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113 本屋に行きました

昨日の事件で王城は半壊。そして死者数人。負傷者数百人。謁見に居合わせた閣僚も逃げ遅れて亡くなった者もいる。王と王妃の安否をどう伝えるか、エリス姐さんの神殿やパパンが協議中とのこと。トランドルの草が静かに報告する。


ギルドの幹部連中プラス、昨日約束したササラさん、アルマちゃんの前で、朝一番で届いたシュナイダー殿下からの手紙の封を切る。


……何これ?


「お嬢?」


「決着は……年が明けて……魔法学院の懐かしのスタジアムで行おう、だって」


ルーが一気にいきり立つ。

『あの若造が!!!』


茫然とした私の手元から、ジークじいが手紙を取り上げ目を通す。

「スタジアムで正々堂々と戦った方が遺恨も残さず、結果を受け入れられるだろう?とな?市街地の被害もこれ以上は出したくないだろう?だと?ーこれまで破壊してきたのはお前達だろうに」


年が明けると、私は17歳になる。そして舞台は魔法学院。

シュナイダーはわざわざ、私の断罪シーンを再現してくれようとしているのだ。


『悪趣味な男……』

シュナイダーは顔はいいけれど、残念ながらミユたんのお眼鏡にかなわなかった。


封筒にはもう一枚。国王陛下がスヤスヤとベッドでお休みになっている写真も入っていた。

「随分精巧な絵だな?」

マットくんが頭を傾げる。ギルバートさんが眉間に皺を寄せてそれを覗き込む。


シュナイダーは写真、つまりカメラとか現像とか、そういう関係も開発したらしい。前世、そういうことに詳しかったのだろうか?男の子ってそんなもん?私ですらデジカメ世代なんだけど?


前回の、目を開けて無理矢理玉座に座らせられている陛下よりも、よっぽどこの写真の陛下のほうがマシに感じる。だけどどう丁重に扱おうと、人質に取っている事実は変わらない。


関係ないと言いつつも、陛下を惨殺される選択など取れない臆病な私は、この提案を呑まずにはおれないのだ。


「ちょっと……頭冷やしてくる」


私はギルドの外に出た。




◇◇◇




ギルドの裏の林の中、大樹に背中を預け、脚を抱えて座り込む。


前回の断罪シーンが頭の中で何度も何度もリピートする。

赴くことが現実的になったためか、より鮮明に、細かく蘇る。


唾を飛ばしながら私を糾弾するセシル。

マリベルの足元から私を汚いものでも見るようにさげすむルー。

マリベルを愛おしそうに胸に抱くガードナー。

そのマリベルとガードナーを守るように立ち塞がるお兄様。

私を指差して二度と目の前に現れるな、と激昂するお父様。

その瞬間に全ての感情が死に絶えた、私。


身体が震える。すがるようにアニキにもらったピアスを耳たぶごと握りこむ。




バサリと前から温かい羽毛に包まれる。

ノロノロと顔を上げると真紅の宝石のような瞳がすぐ目の前にあった。


『セレ、今世はお前の小さな努力の積み重ねでできている。間違いなく前回とは違うのだ。前回は我の存在など知りもしなかったのだろう?』

私は小さく頷いた。

『それが今回はこのように我らは大親友だ。ベクトルは間違いなくズレている』


アス……


『それを受け入れよ、でなければ、ルーが……見よ、あんなに縮こまっているではないか?』


ルーは、私から少し距離を取った地面で、モフサイズのまま、うなだれていた。ルー!

「違うよ?ルー!ルーを信頼してないわけじゃない!ただ、思い出したら悲しくなって……」


ルーがペタペタと歩み寄ってきた。

『セレ、わかってるよそのくらい。ただ、不甲斐ないだけだ。なんでオレは、前回セレを裏切ってしまったんだろうって。前回のオレはアイザック以上に、たった今目の前のセレを苦しめる。でも今更どうしようもない』


