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10 魔力検査に行きました

翌日夕方、私は父とルーと王都中心にある魔法研究所を訪れた。私は実は王都で伯爵邸を出るのは初めてだ。興味もなかったし、いらん接触も避けたかったから。


研究所の門で馬車を降り、父と手を繋ぎ、頭にルーを乗せ、別館までの道のりを歩く。外に出てまでふざけてるわけじゃないよ。頭の上のほうが、パパンがルーに話かけた時、傍目には私と会話してるように見えて結局ごまかしが効くのだ。


父は見たこともない険しい表情をしていて……これがパパンの表での戦闘顔なんだと思った。男は家を出たら何人も敵がいるって、前世のことわざかなんかであった。隙を与えるわけにはいかないもんね。パパンの肩には私たち家族だけでなく、寒い我が領地に住む温かい領民の命運もかかっているんだから。


でもどんなに恐ろしい表情を作ってもイケメンはイケメン。真っ黒サラサラの髪をオールバックにして、襟足でスッキリ切りそろえている。体つきは私と兄の武術の相手をするためさらに筋肉がしなやかについた。細マッチョってやつ。グリーンの切れ長の目は超クール。父が通りすぎるたびに建物の中の女性からハートマークが飛んでくる。


ヤバイねこれ。世の中には既婚者や、婚姻歴アリの男が大好きって女がゴロゴロいるって知ってる?私は知ってる。前世そういう友達いましたから。パパンの貞操の危機!警告せねば!


「お父様、なにやら視線がビシバシ当たって怖いです」

私が話しかけると、とたんにグリーンの瞳に温かみが宿る。


「うん、でもルー様が見えているわけではないと思うよ。もっと大騒ぎになるだろうからね。多分私がセレフィーを連れてきたからだろう。私のセレフィーは群を抜いて愛らしいからね」

そういうと父はルーごと私を抱き上げて、ほっぺにチューした。


「「「キャー!」」」

あちこちで悲鳴が上がる。

パパンの美の認識はかなり身贔屓なので恥ずかしい。私なんて平々凡々だっつーの!ルーの瞳の色を真似た今日のドレスなかなか素敵だけれどね。ふう、結果的にハイエナどもが撤退したから良しとしよう。


小さな独立した平屋の建物が見えてきた。

「お父様、あそこですね?本日はどのくらいの人数集まっているのでしょう?」

「本当は同じ月に産まれた5歳児が一堂に会するのだが、私の仕事の都合がつかないと言って一番最後に回してもらった。だからセレフィーの検査のときはセレフィーだけだ。ルー様の起こす奇跡がどんなものであれギャラリーは少ないほうがいいからね」


そういって私とルーにウインクする。ルーはパパンによじ登り、しっぽをブンブン振る。

『おれ頑張るから、夜は特別ケーキちょうだい!』

父に伝えると、

「了解しました」

と優しく微笑み、私達を縦抱きしたまま検査部屋に入った。




◇◇◇



「ようこそグランゼウス伯爵、そしてご令嬢。」


ドアの中にはちょっと偉そうな真っ黒のローブを着たおじさん達が待ち構えていた。ハラハラしていたけどルーに一瞥もしない。ルー案外できる子だったのね!


「はじめまして、グランゼウス伯爵家が娘、セレフィオーネと申します。本日はよろしくお願いいたします」

いくら引きこもりっていっても挨拶くらいできるよ、フフン。前世、営業担当の時もあったからね。


「おお、お可愛らしいうえに利発とは!さすがグランゼウス家の姫君!」

お世辞がウソくさい。そんなに財務大臣怖いのか?問題は財務省主導の予算配分なのか?パパン、フンって鼻を鳴らしたのは何故?


「時間の都合をつけてくれて感謝する。早速だが時間がない。すぐに検査してくれ」

自分のぺースに持ち込むパパン、さすがです!


「では伯爵、一旦外……」

「ならん。私が愛娘を一人ここに残すと思うのか?」

「ですが決まり……」

「この建物は魔法無効。私に何ができるというのだ。そもそも国定魔法師が三人もいて文官の私一人ごとき問題か?」

その文官ごときの威圧が半端ないって!

「妻亡き今、娘は宝。娘が倒れでもしたら、貴殿たちは責任を取れるのか?私は壁際のここを一歩も動かないと約束する。ほら!さっさとしてくれ!」

…………パパン、モンペでした。ルール曲げられました。伯爵家って貴族的には中堅どころだし……家の格に屈してではなくパパンその人に屈したのね。お気の毒です。


「ひ、姫君、こちらへ……」

担当さん、声震えてるし、姫呼びになってるし。二度と会わんから許してね。


私はルーを小さく呼んだ。ルーが頭から肩に移り、私にコクンと頷いた。


部屋の真ん中の小さなテーブルに兄が言っていた四角い石版がある。私がその真ん前まで進むと、魔法師たちが三角形に立ち私とテーブルを取り囲んだ。


「では姫君、両手をその石版に押し当ててください」

「はい」

私は恐る恐る手を伸ばした。触れたら魔力、計られちゃうよ!どーすんの!ルー!!!



そのとき、ルーがピョンと肩からテーブルに飛び降りた。そして石版を右脚でトンっと払った。

「「「「「え!」」」」」


ガシャーン!

石版は勢いよく飛び、壁にぶち当たり、砕けちった。


ぶ、物理?物理攻撃なのーーーー!?







ブクマが300!地味ーなちびっこの話に辛抱強くお付き合いくださる、お読みいただいてる全ての皆様、感謝です ♪

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