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71 ギルドに報告に戻りました

トボスギルドのドアを開ける。

「依頼、終わりましたー!」

「ご、ゴールドさん!お待ちしてました!」

昨日の接客態度が全くなってない受付が、バタバタと駆けてくる。ゴールドさんって私?


「え、あ、そう?では一件一件説明すると、まずタコは……」


「そういう場合ではないんです!早くこちらへ!」



背中を押されるようにして、奥の小部屋に入るとそこには、昨日ここでミユの反射魔法で吹っ飛んだD級の態度悪い男が、ベッドの上で、白目を向いて横たわっていた。男の皮膚は全身真っ黒になり、硬化していた。


「…………」

『セレちゃま……こいつが女の子の敵ね』


「ゴールドさん!どうかバカスさんをお助けください!」

「何故私?まず医者でしょ?」

「医者はサジを投げました!ゴールドさんが居合わせたことはきっと天命!お願いします!」


こいつがジュリアさんに横恋慕していた?ジュリアさんと結婚するガンさんに嫉妬した?C級のガンさんを超えられず腹が立った?そんなとこかな?


「お客人。どう見立てられる?」

そこには町長兼ギルド長もいた。


「……この男には自分で思い当たることがあるはずよ?そしてどうすれば治るかもわかってるはず。小康状態の時に聞いてみるといいわ。それよりも、依頼済みました。出来るだけ早く船、準備してほしいのですが」


「ふう。場所を変えよう」




◇◇◇





「……というわけで、3つの依頼全てコンプリート。これ、採取したスッキリ草です。確認してください」


私達は日頃あまり使われていないと思われるギルド長室に座り、スッキリ草を台の上に丁寧に置いた。スッキリ草は鮮度が命。


「……このスッキリ草で、バガスが治ると思うかね?」

「スッキリ草は、ガンさんの依頼でしょ?勝手に使う気ですか?」

町長はまだ、ジュリアさんが治療を受けたことを知らないはず。治療してない仮定だと、ガンさんがこのスッキリ草を今か今かと待っていると分かっているはずだ。


「つまり、バガスのほうが、ジュリアさんよりこの街での重要度が高い、と?」

「……よそ者が島のことに口を挟まないでほしい」

町長兼ギルド長が私に向かって凄む。おいおい。


「……今の発言、ギルド長として言ったんなら許されませんよ?」

「…………」

「依頼と冒険者を守るつもりのないギルド長なんて許されない。街の利を優先し、それが出来ないならやめてください」


「……あなたが来るまでは、うまく回っていたんだがね」

「私のせいにするの?」


私の胸からミユたんが這い出て私の首に巻きつきシャアァっと威嚇する。


「ひっ!」


「さっきの話、わかってないようだから、もう一度言うけど、私、この島の氏神様に認められてんだからね?巫女連れてきてくれって頼まれてる存在なんだからね。ここにいる私の相棒は氏神様の御使にかしずかれた実力持ちなんだからね。ケンカする相手、間違ってるわ!」


「……すまんかった」

町長は私が一歩も引かず、冷めた視線を外さずにいると……ボソリと謝った。


「謝ってほしいわけではありません。仕事をしてほしいだけ。依頼完了の認定と早速マルシュに渡る手配をしてください」


「……はあ。あなたは思った以上に場数を踏んでらっしゃるのですね。若く可愛らしい外見に……読み違えました」


場数は踏んでるよ。つい最近殺されかけたし、あなたよりもっと怖い顔とも、もっと怖い高齢者とも渡り合ってます。


「早速、手配いたします。そして年寄りの忠告です。急ぎの旅であるのなら、今回のような……無意味なやり取りで時間のロスをしないように、その可愛らしい外見をなんとかしたほうがいい」


私はミユと顔を見合わせた。

『一理ありまちゅ。セレちゃま、バカなオトコに舐められないようにこれからミユ、敢えてセレちゃまの肩に乗っとくね!』


私が可愛らしいねえ。なかなかおっきくなんないんだもん。牛乳飲めない生活続いたからなあ。でも、確かに行く先々で子供じゃないって説明から入るのも疲れるしね……。


私は太もものホルダーから短剣を抜いた。


「ひっ!」

「ミユたんちょっと離れて」

『セレちゃま?』


ザクッ!


私はおばあさまの髪留めで襟足で一つに束ねていた、腰まで伸びていた髪を耳の後ろから切り落とした。

「なんと……」


「当面、()()は、ヘビ使いの旅人としてやっていく」


『ヤバイ……ルー様に怒られちゃう……せ、セレちゃま、髪捨てちゃダメ!とりあえず取っといて!』

「へ、なんで?」

『け、契約者、だから、でしゅ!』

「そんなもん?」

『そんなもんでしゅ!』




◇◇◇




宿に一泊し、約束の時間に港に行くと、一人の男が立っていた。浅黒い肌に暖かそうな焦げ茶の瞳。なかなかのイケメンだ。


すれ違おうとすると、


「ゴールド姐さん、ヘビ姐さん!!!」

男は急に涙目になり、私達に抱きついた。


「は?へ?えっと……どちらさま?」

「ガンです!」


「『はあああ?』」


私達は上から下まで男を眺める。鑑定すると、確かにガンさんだ。

『ヒゲを剃って髪を切るだけで、ヒトって変わるんだ……』

ミユたんが口開けっ放しだ。


「姐さん方!ジュリアが、ジュリアが!意識戻って!元の白い肌に!うっうっ……ありがとう、ございます!」


思ったより回復早かったな。ガンさんの愛の看病のおかげだね!モサイ風貌、早速ジュリアさんに怒られてさっぱり刈ったのかな?


「よかったね……ガンさん」


「このご恩は一生忘れません!」


「え、忘れていいよ?そんなことより、ジュリアさんと二人の時間取り戻して?でも、回復したこと教えてもらえてよかった。さあ、もうジュリアさんのそばに戻ってあげて?」


『そーそー!新婚さんのやり直しー!ラブラブチュッチュしておいでー!』

私がサラッと通訳すると、純情ボーイは顔真っ赤!両手で顔を覆う。


「トランドルのAとは……こんなに器が大きいのか……姐さん方、私がマルシュまでお送りさせて頂きます。ジュリアからもそうするように言われてます。この役目、誰にも譲れません!どうぞ、私の船にお乗りください」


ミユと顔を見合わせる。

「じゃあ、お言葉に甘えて」

『うん。ガンさんなら安心!』


「ゴールド姐さん、ところでその髪は?」

「うん、しばらくゴールド兄さんになることにしたの。1年後、また戻ってくるからよろしくね!伝達魔法で連絡するから!」

「……髪が短いと……無垢な黒の瞳が強調されて……本物の妖精のようだ……では、出発します!」


「おう!出航だ!」

『出航ー!』


目指せ!マルシュ大陸!







レーガン島と一旦お別れです。

次の更新は水曜です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「姫様」を散々舐めた扱いした挙句、髪を切るキッカケを作った 死んだな
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