第64話
「なんだって? それは大変だ! もしかして、それって魔王なのかな?」
「そこまでは分からないでござるが、その可能性は十分にあるでござる」
俺は、急いでイヴァークさん、イール、ナチャイにN妖精を介して連絡をとった。
「なんだと? 分かった。すぐ行くから安心せい、小僧」
「ふむ、わかった。高貴な僕が、わざわざ出向いてあげよう。感謝したまえ」
「そうカ。ここに来る魔物が弱すぎて、退屈していたとこダヨ。そいつがましな強さなら楽しめるかもしれないネ。すぐに向かうヨ」
みんなここにきてくれるようで、安心した。後は、先に魔物が来ないことを祈りながら、戦闘の準備を整えるだけだな。
俺は、テレパシーを使い、召喚可能なみんなに、準備をしておいてくれるように頼んだ。
それから、3時間くらいたっただろうか。ペガサスが強大な魔物の気配を察知したようだ。
まずいな、イヴァークさんたちは、まだ誰も到着していない。俺とムサシで何とかするしかなさそうだな。
俺は、エルフィー、シース、ヨイチ、エルシドを召喚した。みんなと、顔を見合わせると、自然に気合が入る。みんなを守りたい気持ちが、俺を強くさせる、そんな気がした。
そう思った次の瞬間、その気持ちを吹き飛ばすような、強烈なオーラを全身に感じた。
吐き気をもよおさせるような不快なオーラは、同時に強い圧力を持っていて、まるで重力が何倍にもなったように俺たちの体を重くさせる。
「ラララ―ラララララ―」
シースが邪気を払う歌を歌ってくれたおかげで、俺たちに重くのしかかっていた、敵のオーラのかせははずれた。
「シース、ありがとう。助かったよ。あのままでは、力を出せずにみんな殺されていたかもしれない」
「いえいえ~皆さんのお役にたてて、私とってもうれしいです~」
シースに礼を言っている間に、敵は目視で確認できるところまでやってきた。
見た目だけでいうと、ほとんど人間の男とかわらないな。装備は剣と盾、鎧と兜か。シンプルだが、隙が無い。他の魔物は連れていないようだ。自分の強さに自信があるのだろう。
しかし、奴から感じられる力から察するに、俺とムサシ以外は、奴に近づかない方がよさそうだ。
ヨイチはもちろん、エルシドにも遠距離で戦ってもらおう。エルシドも、得意ではないとはいえ、弓を扱えるからな。
エルフィーとキスをしているときに会得した三つのスキルのうちの一つ、愛されて強くなる者の効果によって、エルフィーが近くにいる今、俺の能力は飛躍的に上昇している。
さらに、二つめのスキル、愛と力を与える者の効果で、エルフィーの能力も格段に高まっている。




