第90話 ヨイチとのデート 十四
パエリアもおかわりした俺たちは、また魔法のハーブティーで消化を早めて、デザートを待った。
少し時間がかかってしまうようで、その間に食べてほしいと、夕方に多めに作っておいたらしいお菓子の盛り合わせを、ウエイトレスが持ってきてくれた。
俺は、とりあえずキャンディーを口に入れた。
「こ、このキャンディーは! とても上質なジャムを固めたのだろう!
一般的なキャンディーのレベルをはるかに超えている!
このキャンディーはいうなれば、
腐らずに簡単に持ち運べる小さい果物そのもの、といったところか!
少しずつ舐めるたびに、そのおいしさによって、思わず笑顔になっていく!
人を笑顔にするこのキャンディーは、
笑顔を生み出す飴玉とでも名付けたい!
これは、テイクアウト用のものがあるなら、帰りに買っておきたいな」
俺は、美味しいキャンディーを舐め終えて、ハーブティーでいったん舌をリセットしてから、クッキーを口に入れた。
「な、なにぃ!? このクッキーを噛んだ瞬間、レモンの強烈な酸味が口いっぱいに広がってきた!
普通のクッキーでは考えられない!
奇抜さもさることながら、このクッキーの本当に凄いところは、一つの菓子としての完成度の高さだ!
普通、料理にしろ菓子にしろ、奇をてらったものは、
最初のインパクトこそあるが、質はあまり高くないことが多い。
だが、このクッキーはどうだ!
酸味と甘み、サクサクとした食感が見事なまでに調和している!
適度な酸味とレモンの爽やかな香りのおかげで、
くどさは全くないから、つい食べ過ぎてしまいそうになるほどのおいしさだ!
奇抜さとおいしさを見事に両立させているこのクッキーは、
奇抜で美味いクッキー、とでも呼べばいいだろうか!
是非、これも買って帰ろう!」
素晴らしいクッキーだった。またハーブティーで舌をリセットして、次は、チョコレイトを食べてみよう。
「こ、このチョコレイトは!
口の中に入れた瞬間、とろっと溶け出してしまった!
ねっとりとした濃厚さを感じさせつつも、優しさも感じさせる、
上品でしっとりとした甘みが、上質なカカオの独特な風味と心地のよいほろ苦さと一緒に、
口の中に広がっていく!
あまりのおいしさに、思わず目をつぶって味わわずにはいられない!
このチョコレイトはさっきのクッキーとは真逆だ!
超一流の製菓技術を、上質なカカオを最大限に生かすことに使うという、
至極ストレイトなコンセプトで作られている!
このチョコレイトは、ただ単純にチョコレイトとしての質が高い!
シンプルすぎる気もするが、これはチョコレイトの一つの完成形かもしれない!
シンプルながらも、
チョコレイトとしての圧倒的な完成度を持つこのチョコレイトを仮に名づけるのであれば、
正統派の超一流チョコ、とでも名付けたい!
これまた、帰りに購入しよう!」
俺たちが、お菓子の盛り合わせをおいしく食べている間に、最初のデザートが出来たようだ。




