第97話 カナーサ王国 三
その時、エルシドが俺の前に立ち、奴の攻撃を防いでくれた。その間に、エルフィーの上級魔法とヨイチの矢が飛んできた。
高威力の遠距離攻撃に、奴も大きくかわさざるをえないようで、多少隙が出来た。
これまでの奴との戦闘から考えて、奴の素早い動きやインファイトに対抗するためには、ヨイチと融合した方がエルフィーと融合するより効果的だと判断した俺は、急いでヨイチのもとに駆け寄り、ヨイチと意思をあわせ、ディープキスをした。
その瞬間、愛し合う者同士の融合の効果によって、俺たちは融合し、新たな戦士が生まれた。
意思も身体も基本的には俺をベースとしているが、ヨイチの心も感じる。それにしても、圧倒的な、この体の軽さ、力感はどうだ。
今までに感じたことがないほど、身体中に力がみなぎっている。ヨイチと融合したことで、俺の身体能力は格段に強化された。
さらに、これは予想だが、運動センス、バトルセンスもヨイチ並みかそれ以上に高まっているはずだ。
おっと、考えている場合じゃないな。急がないと、近接戦闘をエルシド一人に任せるわけにはいかない。俺は、急いでエルシドのもとに向かった。
「エルシド、待たせてしまってすまない。君が時間をかせいでくれたおかげでヨイチと融合することが出来た。奴は俺が相手をするから、エルシドはシースに回復してもらって休んでいてくれ」
「分かりました。昇さん、気を付けてくださいね」
俺は、奴と対峙した。今までの奴の戦いぶりから判断するに、奴の邪悪な強者の特殊能力はおそらく、重力をあやつるディアボロと考えるのが自然だろう。
時間制限付き岩石封じを使ったときの奴の動きは、怪力で重たい岩ごと強引に動いたと考えることもできるが、あの時の動きは、たとえるなら発砲スチロールを身に着けていたような感じに見えたから、やはり重力を操って軽くしたと考えるべきだろう。
あの岩の落下速度も、自然落下とは明らかに違っていたし、俺の盾が重くなったことから考えても、まず間違いないだろう。
しかし、重力操作とは厄介な相手だな。それに動きも早く、剣での攻撃は、手数が少なくて不利になるから、俺も格闘技スタイルで対抗するか。
盾は重くなったまま放置し、剣も鞘に納めた。俺が警戒して距離を取っていると、奴はまた近くの岩を砕いて、上空に投げた。
今度は岩が空中にとどまっている。空中の岩は奴の周囲を囲むように配置されている。
まず間違いなく、あの岩の下を通った時に、凄い速度で落下させて攻撃してくるつもりだろうな。
あそこを通るわけにもいかず、とりあえず矢を射ってみるものの、奴には簡単にかわされてしまった。何回やっても同じことだろう。
俺がどうしたものかと、攻めあぐんで、様子をうかがっていると、奴は魔法弾をカナーサの土壁に向けて放った。




