第68話
爆発させることが出来る火の玉を数個飛ばし、回復する時間をかせぐ。
爆発させるものの、奴には簡単に避けられてしまう。やはり、手の内がばれていては、奴を爆風に巻き込むことは難しい。
だが、その間に完全に回復することが出来た。ただ、火の玉型爆発魔法と回復魔法で、だいぶ魔力を消耗してしまったな。
奴には、遠距離攻撃魔法を使っても跳ね返されるだけだし、もう爆発型魔法も通用しないだろう。
やはり、接近戦でどうにかするしかなさそうだな。
「電撃的身体能力強化!」
俺は、雷魔法を身体にまとわせた。これで、身体能力、特にスピードが格段に上昇する。ただ、この技は、魔力の消耗が激しいので、素早く戦闘を終わらせたいな。
この状態では、かなりの威力を持つ、電撃魔法弾を剣の先から連射することが出来るのだが、魔力の消耗がさらに増してしまうし、奴には反射されるだけだろうから、使わない方がよさそうだな。
「ほう、なかなか面白い技を使うな。実は、俺も似たような魔王が持つ特殊能力を持っているのだよ。体力や魔力を消耗してしまうのが難点なのだが、見せてやろう! 解放する邪悪な力!」
奴が叫んだと同時に、奴の身体に暗黒のオーラがまとわれた。
禍々しいそのオーラの影響か、少し体がだるくなった気がする。
「くくくっ。お前ら人間は、闇に本能的な恐怖心を抱くんだってなあ? それに、夜になると、眠気を感じ、体がだるくなり、全体的に能力が低下するとも聞く。なんとも不便な下等生物よな。俺の魔王が持つ特殊能力は、まさに闇や夜そのもの。お前に勝ち目はない」
くそっ。たしかに、この体のだるさは、夜のそれだな。俺たち人間には、奴の魔王が持つ特殊能力は相性が悪すぎる。
だが、やるしかないんだ! 俺が奴に向かって突進すると、奴は剣の先から暗黒魔法弾を撃ってきた。速度が速い! 俺は盾で受け止めた。
ドゥン!
今までに経験したことのない、特異な衝撃を感じた瞬間、体のだるさがさらに増した。こんな状況なのにもかかわらず、眠気まで感じる。
奴は、笑みを浮かべている。おそらく、奴の暗黒魔法弾を、盾ごしであろうと受けてしまうと、奴のディアボロである、ダークネスの、俺への影響力が増してしまうのだろう。
ダメージ自体はないものの、あの効果が厄介すぎる。できるだけ、暗黒魔法弾はかわすようにしよう。俺は再度、奴に向かって突進した。
何発も暗黒魔法弾を撃たれるものの、それらを全てかわして、奴に近づき、切りかかった。
キン、キン、キィン!
奴は俺の剣を盾で受け止め、俺に切りかかってきた。俺も負けじと盾で受け止め、切り付ける。数十回、奴と剣を交わしていると、どんどん体が重くなっている気がする。……まさか!
俺が驚きながら奴の顔を見ると、奴はニヤッと笑った。




