第66話
そう考えていると、エルフィーからテレパシーが来た。どうやら、魔力が溜まって、上級攻撃魔法を使う準備ができたようだ。
よし! それならば、なおさら俺が切りかかって、魔法を命中させるための隙を作らなければな。
俺は、奴の相手をする決心を固めて、奴に切りかかった。奴は、俺の攻撃を軽く受けて、反撃してきた。
ムサシと同時に相手をしているというのに、奴の斬撃は速くて、とても重い。
盾で受けるのがやっとで、剣で受けようものなら、簡単に弾き飛ばされてしまいそうだ。
それでも何とか、エルフィーがこっそり奴に近づくのをさとらせない程度には、奴の注意を引き付けられている。
よし! エルフィーは充分やつに近づくことができた。後は、奴に隙を作らせることができれば、勝ちが見えてくる。
俺は、エルフィーにテレパシーで合図を送り、危険を承知で、わざと隙を作った。
案の定、奴が大振りの攻撃を仕掛けた瞬間、エルフィーが、魔法を放った。
「悪を滅する業火!」
「バカめ! 魔法反射!」
くそっ! エルフィーに気が付いていながら、気づいてないふりをしていたのか! 奴は、エルフィーの魔法を、俺に向けて反射させた。
態勢を崩したままの俺は、かわすこともできない。大きな炎が、俺の目前に迫ったその時。
「守るための位置交換!」
エルシドが叫んだかと思うと、俺とエルシドのいた場所が入れ替わった。
次の瞬間、エルシドは巨大な炎に包まれた。
「エルシドー! くそっ! 消火するための水魔法!」
ムサシが奴の相手をしている間に、俺は消火魔法に全力をそそいだ。30秒ほど魔法を使い続けると、エルシドにまとわれていた炎が消えた。
良かった。全身が焦げて、大きなダメージは負っているものの、命はある。
悪を滅する業火は、邪悪なものに効果が高いが、聖騎士であるエルシドのような、聖属性が強いものには効果が低い。その特性が幸いした。
「シース、強化歌はいいから、エルシドを回復してあげてくれ」
「はい、わかりました!」
「ヨイチも、多少は回復魔法を使えるだろう? エルシドを頼む」
「うん、任せて!」
くそっ! 俺が、みんなの前でエルフィーとキスすることをためらわずに、三つめのスキルを使っていれば、エルシドはこんなめにあわなくても済んだかもしれないのに!
今は後悔している場合じゃないな。シースの強化歌もなくなり、ムサシはかなり押されている。急がねば。
俺は、エルフィーのもとに駆けだした。エルフィーも俺と同じことを考えているようで、俺に向かって走ってくる。
俺たちは、しっかりと抱き合い、ディープキスをする。その瞬間、俺たちの肉体は混ざり合い、俺たちは、新しい一人の人間になった。
三つめのスキル、愛し合う者同士の融合の効果によって、俺の能力と、エルフィーの能力が掛け合わされる。




