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76 聖女様?に会いました

人払いされた玉座の間、私はマジックルームからフワフワのカーペットとお茶のセットを出し、騎士学校時代のままに、ぺたんと座り、エリスさんをおもてなし。ミユたんはミニサイズに戻りカーペットの上でトグロを巻いてお昼寝中。


「うわぁー!セレフィーのケーキ久しぶりぃ!中の赤いジャム美味しいー!この緑色のお茶も口の中でスッキリするわ!」


「あの、エリスさん、聖女様だったんですか?」

「まさか?」


だよねー!……でもホッとした。




「私の聖獣、見えていたんですね」


エリスさんがカチャリとフォークを置く。


「うん。言わないでごめんね。何から話そうか……私の両親は二人とも神官でね。大神殿に今もいる。私は神殿で育ち、聖獣様の絵姿や、物語に囲まれて育ったの。他の人との違いはその環境による神々の知識と並外れた信仰心ね。魔力はほんとにないのよ?それに親はどれほどガッカリしたか」


篤い信仰心……それでルーが見えたのか。それがいわゆる〈神力〉?おばあさまにも当てはまるかも。


「〈魔力なし〉の私は神殿を守ることで神に仕えようと必死に努力して騎士学校に入った。でも入っても辛いことばかりだった。ササラと二人。泣きながら過ごす日々だったわ」


そんなに女子生徒に排他的だったんだ……

私が入学するのを機に、おばあさまとコダック先生がきっと環境を整えてくれたんだ。


「そんな生活の最後の1年にセレフィーと出会った。初めて訪ねたセレフィーの部屋はどの神殿よりも清冽で、奥に、夢でも会うことがないと思っていた、美しく清浄そのものの神が……とても可愛らしいお姿で、ケーキをモグモグ食べて、鎮座していたの。感動に打ち震えたわ」


イロイロと……目撃されちゃってる。


「四天のうち、西の御方は特に真っ直ぐで清廉な御仁。セレフィーはそのお方の契約者とわかり、私は心底ホッとした。神殿も学校も薄汚い思惑だらけ。でもセレフィーだけは、何の探りあいもせずに付き合える。聖獣様の保証だもの。私は、私とササラは、ようやく、あの学校で息ができる場所を見つけたの」


……気がつかなかった。お二人がそんな思いでいたなんて。


「肩の力を抜いた、セレフィーとアルマと4人の1年間、本当に幸せだった。文字通り神はいるのだと思った。たまにセレフィーと聖獣様がじゃれ合う様子を見かけて、自分の幸運が信じられなかった。セレフィーは契約者であることを自慢することもなく、度々隠蔽の魔法?を聖獣様に施すのを見て、きっと聖獣様は隠さなければならないのだとわかり、私は自分だけの胸のうちに留めたの」


私が〈魔力あり〉なことも見抜かれてた。私ってばどんだけ気を抜いちゃってたのか……


「あなたたちと出会って、エルザ様と出会って、やはり騎士学校に来て正解だったと思って卒業した。軍に入隊し、その合間に大神殿に行き神兵の手ほどきを受けて……そんな日々の中、私は大神殿で拉致されたの」


「拉致?」

……私の、エリス姉さんを、拉致だと!?


「騎士学校に行き、軍に幹部入隊し、やがて神兵を率いる立場。エルザ様とのパイプ。妬まれたのね。クズ神官五人と巫女三人に拉致され、暴行を受けた」


「許せない…………」

身体中から殺気が吹き出す。

ブワッと私の短い髪が逆立つ。


「男五人相手に私はなすすべなかった。意識がどんどん遠くなり、暴力だけでなく、この身を汚されたらと思うと……私は舌を噛み切ることにした」

「エリスさん!!!」


エリスさんが私を安心させるように、私のもみ絞る両手をポンポンと叩く。


「私が今世の別れの祈りを終えたその時、私の指輪が震えたの」

そう言って、エリスさんは左手小指の……私達の友情の金の指輪を目の前にかざして私に見せた。


「指輪から、雷撃が放たれた。目の前の男どもと距離を置いてほくそ笑む女どもと……天空に。天空に向かった雷撃は何百もの光線となって再び地上に舞い戻り、何度も八人を地獄に落とした。一時間に及ぶその雷撃は私を綺麗に避けて降り注ぎ、大神殿という場所が場所だけにその様子を見習いから大神官まで全て目撃した」


「…………」


「私への無体を神がお怒りになったか?私が絶体絶命の場面で力を授かったのか?どちらにしろ私が尋常じゃない雷撃を天から放ったようにしか、大神官には見えなかった。それは古から神殿に伝わる、光を操る聖女の姿そのもの」


エリスさんが口の端を上げる。


「仕込んだの、セレフィーでしょ?つまり、セレフィーが私を聖女にしちゃったのよ」


ま、まじか?


「セレフィー、ありがとう。私が今、生きているのはセレフィーのおかげ」


エリスさんが私の両手を包み込み涙目で微笑む。


……エリスさんの役に立ってよかった!本当にエリスさんが生きていてよかった!


よかった……けど……やっちまったなあ私!オイ!




◇◇◇




「んで、どうしてエセ聖女やってるんですか?」


「うん、私も最初は否定したのよ?でもどんどん担がれてしまって、身動き取れなくなって……私は高位の立場で最も信頼するエルザ様の元に飛び込んだの」


ここでおばあさまなの!?


「エルザ様は、私の話を頷きながら聞いてくださって……にっこり笑っておっしゃったの、利用しなさい、と」


おーう。目に浮かぶ……


「聖女の権力は一国の元首と並ぶ最高ランク。その力を振るい、神殿を改革せよと。私を襲ったようなクズ神官や巫女を一掃せよと」


おばあさまーーーー!!!


「でも、間違っていないという信念がなければ、強権を発動するときに迷いが生まれる。自分が聖獣様とセレフィーに恥じる行いはしないと誓えるか?一生聖獣様に仕える覚悟があるのか?問題はそこだと」


「…………」


「セレフィーに救ってもらった命、汚すつもりなんてない。聖獣様に一生仕える?こんな幸せな人生ないわ。私、あっさり覚悟を受け入れて、後はエルザ様直伝の女優魂で旧態をぶった切ってるってとこ」


ああ……おばあさま二世の誕生だ……


「あ、あの、軍は?」

「ん?退役した。軍の内部は派閥だらけで私は真っ直ぐトランドル派に入ってた。セレフィーが消えたの、閣下のせいだとすぐ連絡来た。1秒も迷わなかったわ!幹部が200、兵士3000人くらい?みんな辞めたわね」


キャー!みんなー!おばあさまに忖度し過ぎー!






「セレフィー、私が聖女でなくてガッカリした?」

「まさか?」


ルーに背かない生き様をすると誓ったエリスさん。それって間違いなく、既に、〈聖女〉だ。



「聖女エリス様、折り入ってお願いがあります」

「うむ、何なりと申してみよ。ふふふ!」


レーガン島の神殿への同行、あっさり引き受けてくれました!




◇◇◇




「おばあさまは、お元気でしたか?」

「元気なわけがないでしょう?…………






……………怒り狂ってるわ!」






セレフィオーネは聖女と仲間になった!!!


次回更新は水曜日予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] >……………怒り狂ってるわ!」 えーと、政治形態変わってません?
[一言] 「おばあさまは、お元気でしたか?」 「元気なわけがないでしょう?………… ……………怒り狂ってるわ!」 ↑ あ~ ヒャッハー!な世紀末で てめえらの血はなに色だーっ!…
[一言] デスヨネ~☆
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