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120 17歳になりました

年が明けて、私は17歳になった。セブンティーン!

日本の17歳といえば……世界が自分中心に回っている、いっちばん楽しい人生の春!青春真っ盛りだ!


はあ……今世では生死の境目だよ。





◇◇◇





聖女エリスは一切の隠蔽を許さなかった。


王妃の不慮の事故による死亡、王が病床にあること、王子二人が未だ未熟で、王を継承する資格がないゆえに、一旦ジュドールの統治を神殿と有識者による合議制にすると発布した。有識者の中にはエリス姐さんに泣きつかれ、パパンもシブシブ入ってます……




シュナイダーのお情け?のお陰で休戦中だった年末は、トランドルの領主として、燃えた屋敷の跡地で領民皆集められるだけ集めてキャンプファイヤーのようなパーティーをし、みんなで狩った山の幸のバーベキューと、ケガから復活したマツキの料理を振る舞った。これまでの感謝と、これからの我が領の繁栄を皆で祈る。老人から幼子まで、筋肉を振り上げて一致団結した!


ご挨拶が遅れていた、ギルド員以外の領民達……キコリのおじさんからパン屋のおばさんまで私が領主になることを優しく認めてくれて、おばあさまの根回しのおかげとジンワリした。


「ふふふ、当たり前じゃない!セレフィーちゃんが小さな頃からこのトランドル中を走り回って鬼の修行してるのを、みーんな見てきてるのよ?」

ララさんが、スイートポテトタルトを食べながら、領主の私の頭を懐かしそうに撫でた。


アニキがどこからか、黒くて丸い怪しい化石を掘り当てて、それがオークションで一億ゴールドで売れた。サクッと妹の分まで借金を返済してくれて、ララさんがいつものかわいい()()()お姉ちゃんに戻ってくれた。アニキよ!マニアよ!ありがとう!





◇◇◇





そして年始はガレに戻り、ギレンの隣に立ち、新年を寿ぎにくる貴族達の挨拶を受けた。鉄仮面ギレンの代わりに気を使いまくりで胃が痛くなったが、姿は見せてナンボだと思っているアスが背中から羽を広げ私を包み込み、楽になった。その度に周りで歓声が上がり、


「これは慶事そのものであーる!」

と適当に知らしめるリグイドが久々にウザかった。


背中から虹色の翼を広げる私、これは前世のレジェンドスター、ジュ◯ィー・オング様?それとも真夏の鳥人間コンテスト?


新年の挨拶に友好国マルシュからタブチさんとヤマダくんが来てくれて、マルシュやレーガン島の仲間の話を聞いたり、ニルバ孤児院の経営状況を視察に行き、鬼の業務部長がいなくなりぬるま湯に浸かったような状態になっている子供達とアーサーに喝を入れたり、慌しくもリフレッシュできた。


ギレンはずっと宵闇の宮にいてくれた。


私の胸元にかかるプレートはプラチナが3枚。

ギレンのもの一枚、ガレアのもの一枚、トランドルのもの一枚。先日ゲットしたトランドルのプラチナ一枚も私の魔力を込めてギレンに渡した。よって今、ギレンの胸にも同じものが3枚かかっている。お揃いだ。


そのプレートを見つめていると、ギレンは来年の新年もギレンの腕の中で過ごすと、未来に怯え躊躇する私に無理矢理約束させた。




◇◇◇





そして為すべきことを済ませた私とルーは、1日だけグランゼウス領に住む、タダの娘とタダの駄モフに戻り、パパンとアニキとエンリケとマーサに甘えて過ごした。


「お嬢ちゃまー!マツキが朝から餅つきしましたよー!お餅はあんこ?それともきな粉?」

とうとうお餅まで……マツキ!!!


