第78話 ヨイチとのデート 二
誤解のないように一応いっておくと、ヨイチはけっこう賢い子で、何も考えていないわけではない。それでいて、自分も、なにより周りを楽しませようと、明るくふるまっているのだ。
ヨイチのそんなところが、俺は特に好きなんだ。尊敬しているとさえいってもいいかもしれない。
それに、割と自分の殻に閉じこもりがちな俺には、ヨイチのような積極的で、俺一人ではかかわることもないような世界に、連れ出してくれる子が必要なのかもしれないな。
俺一人だったら、遊園地なんて下手したら一生いかないかもしれないからな。
何が自分に本当に向いているかなんて、まだわからないし、いろいろな経験をすれば、新たな自分を発見できるかもしれないしな。
まあ、今はそんなことを考えるより、ヨイチとのデートを楽しむことだけを考えよう。考えすぎる癖はもう少し小さくして、ヨイチを見習って、もっと五感や感情を優先させてみるか。
俺も、ヨイチの真似をして、色の違うところだけを歩いてみた。そういえば、子供のころは、こんな些細なことでもたのしめていたな。
正直、それ自体はそれほど面白くはなかったが、楽しそうにしているヨイチを見ているだけで、俺もなんだか楽しくなってくるのでよしとしよう。
さらに道を進むと、ちょっとした出店をまばらに見かけうようになった。
可愛い雑貨を取り扱っている出店の前で、足を止めたヨイチは何点か気になる品があるようだ。
「ゆっくりと見ていきなよ」
「うーん。やっぱりいいよ。せっかくのデートだし。ここには、今度一人でこればいいしね」
そう言って、ヨイチは歩き出した。自分の楽しみより、他人のことを優先するところはいかにもヨイチらしい。
だけど、俺にだけはちょっとくらいわがままをいってくれてもいいんだけどな。むしろ、そうしてほしいくらいだ。
そんなことは格好悪くて言えないが、いつかは、ヨイチに心の底から頼られて、なんでもさらけだしてもらえるような男になりたいな。
俺は、さっきヨイチが興味を示していた雑貨数点を素早く買って、ポケットに入れた。後でプレゼントしよう。そう考えながら、早歩きでヨイチに追いついた。
さらに歩いていくと、わたあめ屋があった。ヨイチは興味がありそうだな。
「食べる?」
「全部は多いかも。昇君、半分こしよっか?」
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