第89話 ヨイチとのデート 十三
そして、次の料理が運ばれてきた。見た目で判断すると、パエリアに近い料理だな。俺たちはその料理を口にした。
「な、なんだ? この今までに味わったことのない圧倒的な旨味は!
エビやイカ、数種類の貝、肉や野菜の旨味が、全てコメに凝縮されている!
それでいて、なぜか具材それぞれにも旨味が残っている!
すべての旨味が掛け合わさって、俺の口の中では、まるで旨味のビッグバン状態!
一口噛むごとに旨味という名の宇宙が爆発し、広がり続ける宇宙のように、
俺の身体中に旨味と栄養がしみわたっていく!
圧倒的な美味さで幸せを感じた俺は、
今まで以上に他人に優しく接することが出来るようになった気がする。
この料理を食べた者は心が優しくなり、そしてその優しさは他人に伝わり、
その優しくされた人も他人に優しくするだろう。
そうやって、どんどんと優しさは広がり続ける。
宇宙の膨張ならぬ、優しさの膨張とでもいえばいいだろうか。
食べたものを通じて、家族愛にも似た強い愛情を世界に広げるこのパエリアを仮に名づけるのであれば、
食者他人対家族深愛情抱
とでも名付けたい!
それにしても、こんな美味いものがこの世にあったなんて!
この世界に召喚されたことに感謝せずにはいられない!
俺は今、猛烈に感動している!
まさか、食事でこんな気持ちになることがあるなんて、考えたこともなかった!」