61 真夜中の男子会ーpart2
ワイワイ、ガヤガヤ……
「皆様、静粛に!静粛に!新入生!騒がしい!ふう……では第23回、セレフィオーネ様とアルマ様と同じ時代に産まれたことに感謝する会、を、ここに開催致します!」
パチパチパチパチ!
ピー!ピー!
「司会は今回も私、二年一組エベレストです。よろしくお願いいたします。それでは各学年の役員の皆様、出席の確認を………198名、全員出席ですね。素晴らしい。それでは時間も限られていますので、早速議題に移ります」
「最初の議題は四年生から、『二年生の遠泳演習は他学年も自由参加してもいいんじゃね?』です。代表者、壇上にどうぞ」
「はい、二年生では騎士学校の伝統行事として、学校の下の海岸からルンルン島までの遠泳があります。経験者の私達だからわかるのですが……片道10キロの遠泳、とても厳しいです。我々の宝であるセレアルに何かあってはいけません!是非我々もサポートとして一緒に泳ぎたいと思っております」
「ウンウン、確かにあれはキツイ。日が暮れると危ないしな。三年生はこの提案に100パーセント賛成する!」
「おいおい、下心丸見えだぞ!セレアルの水着姿見たいだけだろ!」
「いや、脱出訓練も兼ねてるから、水着じゃなくて、着衣泳だよな」
「濡れる……制服……透ける……」
「おいー!一年が鼻血出して倒れたー!救護班ー!」
「こっちもー!」
「ティッシュー!」
「一年、面倒かけるなら帰れ!」
「そ、そんな!これだけを目標に入学したのに!ワーン!」
「…………」
「と、とにかくセレアルのことは同級生である俺たちが命がけで守る!別に助けはいらない」
「ルンルンルン!」
「泳いだことないくせに、何言ってんだ!」
「んだとー!」
「はあ、お前らうるせえな」
「コダック先生!」
「遠泳は通常通りに二年生だけだ」
「やったー!ざまあー!」
「ひ、ひどい……」
「俺たちの夢が……」
「ただし、変更点がある。騎士学校女子同窓会名誉会長のエルザ・トランドル様が、男子学生の更なる向上のためにと、男子は目隠しで泳ぐことを提案され……学校が受理した」
「「「「「な、なんだってえ!!!」」」」」
「目隠しでルンルン島……」
「サメでるよね、この辺り……」
「る、ルンルン?」
「は、はいぃい!四年生、この提案、ただいまを持ちまして、取り下げますぅ!」
「そ、そうですか……。では、この案は廃案で。では、次の提案に移ります。一年生よりの発案で、『学園祭の一年生種目であるオクラホマミキサー、セレアルに優しくエスコートしてもらいたいの♡』。代表者、壇上へどうぞ!」
「…………、………、……!」
「……!………!」
「………!!!」
「???」
「……」
「では、ここからは自由討議です。発言のある方はどうぞ」
「はい!」
「申し訳ありません、一年生ですよね?まだ全員のお名前を把握していなくて。お名前のあと発言どうぞ」
「ぼ、僕は一年二組のシルクと言います。あの、僕のお姉ちゃん、あ、血は繋がってないんですが、学校のこと、詳しく手紙に書くようにって、言われて、この間、この会のこと伝えたら、次回は是非参加したいと言っているんですけど……、呼んでいいですか?」
ザワザワザワ!
「シ、シルクくん!この会は完全学外秘です!なぜ秘密を漏洩したのですか!!!」
「す、すいません!お姉ちゃんには、いっつもお世話になってて、断れなくて!それに、お姉ちゃんはよくよく考えると関係者になるのかな、ならいいのかな?って。わーん!」
「な、泣かないで!今年の一年生は泣き虫くんが多いですね……例年の三倍の志願者を勝ち抜いたツワモノ揃いのはずなのに……。それにしても困りました……」
「はあ、お前らうるせえな」
「コダック先生!」
「おい、お前のお姉ちゃんって誰だ」
「グスっ、国軍の情報本部所属のササラ少尉です」
「「「「「!」」」」」
「サ、ササラ様来たー!」
「次女来たー!」
「わっしょーい!」
「ササラ様の弟君であらせられるのですか?」
「僕とササラお姉ちゃんは同じ孤児院で育ちました。ササラお姉ちゃんはみんなの自慢のお姉ちゃんです。学校の時も今も暇を見つけては孤児院にお土産を持って顔を出して、小さい子達と遊んでくれます」
「尊い……」
「麗しき家族愛……俺も混ぜてくれ……」
「皆様、静粛に!シルクくん、ササラ様はどのようなことをお知りになりたいのでしょうか?」
「はい、先日お姉ちゃんがセレフィオーネ先輩にお会いしたときに、セレフィオーネ先輩がとっても元気がなかったって、すっごく心配してて……」
「セレフィオーネ様が元気ない?ニックぅ!あ、そこにいた。何か思い当たることがあれば包み隠さず話してください!」
「あー、セレフィーこないだ ギルドの依頼で……(報酬を)裏切られて……凹んでる」
「セレフィオーネ様を、裏切るだと?」
「ありえない!」
「ニック!どこのどいつだそれは!」
「まあ、秘密でもなんでもないからな。マルシュのお姫様だ」
「マルシュ……ぼくんち商家だけど、今後取引停止するようにオヤジに言うわ」
「私、子爵家は船舶会社を持っておりますが、定期航路を引き揚げるよう、父に進言しましょう」
「それよりもセレフィオーネ様の心の傷を癒さないと!みんなで〈折り鶴〉を折りましょう!」
「〈折り鶴〉?病気じゃないんだぞ!こういう場合は〈やっこさん〉だ!」
「やっこさん???」
「皆様、静粛に!シルクくん、ササラ様はもちろん部外者ではありません。もしもおいでいただけるのであれば、我々にとって夢のようなひととき……望外の喜び!ササラ様の都合のいい日をお知らせください。万全の体制で歓迎いたします。皆様、よろしいですか?」
「「「「「異議なし!」」」」」
「あのっ、いいですか?」
「はい、芸術研究会マードックくん、どうぞ」
「先日は皆様からの有難い口添えのお陰で、研究会の学校からの活動費が一気に五倍にアップしました。ありがとうございます!さて、今回も告知なんですが、『騎士団四姉妹』の7巻が出来上がりました。前回ドラゴンにさらわれたアルマ様を救い出すナイトは誰なのか?残された三姉妹に忍び寄る魔の手!今回も挿絵は四年生のネルソン画伯です。ネルソン先輩、お立ちください。皆さま拍手をお願いします!」
パチパチパチパチ!
ピー!ピー!
「ネ、ル、ソン!ネ、ル、ソン!!ネ、ル、ソン!!!」
「はあ、お前らうるせえな」
「コダック先生!」
「で、今回はいくらだ?」
「今回も6巻に引き続き二色刷りなので1,000ゴールドです」
「買った!20冊!」
「せ、先生ずり〜!」
「大人買いはんたーい!」
「…………!」
「!!!」
「…………?」
「…………」
◇◇◇
『平和過ぎる…………』
ルーは眉間にシワをよせた。
今回も男子会が盛況のうちに終わりました。
数日お休みします。
次の更新は週末です。よろしくお願いします。