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11 うちのモフモフは規格外でした

部屋の中に人間五人、それぞれの思いを抱いて呆然としていたが、一番年長と思われる魔法師さんAがいち早く立ち直った。


「ひ、姫君、今、石版に触れられましたか?」

「いえ、触ろうとしたら、ビューンって飛んで行っちゃって…………」


「そ、そうですか……姫君、一歩お下がりください。おい、予備の石版を!早く!」


あたふたと魔法師Bが新しい石版を持ってきて、テーブルにコトリと載せた。その瞬間ルーが黄金の?右脚でまた払う!ダシッ!!!さっきより強め!!!


バリーン!


「「「「「…………」」」」」


今度は言われて距離を取っていたので私に嫌疑をかけようがない。


「石版が飛ぶなど……前代未聞です」

「おい、石版はまだあるのか?」

「まさか!これほど貴重なもの、もうあるわけありません!」


貴重なの!?それを木っ端微塵にしちゃったの!?それも二枚〜!!!

私がぐらりとよろけると父が駆け寄り抱き上げてくれた。


「……この現象……貴殿たちはどう考える?」

パパン、敵に考えさせるなんて冴えてます!


「……わかりかねます。ただ言えることはこのような事態、お嬢様が初めてでして……」


私は割れた残骸を見た。どうみても修復不可能。弁償?困った……

「お父様……どうしよう……石版……」

涙ぐむ私を見てパパンが一気に恐怖の覇気を垂れ流す!魔法師ABCの顔が一気に青ざめた。


「伯爵!もちろんお嬢様がどうこうというわけではありません!特に2枚目の石版とお嬢様の間には十分な距離がありました。この部屋は魔力の効かぬ部屋。ですが何らかの力が働いたとしか…………」

「それは何だ?」

お父様が低い声で促す。

「人知を超える存在ではないかと……」

あなたは間違ってない!魔法師Aさん!


「きっとそうです…………私は()()()()()で石版にも魔力にも避けられてしまった…………」

ちょこんとテーブルに座るルーを見ながら私が呟くと、お父様がギュッと私を抱き込む。


「構わぬ。セレフィオーネに魔力があろうがなかろうがセレフィーのことは私が守る。もうこのような危険な場所はゴメンだ。我々は帰る。セレフィオーネの魔力については魔力なしで登録してくれて構わん」

「ですが!それでは伯爵家令嬢として体裁が……」

「私が構わぬと言っているのだ。二度とこのような目にはあわせぬ。貴殿方、あとはよしなに……ね?」

「は、はい…………」


一連の話が終わったのを見計らって、ルーがお父様に抱かれている私の頭に飛び乗った。お父様は軽く右手を上げて検査部屋を早足で脱出した。




◇◇◇




部屋から出るや否や私は自分達の周りに風の壁を作り防音を施した。


「ルー……私もっと見たこともない幻術なんてのを期待してたんだけど」

『人間に術をかけても仕方ないよ。人間は代わりがいっぱいいるもん。代わりのない石版壊さないと!』

「そうかもしれないけど……それにしてももっとドラマチックな壊し方、なかったの?まあ魔法使えないなら方法も限られるけど」

『十分ドラマチックだったはずだよ?でも魔法使えないってのはなかったね。あの部屋の無効の効果、緩んでたよ。魔法で破壊しても良かったかな?』

「え!なに、そんなゆるゆるな状態だったの?なんで魔法師様達気づいてないの?初心者の皆様だったのかしら?」


私は通訳しながら父に問いかける。

「いや、襟章からすると、一人は第一級魔法師、残りは第二級だった。国のトップレベルの魔法師だったね。」

「トップレベル!?トップレベルなのにルーが見えてなかったの?ルーなんかやっぱり隠蔽してた?」

『うんにゃ?』

「だって……ルーの姿、エンリケにもマーサにも見えてるのよ?最近はコックのマツキさんも……なのに言うなれば専門家が見えないなんて……」


お父様が苦笑した。

「うちの皆は使用人としては破格のレベルの実力者揃いなんだよ。マツキは食卓に並べた食べ物が空に浮かび消えていくのを見て、気が狂ったかと思って、必死に魔力操作を習得したらしい。ルー様が見えるようになって、ようやくストレスによるハゲが止まったそうだ」


うちの食い意地はったモフモフが、知らないところでご迷惑おかけしてます…………マツキさん!帰りに海藻買って帰るからね!

そっか……ある程度のプロでも聖獣って見えないんだ。うちの一族どんだけチートなんだ…………


「はあ……お父様……帰りましょうか?」

「はあ……そうだね。早く帰ろう」

『セレのおやじ様、おれ頑張った!ケーキ!ケーキ!』


父はニコッとルーに了解の合図をして、離れた場所で待機する我が家の馬車を呼びに行った。




私は研究所の入り口でルーと佇んでいた。真っ赤な夕日を見つめていると、

「おい!」


急に声をかけられ振り向くと、上質な服を着て腰に帯剣をした少年が立っていた。間違いなく上位貴族。兄と同じ年の頃だろうか?スラリとした体つき、小さな顔。癖のある金髪を耳にかけ、鼻筋が通ったかなりの美形。この世界、美形ばっかで平凡な私マジ生きにくい。瞳は透き通った灰色で…………私の頭上を凝視している。頭上!?


ルーがサッと私の肩に降り、グルルと唸り警戒する。私は確信がないので身動き取れない。あくまで通りすがりの幼女の(てい)で挨拶する。

「こんにちは?」

「君の…………肩のそれ、何?」

この子…………見えてる。ルーが見えるの屋敷の人間以外で初めてだ。油断した。ダメ、ルーがかなり緊張してる。敬愛するおやじ様に契約者(ごちそう)以外の人間と関わるなと言われてるんだもの。ルーはそれに従う。余計なちょっかいかけてくる人間は躊躇わず排除するだろう。

ルーは〈四天の一獣〉。人の都合など気にしない。


騒ぎはマズイ。この場は私が収めなければ。


「あなた様には何に見えますか?」

質問に質問で返し、時間稼ぎする。

「……虎?」

「違いますわ。」

「では、何?そいつから流れる覇気……ただ事ではないよね?」

「…………」

「答えよ!」


ようやく我が家の馬車が視界に入った。セーフだ!

「この子は……私の大事な大事なお友達ですの。では、失礼致します」


私は御者が扉を開けるのを待たずに馬車に飛び乗った。お父様が出てきて素性がバレるのを避けたかった。

私のただならぬ様子、ルーの常にない尖ったオーラにすぐさま馬車は走り出す。


「どうした?セレフィー?」

「ルーを……見破られました」









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