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楽しいミーティングタイム

 カップルかと疑われる二人の生徒が去ったその時。

 前回、剣道の授業の時に目をつけた生徒が通りかかった。

 名前は確か伊勢崎君。

 あの時は防具でイマイチ顔がはっきり見えなかったけど、今ならばっちりだわ。

 顔良し、体型良し!!

「ねぇ、伊勢崎君。ちょっといいかしら?」

「……はい、俺……いや、自分ですか?」

 やや警戒気味にこちらへ近付いてくる彼。

「あなた、剣道何段? 随分強いみたいだけど」

「えーと、五段です」

「そう。どこの課を希望してるの?」

 お願いだから刑事課だと言って。

「警備課です」

 えー……。

「……どうして警備課なの?」

「実は、うちの祖父が警察官でSPだったんです。それにほら、何年か前にテレビでやってたじゃないですか。SPのドラマ。あれを観て、カッコいいなって」

 おのれ!! 会ったこともない、名前も知らない伊勢崎君のお祖父さん!!

 それからフ○テレビと岡田准○!!

 どうしてこう、ことごとくアタシの邪魔をするのよ?!

 振り返るとあいつは……笑っている。

 どうやら死にたいらしいわね。

「ねぇ、北条警視。いっそのこと流川にでも行って、好みの子を見つけてこの学校に放り込むのはどうです?」

「……あぁ?」

「嘘です、何でもありません。ごめんなさい」

 成績も良くて顔もいい子なんて、そう簡単に見つかるものではないのよ。

 とか何とか言ってるうちに、あらもうこんな時間。

 そう言えば今日は定例会議があったんだわ。そろそろ本部に戻らないと。

 帰り道、アタシは思わず彰ちゃんを睨んだ。

「まさか、あんたのせいじゃないでしょうね?」

「……何がですか?」

「昔は捜査一課って言ったら花形だったわよ。刑事になりたくてもなれない警官が大勢いて、なれたらエリートだったわ」

「今も割とそうだと思いますが?」

「だーかーら! あんたが捜査一課全体の、引いては刑事課のイメージを悪くしてるんじゃないでしょうね?!」

「言いかがりはやめてくださいよ。だいたい、今時の若い子は仕事に忙殺されるなんてありえないんですよ。残業が多すぎるとか、プライベートな時間が取れないとかいう理由で辞めて行く子もいれば、そういう会社をブラック企業呼ばわりする子もいるんです。僕達の時代みたいに『奉職』なんて、今時流行らないんですから」

 まぁ、確かに。

 刑事は一度事件が起きれば、プライベートも何もあったもんじゃない。何日も帰宅できない日もあるし、下手をすると何ヶ月も家族と会えないことだってある。

 仕事が生活の中心になるのが嫌だってことかしら?

 だったら、仲間内で愛し合えばいいのよ。

 働きながら恋人とイチャつけるなんて夢みたいじゃない。

「あ、結局あの子の返事を聞けてないわ」

「あの子って誰です?」

「宮野君。あのインテリ眼鏡君が邪魔してくれて、話が途中になっちゃった」

「とりあえず……5人見つけたうちの2人は既にアウト……と、いたたたたっ!! 運転中なんですから、やめてくださいよ、もう!!」

 あーあ……誰かいい子はいないかしら。


 毎度思うけど、幹部のオジさん達が繰り広げる会議って中身が薄いのよね。

 特に警務課長と警備課長。

 昔から仲が悪くて、いつもお互いの悪口ばっかり言い合ってるの。今もそう。

 つい大きな欠伸が出てしまったわ。

 隣に座ってる聡ちゃん……捜査一課強行犯係の苦労人がギョッとした顔でこちらを見つめてくるけど、かまやしないわよ。

「そういえば、北条警視」

 警務課長がいきなりアタシに話を振ってくる。

「以前からいただいている話ですが、やはり現状維持でお願いします」

 以前からいただいている話というのは増員の話。

 どこの課も人手不足は深刻で、特にうちなんて割と危険度が高いからって、志望する人間も少ない訳。志望したからって必ずしも役に立つ人材とは限らないしね。

「あんた、学校へ行って新人発掘しょうるっていう話はほんまなんか?」

 生活安全課長がニヤニヤしながら訊ねてくる。

「……いけませんか?」

「……別に、いけんとは言わんけど……」

「増員ならうちだって真剣に考えてもらわんと!!」と、鑑識課長。

 あーあ。

 増員の話になると、各課がもめ始めるのよ。

 いつものことだけど、まとまりのないまま会議は終了。

 くだらない時間だったわ。

「……北条警視、ひょっとしてこの頃……」

 会議室を出ると、隣を歩いている聡ちゃんが話しかけてくる。

「彰彦を連れてちょくちょく学校へ出向いているのはつまり、そういう目的だったんですね?」

「そういう目的って?」

「優秀な新人を探すという、ただそれだけなんですよね?」

「他に何があるっていうのよ」

 ま、そりゃいろいろ下心はあるけどね。

「いや、彰彦が……その……」

「彰ちゃんが、なんて?」

 彼の返事を聞いたアタシはその後、迷うことなく刑事部屋に向かい、元カレではあるけれどバカには違いない男の胸ぐらをつかんだ。

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