「ルー!」

私はルーに飛びつき抱き上げた。

「ごめん、ごめん、ルー」

『謝るな、セレ。心が揺れるのは当たり前。いつも強くあろうとしないでいい。ちゃんと、側にいる。ずっと、死ぬまで。お互い頼りあって生きていくんだ。だってオレたちは』

「『一心同体』」


『その通りだ』

『我も一緒だ。セレはギレンと共に生きてくれるのだからな』

『ルー様ズルイ!私だって、セレちゃまと一心同体なんだからー!』

瞬時に本来のサイズに戻ったミユの長い身体に巻き付かれる。


聖獣ミユにチロチロ舐められ甘えられ、私の身体はミユの花の香の魔力でパンパンになる。

美しい三柱にぎゅうぎゅうに抱きしめられ、緊張を解されてリラックスしたところでルーが切り出した。



『セレ、オレはシュナイダーのこの提案、悪いものではないと思っている』

「え?」

『時も舞台も同じならば、そこで今世も断罪があるのか、裏切りがあるのか、はっきりするというもの。この機会がなければ、マリベルが生きている限り、ずっとその影に怯えて生きていかなければならなくなる』


「そっか……」

これを乗り越えてこそ、私にとっての真の平和が来るんだ。


『セレちゃま、女の子二人ペアの新技、新年までもっともっと鍛えて見せつけてやろう!』

そうだ。ミユとの新技を極めなければ!


『ほう、合体技があるのか?楽しみだな!我もギレンと何か作るか』

『お前らそんなキャラじゃないだろ……』



◇◇◇



カサリと控えめな足音がする。

「セレフィー?」

「アルマちゃん!」


ルーとアスとミユはニコリと笑い、密かにアルマちゃんに場所を譲った。アルマちゃんは私の横にヨイショと座った。

肩まで髪の伸びたアルマちゃん。骨格のせいなのか、程よく筋肉がついているものの、ほっそりとして見える。オッパイはデカイのに。これで耳がとんがっていたら、おとぎ話のエルフと間違えそうだ。


「エルザ様は?」

「グングン良くなってるし、ガッツリ守ってる!安心して!」

「よかった……。セレフィーは大丈夫?」

「え?」


「だって、ずっと一人だったんでしょ?マルシュなんて海の向こうで……私だったら、泣いてしまう」

アルマちゃんは本当に泣きそうな顔をした。そんなアルマちゃんを見たら……無理しなくてもいいと思った。


「うん、泣いてた。寂しくて寂しくて。アルマちゃんに会いたくて会いたくて。学校の私に戻りたかった」

「セレフィー……」


私とアルマちゃんはしがみつきあってそっと慰めあった。

「私も、泣いたよ?安全な学校にいるっていうのに、セレフィーがいないと、寂しくて、寂しくて……」

「たった二人の私たちなのに……1人にしてごめんね、アルマちゃん!うっ……」

「許さないよ。許さないに決まってる!」


こんなに、私を恋しがってくれたんだ。

「許さないでいいよ……でも、嫌いにならないでっ!」

「なるわけないじゃん!セレフィーのバカ!うううっうっう……」






アルマちゃんは16歳になっても、心の綺麗な、ザ・女の子のままだった。私たちはちょっぴり泣いて……元気になる。


「学生の私達は戦闘禁止ってうちのギルドは決定しててね。私達は人手不足になってる通常の依頼をサクサクこなしてるの。それがトランドルのためになってると信じて。私はまだまだ弱くてギルドの決定に口を挟むつもりなんて毛頭ないんだけど……でもどうなりそう?シュナイダー殿下の言う通り年明けまで待つ?それとも無視して仕掛けるの?」


「待つよりほかないかなあ。あーあ!」


「……そっか。じゃあセレフィー、私を鍛えて!卒業後、すぐ戦力になるように、足手まといにならないように!そうそうセレフィー魔法使えるんだね!ビックリした!」


「あ……内緒にしててごめん。どうしても、騎士学校に行きたかったの」

「そっか……でも隠してたから、私はセレフィーと出会えたんだよね?よかったあ!何もかも終わったら、私にも何か魔法教えて!セシルをぶっ飛ばせるやつがいい!」


秘密を持っていたのに責めないでくれる……アルマちゃん……ありがとう。


「私もアルマちゃんに教えてほしいことがありまーす!」

「なになにー!」

「ニックとどうなった?」

「はぅっ!」


アルマちゃんはユデダコのように真っ赤になった。デキたなお前ら!

「わ、私は別のこと報告したいわ。とりあえず、この非常時だけど、本屋行かない?すぐ済むから」

「ん?いいけど?」




私は初めて『騎士団四姉妹』と出会った。あまりの衝撃に生まれて初めて、ある意味伯爵令嬢らしく、額に手を当て、気を失った。







次の更新は週末です。

今日はポッキーの日?筆者はプリッツ派です。

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― 新着の感想 ―
[一言] うん、まぁ・・・ ナマモノ本人に突き付けるのは、うん・・・(遠い目
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