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72 15歳になりました

おれ、セレフィオーネ・グランゼウス改め、ヘビ使いのフィオ、15才になったぜ!

おれの首にはいつも相棒のミユ氏が巻きついてて、おれにハクをつけてるぜ!

おれの髪は耳の後ろからザクザクに切ってボサボサだ。キレイに襟足整えると、若い頃のアニキにそっくりになっちまうからな!


って、はあ。心のシャウトまで男言葉でなくていいか?あー疲れた。

レーガン島からマルシュ大陸に渡り、各地のギルドの依頼をこなしつつ3ヶ月ほど南下すると、マルシュ王国に入った。


マルシュは革命が起こり、トモエ姫はじめ王族は全て投獄され、宰相を中心とするグループが当面の政治を行なっていた。

庶民は何か変わるんじゃないか?という期待と、流通する物資の少なさや治安の悪化への不満、で、よくも悪くもテンションが高い。

そんなマルシュの元王都トウクンの食堂兼下宿屋に身を寄せている。


下宿先はアラフィフと思しき女将ヨーコが一人で営んでいて、毎月前金で室料を払うことと、弱回復薬を一本つけることで二階にある小さな部屋を契約できた。私お手製の回復薬は女将の腰痛に効くらしく、多分これがなければ身元のはっきりしないヘビ使いとヘビを住まわせてなんてくれなかっただろう。



下宿が決まるとすぐに私は周りから浮かないように、服飾店で地味なマルシュ風の打ち合わせ式の服を一式買った。

現在身長は155センチほど。まだ止まってないから!これから成長期来るから!

そのため服は子供サイズ。男児用の上着なので胸が苦しい……とかない……ひっそり泣いた。ささやかな胸の問題は外出時はマント羽織るし、人々の視線は首元にクルンと巻きついているミユにいくから問題なし。


そもそもマルシュは黒髪だらけ。悲しいくらい埋没してる地味男ですよー!黒眼はまだ見たことないけどね。




◇◇◇




私達がトウクンに入ってすぐ、解放記念パレードが行われた。私はそれを下宿の2階の自室の窓から眺めていたのだが、知ってる顔が行進していた。


私はちょっと考えたけれど……接触を図ることにした。パパンのマネの魔力の針を馬上のサカキさんの首に放った。サカキさんは瞬時に首を回し針の出所を探して、私と目があった。私が小さく手を振ると、目を見開いて驚愕した。


夜、私の下宿にサカキさんとヤマダくんが訪ねてきた。

「セレフィオーネ嬢!どうしたの?その格好?……可愛いけど……」

「セレフィオーネ嬢、一体なぜマルシュに?その頭は……マズイぞ、おい……」


「うん、ちょっとお願いがあってね。まあ入って?」

「いえ、主人から丁重にお招きするように言付かっております。」

「主人って、宰相閣下?」

二人とも揃って頷く。


「私、囚われるの?」

「宵闇の破壊姫を捕らえる猛者など、今この国にはおりません。ただ、セレフィオーネ嬢が宰相を害する時はどのような犠牲を払っても排除しますが。」





あちこちに焦げた後の残る城についていき、小さな談話室のようなところに案内された。


「セレフィオーネ様、お久しぶりでございます。」

上座から立ち上がったのは、マルシュの身分の高そうな服装をした…………


タブチさん……御者さんだった。


「そゆことーーーー!」

『どゆこと?』





円卓に宰相タブチさん、サカキさん、ヤマダくんと四人で座る。


「セレフィオーネ様、本日は何故マルシュへ?」

「うん、国に力を求められてね、逃げ回ってるところ。ほとぼりが冷めるまでマルシュで過ごそうと思って。」

嘘ではない。


「そのゴタゴタゆえに……本日は西の四天様ではなく、精霊様とご一緒なのですか?」


私は目を丸くした。

「へーえ。タブチさん、見えてたんだ!全然動揺してなかったよね。」

かなりの魔力持ちってことね。それを隠すコントロールもできるほどの。


「いえ、出会った瞬間、死を覚悟いたしました。恐れ多くも契約者を騙し……殺めようとしたのですから。」


流石一国の宰相といったところか。


「まあ、西の御仁にも、契約者のあなた様にも怪しまれていたはずなのに相手にもしてもらえませんでしたが、ふふっ。」


「いやいや、お頭が他国まで出張っちゃダメでしょ?」

「いえ、王族が逃げるというあの時が最重要の局面であり、あれこそが転機だったのです。」


まあ……ギルドに見捨てられて、確かに崩壊のきっかけになったわな。


「え?何?どういうことですか?話が見えない。」

ヤマダくんがキョロキョロと三人に視線を移すけど、三人揃ってスルー。


「聖獣様の力を、一国の内情で使うわけにはいかないということで、聖獣様と別行動ということですね。なるほど……」


いや……そこまで高尚な理由じゃなくて、やられてアスにぶっ飛ばされただけなんだけど………そういうことにしとくか。


「で、なぜ私を呼んだ?」

サカキさんがふりだしに戻す。


「前に別れ際、私に恩を返すって言ってたでしょ?早速返してもらおうと思って。」

「……具体的には?」

「一つ目はジュドールの様子を出来るだけ知りたい。手に入った情報を私にも回してほしい。二つ目は巫女さんを斡旋して欲しい。北のレーガン島で祭祀を執り行ってほしいの。」


