表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/116

第63話  

 クマの魔物は、ムサシのでかたをうかがっている。というよりは、ビビっているといった方が近いかもしれない。


 先に動いたのは、ムサシの方だった。ムサシは一瞬で奴の目の前に移動した。あまりのムサシの速さに、あわててクマが攻撃を仕掛ける。


 奴が振り下ろした腕は、空を切るだけだった。その瞬間、奴の身体中から血が大量に吹き出し、奴の身体は細切れになりながら地面に落ちた。


 奴のいたすぐ後ろで、ムサシが剣を収めている姿が目に入った。俺と手合わせした時にも見せた、高速で敵の背後に回り込む技を使ったのだろう。


 ムサシは俺に笑顔を向けた。かわいいんだけど、返り血を全身に浴びて、ちょっと怖いな。


「どうでござったか? 拙者の戦いぶりは?」


 ムサシが嬉しそうに俺に質問する。なんだか、すごく褒めてもらいたそうにしているな。


 エルシドやヨイチもそうだが、褒められたがる女の子は、俺はかわいいと感じる。なんだか、子犬や子猫が、構って、撫でて、とせがんでくるときと同じようなかわいさを感じてしまうのだ。


「すごく良かったよ」

「ふふっ、そうでござるか」


 格好良かったと褒めようかとも思ったが、俺の分析では、ムサシはかわいいと言われた方が喜ぶタイプのようだし、やめておいた。


 褒められて嬉しそうなムサシは、俺から離れずに、上目づかいで俺を見つめている。


 なんだか、頭を撫でてほしいと言われている気がしたので、ゆっくりと、ムサシの頭に手を乗せた。


 ムサシは、全く抵抗しないで、むしろ嬉しそうな顔をしている。そのまま、俺がよしよしと頭をなでると、とろんとした、気持ちよさそうな表情になった。


 その顔が、とてもかわいらしくて、俺は無言で、ムサシの頭を何分も撫でていた。


 撫でている最中に、ふとムサシがあびた返り血が気になった。


「そんなに返り血がついていたら、せっかくのかわいらしさが台無しだね。じっとしてて、俺がきれいにするよ」


 俺は、水魔法を応用した、洗浄魔法を手のひらにまとわせ、ムサシの着物についた返り血を、手のひらでこすって落としていった。


 わきの近くや、胸の近く、おなか、ふとももやお尻の部分の着物を触るときは、ムサシに確認したが、問題ない、やってほしいということだった。


「く、くすぐったいでござる」


 それらの場所を触るときは、ムサシはくすぐったがりつつも、少し気持ちよさそうな表情になる。


 その顔が、かわいらしいと同時に、色気も感じさせるため、俺はドキドキしながら、ムサシの着物をふいていた。


 ふき終わると、ムサシは少し残念そうな表情をした。と思ったとたん、今度は急に真面目な顔になった。


「昇殿、たいへんでござる。さきほどの戦闘で、拙者はちょうどレベルアップして、悪い予感という、自動発動型のスキルを会得したのでござるが、そのスキルによると、数時間後に、ここに強大な力を持つ魔物が来るようなのでござる。おそらく、その魔物は拙者よりも力は上でござる」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