に怒ることもなく黙って、信子さんに拭かれていた。たかしはどこまでも温厚な人間だった。

「しまった」

さすがに宮間もばつが悪くなり大人しくなった。

「ほんと、野蛮ね」

 だが、そこにまた麗子がよけいな一言を言う。

「なんだとぉ」

 せっかく大人しくなった宮間だったが、この麗子のよけいな一言で再び宮間の怒りに火がついてしまった。そして、再び喧嘩が始まる。

「だめだこりゃ」

 宮間の取り巻きの三人も、他の選手たちも、もう呆れるしかなかった。

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