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73 依頼をサクサクこなしました

今日もフィオとしての一日が始まる。


最近はペットの捕り物や、素材の採取をしているのを、ご近所さんに見られていて、『何でも屋でヘビ使いのフィオ』になった。私に直接アレコレ依頼してくる人もいるが、頼りになるヨーコさんが、依頼主と内容と報酬をノートに記入してくれて、それを兵士で兄貴分という設定のヤマダくんが確認し、許可したものを受けている、という体にしている。


少年相手だと軽んじられるのも時間のロスだし、いちいち受付するのめんどい。


「フィオくん、ヘビちゃん、行ってらっしゃーい!」

「ヨーコさん、行ってきまーす」

『行ってきまーす』


ミユが体を横に揺らしてヨーコさんにバイバイする。


「……必死に働いて……いじらしい……男の子の()()までして……」


ヨーコさんは私を見送るとき、いつも何か呟いている。???



『セレちゃま、今日の予定は?』

「今日は森でジャンクベアー討伐と、ゾウエナの捕獲、そして回復薬の材料としてマルシュキノコを試してみたい」






◇◇◇




ゾウエナは体長50センチほどのダンゴムシもどき。ネネル草の抽出液をミユに含んでもらい、毒霧の要領で吐いてもらって、眠らせてから捕獲した。なんでも前世でいう漢方薬の材料になるらしい。深く考えるのは止めよう。ちょっとグロい。


『セレちゃま 、掴んだよ!私、睡魔霧も吐けるようになった!』

ますますレベルアップするミユたん…………



途中3匹のデビルイノシシが飛びかかってきた。


「とりゃあ!」


私は右手からミユたん直伝の暴水を3匹に勢いよく浴びせ掛け、指を鳴らして凍らせる。


『お見事!いきなりの襲撃だったのにいいスピードだったよ!でもなんで凍らせたの?』

「こないだ肉屋さんに凍ってるほうが引き取りやすいって言われたの」

そういってマジックルーム〈冷凍〉に収納する。


マルシュキノコをボチボチ摘みながら、マップの導きによって、今日の大トリ、ジャンクベアーにたどり着いた。


ニックとやっつけたジャンクベアーのほうがデカかったな……


ポケットの上から小さな宝物を握りしめる。ぼうっとしているとあちらさんも私達に気がついた。しばらくにらみ合ったのちに、


「グルルルゥ!」


四つ脚で走り私に向かってくる。


私は目の前まで引きつけて右足を振り上げ顎を蹴る。のけぞったジャンクベアーの後脚をステップにして、左頬に右ヒザ蹴りを放つ。はい、前世のプロレス技、シャイニング・ウィザード決まりましたー!って、女だからウィッチか?いや、男装してるからやっぱウィザードで!


ズーン!


森のくまさんが後ろ向きに倒れる。


『セレちゃま、とどめは?』

「うーん、依頼はジャンクベアー見かけたからなんとかしてってだけで、被害は出てないんだよね。ミユたんちょっと話してみて?」


ルーは理由なく動物を殺すことを、絶対嫌がるもの……


ミユたんが顔に放水して起こす。そして何やらやり取りしている。


『セレちゃま、このベアちゃん、もうすぐお産なんだって。だから食べ物をたくさん集めるために浅い森まで来ちゃったみたい』


そういえばお腹重そう。お産準備中の妊婦殺すとこだったよ……

私は急いで回復魔法をかけ、胎児の無事を超音波で確認。心音二つ、双子ちゃんだ。アルマとセシルみたいにこじれないでねと苦笑しつつ安産を願いお腹を撫でる。久しぶりの毛皮の肌触り。ルーのより硬め。


「ベアかあさん、ここはもう危険。人間に見つかったら問答無用でやられる区域だよ。森の奥に戻りましょう。食べ物は新鮮なイノシシの氷漬け、一頭あげるからね?」


ベアかあさん、何度もこちらに頭を下げてイノシシを小脇に抱えて森の奥に消えていった。中間管理職か!?


『この恩はいつか返すって!』

クマの恩返し?何に化けるのかな?楽しみ!




ミユたんの大好きなヘビイチゴを摘みながら街に戻っていると、頭上から火の玉が何弾も降ってきた。私は再び右手から暴水を噴出させ消化する。ミユは周囲をミストで包み、森への延焼を防ぐ。


『森で火魔法とかありえないよ!』

ヘビ姐さんキレた!


私はマップで敵の位置を確認する。三人。二キロ先の木の影。三人で力を合わせて遠くまで魔法飛ばしたってとこか。


私はトンっと跳躍し森の木々の上に出て……狙いを定め、手裏剣を両手で投げた。うん、手応えあり。日々マルシュの樹海で正確さと集中力の向上に努めたからね。シュナイダー殿下とやりあった時より練度は上がった……つもり。三キロ先までは命中率100%


魔法で森が荒れたらいけないし、魔法を披露する義理もない。毒手裏剣で十分。


私は地面に降りたち、ミユたんを回収し、襲撃者のもとに向かう。


三人とも私の麻痺毒の塗られた手裏剣が2枚づつささり、昏倒していた。

「真っ黒な忍び装束……さもトランドルに見せかけるなんて嫌らしい」


『セレちゃま危ない!』

一人が不意に起き上がり、覗き込む私にナイフで切りつけてきた。顔に痛みが走ると同時にナイフを左手で払い、右手で頸動脈のツボを掴み、今度こそ、失神させる。毒の耐性がこいつだけあったんだな。従来の毒、もうちょっと複雑に合成して改良すべきか……


ミユが男どもの懐を探る。

『何にも足がつくものはないねえ。でもまああの火魔法、ジュドールの魔法師かな?』

「わかんないよ。前回、尋問しても吐かなかったんでしょ?殿下の手下が一番可能性高いけど、私もいろんなとこで敵作ってるかもしれないし。案外マルシュの王族派かも。トモエ姫にきっと恨まれてるし、私が宰相派であることは事実だしね」

だってタブチさんはキチンと報酬払うもん!


『セレちゃま、とどめは?』

「もういいよ。神経毒混ぜてる。刺客としては再起不能だから」


『セレちゃま、ほっぺ、血』

「ああ」

私はグイっとコブシでこする。大した流血ではない。あの時に比べたら。


『……セレちゃま、朝休憩した池のところで待ち合わせしよ?私、この辺りのヘビイチゴ、もうちょっと摘んで追いかけるから』


「了解、じゃあ池でナイフの手入れして待ってるね!」


ミユたん食いしん坊だな。




◇◇◇





ミユは転がった三人の男を睨みつけ、目をギンッ!と光らせた。

どす黒い靄が男たちに降り注ぐ。


急に男たちが気を失ったまま脂汗をかき、悶え始めた。


『我が主人(あるじ)を害して、生きて帰れると思うたか?』


ミユが小さくため息をこぼす。


『セレちゃまは……優しすぎる……そこが……愛おしいところではあるけれど……』


横たわる男たちを睨みつける。


『お前らを殺すとセレちゃまが悲しむ。よって、一生涯消えぬ悪夢を授けよう。きっと死んだほうがマシだったと思うだろうねえ』


キバを剥き笑い……空を見上げた。





『ルー様……早くお戻りください……あなた様の愛し子はその身を酷使し……常に心で泣いております……』








感想欄で教えていただいたシャイニングウィザード!ようやく投下です!


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