「巫女……この辺りにはおらんな……」

「情報も定期便も止まり、ギルドも引き上げた状態だから、たいして入ってこないよ?まあ俺たちも自分たちのことで手一杯だからね。」


「お返し、と言ってはなんだけど、本来ギルドに持っていくような依頼、私が個人で請け負うわ。まあ正規料金は当然いただくし、モグリの活動になるから秘密厳守にするけど。どう?」


マルシュのギルド潰した責任、少しは感じておりますよ!王族がアホだっただけで、民には関係ないからね。


「……ふむ。正直、トランドルのゴールドが動いてくれるというのはとっても有り難い。わかった。協力しましょう。」


「あ、革命がらみのきな臭い仕事は無理だから。」


「もちろん。聖獣様に恥じない仕事しか回しません。」




◇◇◇




「フィオくーん、今日はどこでヘビちゃんのショーするんだい?」

「ヨーコさん、今日は市場の前からスタートしようかと。」

「そーかい。熱中症には気をつけて。ヘビちゃんも頑張って!」

『はーい。』

「『行ってきまーす』」


「…………ホントに天使みたいなめんこい子供だよ。料理は手伝う、重いものは持ってくれる。銀のヘビも気味が悪いどころか逆に神秘的だし……どこのいいとこから家出してきたのか。攫われないよう自警団にルートを知らせとこうかね……」





「ミユたん、まずは3丁目のトリノさんちの猫がいなくなったってさ。」

『了解、ミユはそっちの路地探すね。』


ミユたんはこの一年あまりで人に揉まれ、随分とお姉さんになった。かーちゃんさみしい……



「ミユたん、お疲れー!次、森にネムネム草取りに行くよー」

『オーケー、セレちゃまー!』



◇◇◇




「ただいまー!」


「フィオ、お帰り!」

「フィオ、一緒に食べよう!」

「フィオ、オレの隣においで!ほら!」


ヨーコさんの食堂は夕方時、とっても繁盛してる。お客さんのお兄さんたちはフレンドリーで、(いち)下宿人の私の名前を覚えてくれて、気さくに声かけて頭をナデナデしてくる。たまには夕食ご馳走してくれるので、経済的に助かっちゃう!革命バブル?

ちょっぴり、トランドルギルドの酒場を思い出す……


「フィオ!」

「あ、ヤマダのお兄ちゃん!」

「お帰り。疲れてない?」

「うん!大丈夫。上がって上がって!」

ん?ヤマダくん、なんで食堂見渡して睨みつけてんの?お腹空いてる?



自室に戻り、依頼の結果をヤマダくんに報告する。タイミングよく訪ねてくれてよかった。


「はい、今回の依頼、8件ね。無事終わりました」

「早っ!そんな急がなくてもいいのに……。じゃあこれ次の依頼ね。緊急のものはないから。これ前回の報酬だよ」

「ありがとう」

私は昨夜台所を借りて作った抹茶ケーキをお茶うけに出す。和食材料が揃っているのもマルシュを潜伏先に選んだ理由の一つ!


「フィオちゃん、貴族だってのに料理も上手いのか……マジヤバイ。かわいすぎ!でもオレなんせ、一回殺人未遂してるからなあ……はあ……日に日にライバル増えていく……」

「ヤマダくん?」


「あ、ごめん、ボーッとしちゃって。今日は大した情報ないんだ。一件だけ。トランドル系の兵士が全員軍を退役したらしいよ。どんなに慰留しても聞く耳もたずで。で、全員冒険者として、各地に散らばったらしい。揃って実力者だったから国軍かなりの戦力ダウンで慌ててる。まあジュドールは魔法師団のほうがそもそも勢いあるけどね」


おばあさま……アベンジャー閣下を目に見えて追い詰めはじめたか。ご愁傷様。


「グランゼウスは?」

「フィオちゃんのお父上の情報は特にないよ」

「そう……」


タブチ宰相の集めた情報では、私が出奔したことで何の騒動も起こっていないらしい。あの生死をかけた戦いはなかったことになっている。


この時点でグランゼウスを敵に回すのは得策ではないと判断したのか?何か別の腹づもりがあるのか?不気味。


「お父様……」


今頃、私のグラスで、ウイスキーを嗜んでらっしゃるだろうか…………








次の更新は金曜日です。

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[一言] 残当 クーデター起こさないだけ優しい ・・・いや、惨いか
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