ロイヤルブルー 歴史の終わり
AI とバイオ工学の急激な発達。それにより人類社会はどうなっていくのか。
近未来を想像してみました。
AIの進展により世界は劇的に変化した。
人類の歴史が生み出した森羅万象。
思想・哲学が。宗教が。芸術が。そして歴史が。
究極のコンピューター「ロイヤルブルー」にインプットされた。
そして人類の生活に必要な経済活動のその全てが「ロイヤルブルー」が次々と作り出すロボットによって実施された。
手術も裁判も教育も、そして人間の生存に必要な生産活動も、さらに政治もロボットが行う。
もう人為的ミスなどは起こらない、物事が恣意的に判断されることもない。
「ロイヤルブルー」は、人類の歴史のその全てといっていい膨大なデータから、真善美のその価値体系の判断まで行った。
その基準により、最も望ましい人類社会。人々が幸福感を多く味わうことができる社会が構築された。
そして、その能力が、その性格が、その容姿が、人間としての最高を極めた、最高人間「ファーストパーフェクト」を創造した。
この世に新たに生まれた人間は、誕生と同時に体内に極少チップ「ライフレコーダー」が埋め込まれる。
ライフレコーダーによって、その人の人生の全ての行動が、言動、そしてその人がその目で見た映像も含めて全て記録され、その記録はロイヤルブルーに直結する。
ロイヤルブルーが創造したファーストパーフェクトの基準に照らしてその人の能力、人としての人格の高さを基準とした性格、容姿のレベルが数値化された。
が、ある時期からそれは意味を持たなくなった。
AI と並んで急激に進展しているバイオ工学により、新たに生まれる人間は、そのほとんどが、遺伝子を改変したデザイナーズチャイルド。ファーストパーフェクトのバリエーションと言うべき人間となっていったからである。
バイオ工学の進展により、人間は不老不死の存在となった。
既に老人であった人間も若返った。
最初、その特権を手に入れたのは、世界における最富裕層だけであり、そのことにより巨大な社会的緊張、様々な劇的事象が発生したが、AI の更なる進展により、その技術は普遍化した。
全ての人間がその恩恵を手にいれることになったのである。
そして既存の人間にもライフレコーダーは埋め込まれた。
更にデザイナーズチャイルドではない人間も、その遺伝子を改変し、ファーストパーフェクトのバリエーションとしての人間になっていったのである。
人間はもう死なない。歳もとらない。
人口は増え続ける。
どこかで産児制限が必要では。その議論も生まれたが、その必要はなかった。
ロイヤルブルーは、自ら進展させ続けている技術により、月を、火星を、金星を、地球同様の環境を持つ星に作り替えていったのである。
はるかなる宇宙に向かって、それを人類にとって最も望ましい環境に作り替えていく。ロイヤルブルーは、自らが生み出したものを、どんどんと送り出していった。
人間が快適に居住できる環境を持つ星を次々に作り出すために。
人間はもう働く必要はない。
今、生きている世界。
あまりにも統制されていて、退屈ではないか。
そんなことも思う。
だが、人はロイヤルブルーにアクセスし、そこに無尽蔵に蓄えられている人類の遺産を取り出す。
人間は、ロイヤルブルーが生み出す仮想現実界で自由に遊ぶのだ。
永遠に。
偽、悪、醜も包含した、刺激に満ちた有限の人生か。
真善美のみの退屈な永遠の人生か。
これが、未来の人類が選択しなければいけない命題。
そんな想像をします。
作者は、典型的な文系人間なので、進展するテクノロジーの、その詳細について記述する能力はありません。
従って、この種の物語は、思想的、概念的にしか書けませんので、具体的なキャラクターが登場することのない、アイデアを列挙しただけの小説となっております。
新たな生命の誕生については、そのことも、そのための恋愛も、必要な行為も仮想現実界で行う、となれば、人口は一定のままで変動することはない、となるでしょう。
人々が実際に何か行動する必要もなく、ただ単に、ロイヤルブルーと連結した脳内の仮想現実だけで完結する人生(時間的には人間の認識的には永遠に続く人生)となりますが、こうなると、SF でも、もうお馴染みの世界になってしまいますね、
リアルな世界と仮想現実界をどのレベルで使い分けるか、で、色々な未来を想像できるかな、と思います。
ついつい書いてしまいますが、私自身はこの種の設定は好きではないので、楽しくないです。
このテーマで長編を書く気力はありません。
ロイヤルブルーというネーミングについては、作者の投稿済の小説で「ロイヤルブルー」という作品があり、超越的な宗教的観念に類したものに使用したネーミングでした。
この小説でも使ってみました。