第91話 ヨイチとのデート 十五
ハートの中にYを逆にしたようなものが入ったような独特な形の小麦粉を焼いた菓子は、プレッツェルによく似ているな。少し岩塩がまぶされている。俺は、その焼き菓子を口にした。
「う、美味い! まぶされた岩塩が最初に口に入り、
少ししょっぱいなと感じるが、すぐに程よい甘みが追いかけてくる!
少しの塩味が甘みを最大限に引き立て、カリカリとした心地よい食感を楽しんでいると、
まるで天使に祝福されたかのような幸福感に包まれていく! おお!
このプレッツェルを食べているヨイチの表情が、とても幸せそうな、
天使のようなかわいらしい笑顔になっている!
あまりのおいしさによって、食べたものを、
天使のような笑顔に変えるこのプレッツェルは、
天使の焼き菓子、とでも名付けたい!」
俺たちがおいしいプレッツェルを食べ終え、幸福な余韻に浸っていると、次のデザートが運ばれてきた。
見た目は、パンナコッタのように見えるな。小さいパンナコッタが六つあり、一人あたり三つ食べられるようだ。
俺は、元の世界にいたころは毎食後に必ずパンナコッタを食べていて、俺が人生で摂取したカロリーの9割はパンナコッタから摂ったほどのパンナコッタ通だ。
というのは、もちろん冗談で、俺は人生で一回もパンナコッタを食べたことがないんだよなぁ。なんとなく、生クリームと牛乳と砂糖を混ぜて、ゼラチンで固めた洋菓子ということを知っている程度だ。
俺はパンナコッタらしき洋菓子を口に入れた。
「なんてこった!
こんな美味しいものを今まで食べずに生きてきたなんて!
三つともそれぞれ食感が違っていて、これはとろーりとした食感で、
これはつるんとした食感、そしてこれはその二つの中間の柔らかさ!
さらに、食感に合うように、微妙に材料の配合を変えている!
そのおかげで、同じお菓子のはずだが、まるで違ったおいしさを楽しめる!
そして、この各小皿に別々に盛られた各種のソースがこれまた美味い!
このラズベリーソースの甘酸っぱさ! このオレンジソースの爽やかな香りと甘み!
マンゴーソースは濃厚な甘さがあり、
この紅茶のジュレは、紅茶のほろ苦さと香りが絶妙にマッチしている!
こっちのカラメルも非常によく合うし、
このリンゴソースも、リンゴ特有の酸味と甘みがパンナコッタに非常にマッチしている!
様々なソースと、3種類のパンナコッタが複雑に絡み合うこのパンナコッタを食べていると、
まるで上質な音楽が組み合わされて構成された一つの組曲を、
フルオーケストラがすぐそばで演奏しているのを聞いているかのような、
圧倒的な満足感を感じる。このパンナコッタは、まさに、
パンナコッタ組曲、と呼ぶにふさわしい!」