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部屋に戻り、ルーと一緒にお風呂に入った。お風呂もトイレも前世とさほど変わりなく清潔でうれしい。下水道が引いてあるわけでもなさそうなので、魔法で浄化してるんだろうな。ルーは全くお風呂を嫌がらず、気持ち良さげにシャンプーされて、湯船も首まで浸かっていた。


ルーがブルブルと身震いして水滴を飛ばしたあと、ゴシゴシタオルで拭きあげたもののなんせ毛が長くって乾かせない。ルーの毛皮をブラッシングしながら、

「ドライヤーがあればなあ」

外は雪だ。早く地肌から乾かさないと風邪をひいてしまう。

「はやくかわけー!」

そう言いながら、せっかくブラシで整えた毛並みを両手でわちゃわちゃかき混ぜた。


急に私の指先が熱を持ち、私のまわりで風が渦巻く。

「え?」

『うわー気持ちいい。さっぱり乾いた。ありがと、セレ』

「…………」


小説でのセレフィオーネは膨大な魔力持ちの万能魔法使いだった。今の私はまだ5歳の魔力検査前だからこれまで魔法を使ったことなんてない。でもなんだか適当に使っちゃってる……今日。


「ルー、わたし、まほうつかえるとおもう?」

『つかってるじゃん』

「そしつある?」

『あるから、おれ、セレを選んだんだぞ』

「まりょくがきもちいからじゃないの?」

『それが素質だよ。で、セレは膨大。おれがいっぱい吸い込んでもまだ残ってる。セレ元気なまま。普通はぶっ倒れる。セレがいてよかったあ』


小説通りなうえ小説より先に開花しちまったか……。

こうなったら結局、この才能伸ばすしかないよね。例えルート通りとしても自分を守る力はやっぱり必要だもん。


「ルー、わたしにまほう、おしえてくれる?」

『え?おれが先生?……いっいいぞ!』


これで5歳未満でも魔力を鍛える手段ゲット!


でも……このままだったら、ストーリーそのままに魔術極めて、魔力検査上級叩き出して、魔法学院に行ってヒロインに出会って……破滅への一直線。


「まほうがくいん、いきたくない……」

『?じゃあ行かなきゃいい。魔法はオレが先生するんだし?』

「ありがとう、ルー。でも、そんなわけにも……」

『じゃあ、そのとき学院にいなきゃいい。おれと旅にでよう?オレが神託だせばだれも文句言えないよね。おれがセレには他の修行させますって言えばいいよね?』


ルーってば神託下ろせるのか……さすが100歳オーバースーパーモフモフ!……ルーと旅って魅力的だなあ。二人で冒険者になってギルドとか行ってミッションクリアしてランク上げて……ス、テ、キ!


まあルーの神託は最終兵器、ひとまず現実的に考えてと、他のことを先に学び出せばいいんだ。魔法学院と同等の学び舎といえば、たったひとつ…………


「ルー、わたし、きしがっこういけるかなあ?」

『んーわかんない』

だよねー。でも、当面、騎士学校目標に頑張るしかないみたい。もし幸運にも騎士学校に入れたら、入学時期の重なる魔法学院のヒロイン、王子、取り巻きの誰ともかぶらない。


「ルー、ルーとこっそりまほうがんばって、そんでもってきしがっこうめざすことにする。で、まほうもつかえるきしになって、ルーとだいぼうけんするぞー!」

『zzz』

寝てるし。




◇◇◇



ルーをベッドにそっと降ろして、私も寝る支度をする。改めて部屋を見渡すと小物はほぼほぼピンク。もちろんパジャマもピンク。中身アラサー的にはかなり痛い。そしてこのピンク、ヒロインもパーソナルカラーがピンクのため、将来私は激オコするのだ。くだらない。とっとと別の色にチェンジしよう。部屋は木目を活かしてナチュラルな感じ。服や小物は……ルーの瞳の水色にしようかな?今までで一番心に響いた色だもん。って言ってもまだたった三年しか生きてないけどねー。


トントントン


あれこれ計画しているとドアがノックされた。エンリケかマーサだろうけどこんな時間になんだろう?

「はーい。どうぞ」


カチャリとドアが開き、入ってきたのは……パジャマ姿のラルーザだった。髪も洗いっぱなし、砕けた服装でもウンウン美少年!


「って、え?」

が!、兄が私の部屋に来るなんて、物心ついてからは初めてだと思う。私は目を丸くした。


「まだ寝てなかったか?」

俯き加減に私に問う。

「は、はい」

「そうか……聖獣様は?」

私は黙ってベッドを指差した。

「もうお休みなのか…………」


厳しい眼でルーを睨みつけるラルーザ。夜押しかけてきて何こんなに怒ってるんだろう。美形の怒り顔はマジ恐いから勘弁してよ。今日は中身濃すぎてクタクタだって言っとるたい!


ピリっとした緊張を感じ取ったのか、ルーが一瞬で覚醒し、一飛びで私の肩に飛び乗った。そして黙ってラルーザを見つめる。両者睨みあい……この空気吐きそう。


「おにいさま!ルー!どうしたのですか!」


私が耐えかねて声をかけると、兄がハッと私に振り向き……もう限界とばかりにクシャリと顔を歪め、ポロポロと涙を流しはじめた。

「おにいさま!?」


ラルーザは膝をつき頭を下げた。

「聖獣さま、ゴメンなさい、ゴメンなさい……ケガさせてしまって……うっうっ……」


ラルーザだったの!?ルーの怪我の原因!ルーと目を合わせるとルーも驚いて目をますますまん丸にしてる。


「わ、私、今日は雪で稽古できなかったので、新しい武具を創作してて……外に向かって試し打ちしてたら、悲鳴が聞こえて……」


『「…………」』


「慌てて外に出たら血痕がいたるところに残っていて……」


『「…………」』


「我が屋敷に入り込める賊などそうそういない。だとすると、屋敷を自由に動けるものを傷つけてしまったんだ……と思って……うっうっ……」


「血痕を辿ったら、セレ、セレフィオーネの部屋に続いてて、私は、私は、愛する妹を……殺してしまったかと……うわああ!」


ラルーザは両手に顔を埋めて号泣した。







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