第71話
「やれやれ、なんとも情けない顔をしているナ」
「まあ、そういってやるな。奴を倒しただけでも大したものじゃないか。よくやったな、小僧」
「うむ。僕が思った以上の力だったよ。君は、追い込まれた時にこそ、力を発揮できるタイプのようだね」
「イヴァークさん! イール! ナチャイ! 来てくれたのか! 助かったよ。……もしかして、もっと早くついていたんじゃないか?」
「まあな、たまたま、3人ともほぼ同時に森に着いてな。わしらがここに着いたとき、ちょうど小僧の力が格段に上がったところだったので、これなら大丈夫そうだと思って、観戦しておったのだ。もちろん、やばくなったら、すぐに助けるつもりだったがな」
「雑魚の相手は、僕たちに任せてくれ。君は、ゆっくり休んでいるといい」
「もう少し早く着いていれば、ワタシが奴を殺したノニ。雑魚の相手なんて、つまらないネ」
まあ、なんにせよ助かった。この3人がいれば、魔物が30000体来ようが、300000体だろうが問題なさそうだ。
3人は、森の前の草原で敵をむかえうつため、森を出て行った。N妖精の視界を借りて、彼らの戦いを見物してみるか。
最初に敵が来たのはナチャイのところか。
「朱雀を宿す炎の拳!」
ナチャイの右腕に炎がまとわれる。その右手で正拳突きをすると、巨大な鳥型の炎魔法が放たれた。両翼を広げると、30メートルはありそうだ。
その魔法は、速度、威力、攻撃範囲、操縦性、全てが高水準で、ナチャイはその魔法を巧みに操縦して、10000体近くの魔物を全て焼き尽くした。
「ふん、雑魚がいくら来たところで、ワタシの敵ではないネ」
さすが、普段から自信家なだけあって、すごい実力だな。お、今度はイヴァークさんの所に魔物が来たようだな。
「雷神の鎚!」
イヴァークさんが呪文を唱えると、魔物の群れの中心に雷が落ちてきた。
ハンマーで叩いた衝撃が、叩いたところの周辺にも伝わるのと同じように、その落雷は、直撃していない魔物にも次々と感電していき、10000体ほどの魔物を全滅させた。
さすが、イヴァークさんだな。おっと、イールの所にも魔物が来たようだ。
「王族流剣術・対多数型!」
イールは、風魔法を剣に付与して、1キロ近い風の剣を作り出し、その剣で10000体近い魔物の群れを一刀両断した。
こうして、30000体ほどの魔物の大群は、ほとんど一瞬で全滅したのだった。
その後、なんとかプリッチュ村までたどり着いた俺たちは、村一番の大きな家を一晩貸してもらい、ゆっくりと休んで、翌日ローラリンの街に帰ってきた。
少将や兵士に歓迎され、俺たちは盛大にもてなされた。俺は、ケイべスの最後の思念できいた、アスモデウスという名が気になって、少将に話してみた。




