第69話
間違いない! 解放する邪悪な力のオーラをまとった奴とは、剣を交わすだけで、俺はダークネスの効果を受けてしまうのだ!
だめだ! 奴は強すぎる! くそっ! 恐怖心がどんどん増して、ネガティブな考えばかりが頭に浮かんでしまう。これも、奴の解放する邪悪な力の効果なのだろう。
夜に、精神も疲れて、ネガティブ思考になってしまう、あの感覚だ。今の俺の体は、さながら、疲れ果てて眠る直前の状態だ。
体も、心も最悪な状態だ。いっそ、全てを投げ出して、眠ってしまいたい。こんなことを思うのも、奴の能力のせいだろう。
「くくくっ、だいぶ闇に飲み込まれたようだな。苦しいだろう? 今、楽にしてやろう」
奴が、大振りの攻撃をするのが見える。だが、俺はそれをどうにかする気もおきない。このまま、楽になるのもいいかもしれないな。そう思った俺に、奴は剣を振り下ろした。
ギィン!
その時、矢が飛んできた。矢は奴の剣に当たり、攻撃の軌道が変わって、俺は助かった。
「昇君! あきらめるなんて、君らしくないよ!」
「昇さん、そんな奴に負けないでください!」
「昇さんは、もっと私たちを頼ってくださ~い。私たちだって、昇さんの力になりたいんです~」
「昇殿、拙者も助太刀するでござる!」
眠りに落ちる直前のような、もうろうとした意識を目覚めさせてくれたのは、みんなの、俺への声援だった。
良かった。エルシドは完全に回復したようだ。
「昇、あなたが死んでしまったら、みんな悲しむわよ? もちろん、私もそう。私たちのためにも、あんな奴には負けないで! 昇!」
意識がはっきりしたとたん、エルフィーの思念を感じた。そうだ! 俺はみんなのためにも、死ぬわけにはいかないんだ!
みんなを守りたい、悲しませたくないという思いが強くなった時、俺の身体の中心から、光がすごい勢いで湧き出して、あふれだした。
すると、光のおかげだろうか? 体のだるさも、眠気も、恐怖心やネガティブ思考も、解放する邪悪な力の効果が全て吹き飛んだ。
俺は、光魔法に目覚めたようだ。以前聞いた話だと、光魔法は、ごく限られた人間にしか使えないらしいのだが。
俺の身体からあふれ出した光は、俺の身体を覆った。その効果だろう。力がどんどん増していく。
「ば、バカな! 俺の解放する邪悪な力の呪いを、人間ごときに破られるなんて! ま、まさか、お前は光魔法が使えるのか? ……まあいい、今からは、単純な力比べだ! まあ、俺が人間ごときに負けるわけはないがな! 解放する邪悪な力・身体能力強化型邪悪力!」
キィン!
奴の身にまとっている黒いオーラが増して、奴が切りかかってきた。俺も応戦する。3分くらい戦い続けて、はっきりとわかってしまった。
光魔法で強化され、シースが強化歌を歌ってくれて、さらに俺を強化してくれているのだが、それでも奴の方が強い。このままでは、いつか隙をつかれて深手を負ってしまうだろう。




