125 懐かしい人と再会しました
「シュナイダー!どうして?どうして負けちゃうの?だって私達、魔法学院なのよ?この国で一番優秀なのよ?」
すごい、マリベル、あんなデカイ声でシュナイダーを呼び捨てだ。マリベルのことを今日初めて知ったギャラリーは、何故小娘がたとえ反逆者であっても王子を気安く使うのか?何がなんだかわからないだろう。
「うーん。やっぱり実戦の差じゃないかな?トランドルは危険な森を抱えているからね」
シュナイダーは子供に物を教えるようにゆっくりと話してきかせる。
「そっか……あの鬱蒼とした気持ち悪い森ね、せっかく弱らせた大蛇を私から奪った……じゃあ、次は、魔法師は止めた!三人目は、お年寄り対決ー!しょうぐーん!来てるよね?お願いしまーす!」
「『え?』」
西のゲートから、二度と見ることのないと思っていた人が、ゆっくりと現れた。
「……閣下、生かしてもらったのか」
コダック先生がボソリと呟いた。
アベンジャー将軍閣下……。
シュナイダーなのか、マリベルなのか、完璧に治癒してあり、半殺しにあったとは思えない。騎士学校でニコニコと話しかけてくれたころと、全く同じ。傷一つない。
コダック先生がずいっと私の前に出る。ゆらりと闘気が立ち上る。
「先生?」
「お嬢、今回は死んでも守る」
マリベルの顔が輝く!
「あ、やっぱり苦手なんだ!そりゃそうだよね!アベンジャーさんは軍のトップ!騎士同士であれば一番強いはずだもの!でも、こっちも後がないから本気で戦ってもらいまーす。さあ、そちらもお年寄り出して?」
閣下が私を見つめている。私も軍服を纏った閣下を見つめ返す。軍服ということは私人ではないというアピール?
……閣下はあの時の状況を正しく理解しているのだろうか?今でも私を王族に刃を向けた反逆者と思っているのだろうか?
小説には出てこなかったから、マリベルの〈魅了〉にはかかっていないと思うけれど……だとしたら何故ジュドール王国唯一の将軍閣下がただの女子学生の言うことを聞くの?
マリベルがガチャガチャと口上を述べているのを無視して静かに無言で見つめあっていると、トンっと観客席から一人、小柄な人物が軽い身のこなしで飛び降りてきた。
「ジークギルド長……自ら出ちゃうの?」
「ジャンケン全部パーで勝ち抜けてやったわ!はっはっはー!」
観客席を見上げると、片手をグーのまま悔しそうにハンカチを噛む古参のじいばあ多数……戦闘狂集団め……
ジークじいは下から上へ、閣下を睨め付けた。
「エルザが最後、昏倒させてやったのは、情けだったんじゃがなあ」
「……エルザ大佐のお加減は?」
「エルザは呪われたんじゃ、そこのクソガキにな。なあ将軍様よ、あいつは何か呪われるようなことしたのか?儂には常に厳しすぎるほどに自分の信念に基づいて生きる、真っ直ぐな女にしか見えんのじゃが?」
「…………」
「性懲りも無く、我らに刃を向けるのじゃな?」
閣下はジークじいとの視線を外し、ジッと私に合わせてきた。
「私は……シュナイダー殿下も……ガードナー殿下も等しく、剣術指南をして参りました……」
「……」
「私は将軍という重責にあるというのにもかかわらず、シュナイダー殿下の、王家での孤立に気がつかず、対立する現状になるまで、何も手を打つことができなかった愚か者です」
閣下は自分が将軍であることを示す肩章の星を見て苦笑した。
「ですが、私はジュドール王家に忠誠を誓った身、あの時、セレフィオーネに刃を向けたこと、後悔などしていない。例え……セレフィオーネがどれだけ特別であろうとも」
……私が契約者であることを聞いたってとこか。でも、
「……今、王を人質に取っている事態は王家への反逆ではないの?」
「私はシュナイダー第一王子にお仕えすると決めた。殿下を信じている」
閣下はちらりと後方のシュナイダーを見た。シュナイダーは眉間にシワを寄せた。
『融通の効かん男だ』
ルーがため息をつく。閣下は……つくづく真面目だなあ……シュナイダーを一人に出来なかったのか。
ようやくマトモな大人がシュナイダーについた。シュナイダー、一人じゃなくなったのね。でも、復讐は終わらない。あと一歩手遅れだったの?
「よくわかった。二度までも我らの姫を狙うタワケめ!今度こそ望み通り息の根を止めてやろう」
ジークがマント下の何かをガチャリと鳴らした。
「こ、殺しは反則ですぅーー!」
気弱な審判の泣きそうな細い声を発した。
皆様、今年も大変お世話になりました。次回の更新は年明けになります。
来年もルーとセレをよろしくお願いしますo(^▽^)o
ところで、
『セレ、エマージェンシーだっ!!!』
「?」
『オレの姿が衆人に晒されるっ!!!』
「……何それ?」
『書籍化だ!!!』
「……なん・だと⁉︎」
書籍化します!皆さまのおかげです。ありがとうございますm(_ _)m
詳しくは活動報告にて。