「あんこときな粉一個づつ!」

『オレはチョコ!』

「ルー様チョコ?斬新ですね……私はマルシュのショウユでお願いするよ、マーサ」


「それを食べたら、皆で子供達に年始のプレゼントを配りに行くよ。皆楽しみにしているからね。もうマンモス公園に並んでいるそうだ」

「この雪の中を?お父様、急がなきゃ!」

『ふがっ!がほがほがほっ!』

「ルー様!餅が喉に?」

「もう!ルーのバカタレ!マーサー、お水持ってきてーー!」

『フガフガ……』


マツキは、味も最高なだけでなく体力や魔力増強の効能もある携行食にも手を出していた。


『マツキ……そこまで我のために……』

感情の揺らぐことのない、聖獣が泣いた。




◇◇◇







そして、はい来たドン!魔法学院。


約10年ぶりだ。お父様とおばあさまの間で手を引かれ、やって来たことを昨日のことのように思い出す。


最愛のお兄様の試合で、最愛のギレンに出会った。

まだまだ危険物ではなかったシュナイダーともここで再会した。


ルーの言った通り、結局ここで始まっている。小説の前世も今世も、結局ここでしか決着つかないのだ。



新年を祝ったガレで、アスがソッと私に教えてくれた。

『ルーが我に、自分の急所を教えた』

「……どうして?」

『いざという時は、殺せと』


いざという時……それはルーがマリベルに狂ったとき。

前回は己の足を引きちぎってしのいだルー。今回もしのげるか……わからない。マリベルはとにかく未知数だ。


聖獣が、神が弱みを晒すなどありえない。例え信頼した相手(アス)だろうとも。

ルー……


「アスがルーを殺したら、私もすぐに後を追うよ」

一択だ。


『ギレンを残してか』

「…………」

『セレ、案じるな。友を見殺しになどせぬ』

「……」

『ルーの覚悟を伝えたかっただけだ。ルーを信じよ』

「……トーゼン」





『行くか、セレ』

私の肩でルーが唸る。私はルーの額に自分の額を押し当て、精神統一する。ルーの魔力が高ぶる気持ちを落ち着かせる。


ミユは私の胸元奥深く。ミユは秘中の秘。とっておきの波動砲。そしてアスは上空だ。三柱全てにガンガンに幻影をかけた。気づかれるにしても、出来るだけ、遅い方がいい。

シュナイダーとマリベル相手に欺けるかどうかわからないけれど。


「オッケー!レッツゴー!」



私が動く。後ろからコダック先生とササラ姉さんが黙って付き従う。

入場だ。




◇◇◇



今回のこのスタジアムでの対戦、私は自分の関係者にしか話してないが、シュナイダーサイドがオープンにしているのか、場所を提供する魔法学院から漏れたのか、八割がた観客席が埋まっている。宰相や、バース侯爵、若草色の髪以外はドス黒く、具合悪そうな近衛騎士団長の顔も見受けられる。


過ぎた好奇心は身を滅ぼすのに……とばっちりにあって、命を落としても仕方ないよ?


もちろん観客席には私の過保護な身内も揃い踏み。しかし、全員に私の防御魔法、魔法反射魔法を纏わせた、頭からすっぽりかぶるタイプの黒マントを羽織らせているから、敵さんには誰が誰だかわからない。


これだけ時間をもらえたのだ。無防備で来るわけがない。マリベルの術は視覚で誰かわかった上でなければ発動しないのではないかと期待して。

でも、前回の経験上、【野ばキミ】の登場人物は問答無用でかかる可能性があるのだけれど。


とにかく、私の仲間は私が守る。顏出しの護衛役は【野ばキミ】無関係、マリベル無関係という条件の中で連携抜群のコダック先生とササラさんを前回に引き続き選び、二人にはルーの存在を明かし、私とルーの両方で防御魔法をかけた


ササラさんは大いに驚き、私に神殿が跪くことに納得し、エリスさんにはルーが見えていることを明かすと、わかりやすく発奮した。聖女だからね、本気で魔力特訓すればすぐにモフモフを見えるようになるでしょう。


コダック先生はやっぱり……もちろん……全てご存知だった。ルーに改めて跪き、忠誠を誓ってくれた。ルーはコダック先生になんと、自分のとっておきのマツキ特製チョコ味の携行食をプレゼントした!


『こいつはずーっとセレを守ってくれてるからなあ』


ルーからの最大級の感謝を贈られて、コダック先生はチョコバーを握りしめ、途方にくれた。


私達三人の姿は前回同様。ただ改めて糸から防御防魔魔法を纏わせて仕立てなおしたけれど。

そして私の忍装束グレー〈改ダッシュ〉には背のトランドル、左腕のガレの紋章にプラスして、右腕に成獣版ルーを刺繍した。デザイン何度もルーにダメ出しされた。もう、ヤンキーの長ランにしか見えない。前世持ちのシュナイダーに失笑されたら泣いちゃうかも。左前でハスに構えて立つようにするか?


三人とルーがフィールドの東に立つ。やっぱ関ヶ原と同じ東軍でしょ?


時間だ。






新章です。

連載開始から八カ月、120話、読者の皆様の支えがあって続けてこられてます。ありがとうございます!


今週末はストックの別作品(短編)を投稿予定です。

ですので次の転生は15日予定です。のんびり更新ですがよろしくお願いします m(_ _)m


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