2 現状を確認しました
さーて、とりあえず現状を確認してみよー!私のキングサイズのベッドでバホンバホンジャンプしまくってる白モフはとりあえず置いといて……まあ、元気になってよかったよかった。最初のピンチ回避!
壁に掛かる自分の二倍はある姿見で確認する。漆黒で直毛な肩甲骨まである髪に漆黒の瞳、元日本人としてなんら違和感のない地味な女の子が私、セレフィオーネ.グランゼウス。ここジュドール王国、グランゼウス伯爵家の娘。家族は国の財務大臣を務める父と伯爵令息である兄。母は私を産んだ後、悲しいことに死んでしまった。この世界ではまだ出産は命がけだった。
伯爵である父は黒髪にエメラルドグリーンの瞳のイケメン。体つきも前世のモデルのようだ。激務で忙しくしているが母の分まで愛そうとしてくれてるのが中身アラサーになってますますよくわかる。中身年齢とパパ、あまり歳変わんないのにシングルファーザー頑張る姿泣ける。
北の山あいに領地を持つが、要職に就く身であるためほとんど王都の伯爵邸で親子3人と多くない使用人と過ごしている。どうやら昔、使用人に寝首をかかれそうになったらしくグランゼウス家は貴族にしては珍しく自分のことは自分でしようルールだ。なので私も屋敷の中であればありえないくらい干渉なく動いている。護衛はどこかにいるんだろうけど。
兄ラルーザ.グランゼウスは私と少し歳が離れて今年10歳。髪も瞳も父とソックリな美少年だ。髪は三人お揃いで嬉しい。
貴族は5歳の誕生日を迎えると魔力検査が行われ上級、普通級、魔力なしに分けられる。わが伯爵家は先祖に精霊がいるとかいないとかで遺伝で膨大な魔力持ち。兄は当然目盛りが振り切れる上級。上級の子供は魔法学院に入学することが慣例で、すぐさま家庭教師がつき、魔力コントロールを学び始める。入学は13歳だ。
兄は毎日朝から晩まで家庭教師と勉強、そして男子の嗜みとして武術を学ぶ。同じ屋敷にいるのだが食事どきしか顔を合わせない。
記憶が戻った今、ラルーザは私を憎んでいるのかもしれないと思い当たった。だって、私が生まれたせいでママが死んだんだから。その当時既にラルーザは7歳、賢い子供だから全て理解しているはずだ。愛するママと同じ眼を持つ妹、避けられてもしょうがないか…………
その方が都合いいかも。だってラルーザは魔法学院は重ならないのにヒロインと出会い、愛してしまって、私と敵対することになるんだから。出来るだけ悪役回避に動くけど、なんとか補正?ってやつでやっぱり小説通りの運命に向かう場合、お兄ちゃん大好きっ子になってたら…………辛いしね。兄に殺されるとか情が湧いてたら耐えられん。
「あのー」
『なんだ?セレ?』
「おなまえおしえてください」
私は白虎様のことなんも知らないことになってるわけだし、自己申告してもらわんとね。子犬サイズで雪そのものの白に黒い縞の毛並み。晴れた冬の空のような澄んだ青い瞳。
『おれは、ルーダリルフェナ。月の女神から産まれた四天の一獣だ。先代が身罷られて。こないだオレが継いだのだ。へへへ』
「るー、だるい?もふもふ?へなへな?」
『…………』
「るーってよんでいい?」
『…………しょうがないなあ、セレはちっちゃいから』
お前もな!
でも、本人的には白虎ではないことがわかった。白虎は所詮前世の先入観ってことだ。
「るーはなんでうちのにわにいたの?」
『雪が降って嬉しかったから走りまわってるうちにここに来た』
迷子だよ、この子…………
「どうしておおけがしてたの?」
『…………見たことない武器を投げつけられた。ムカつく』
すっごい気になるんですけどー!聖獣改め四天様を傷つける相手、武器って何?
「うちのにわでやられたの?」
『わかんない。毒塗られてたみたいで、曖昧だ』
「そーですか……るーはここにいてだいじょぶですか?おうちのひと、しんぱいしてない?」
『先代のおやじ様死んだから、だれもいない』
「…………るーはなにを食べるの?わたしはなにをすればいい?」
『セレがそばにいたら、セレのキレイな魔力、勝手にもらう。いい?』
「もちろん!ともだちだもの!」
るーはベッドからジャンプして私の胸に飛び込んできた。まだ赤ちゃんだもの。しょうがない。
「るー、なんさい?」
『んーー100歳過ぎてからは数えるの止めた』
ド先輩じゃん…………