第62話
まだそんなに親しくなっていない女の子と、一緒に温泉に入るのも落ち着かないので、俺は早々に温泉を出て、ペガサスの所まで戻ってきた。5分ほどたつと、ムサシも戻ってきた。
ムサシが来る前に、俺はみそ汁を作り始めていて、途中からムサシもみそ汁づくりに加わった。二人で協力して作っていると、だんだんさきほどの気まずさは解消されていった。
ペガサスに、腹持ちの良い植物がある場所を教えてもらい、ムサシと一緒に取りに行って、取ってきたその植物をムサシが料理してくれた。みそ汁もあるし、この状況にしてはそこそこの朝食ができあがったな。
「うん、おいしいね。ムサシは料理が上手なんだね。性格もかなり女の子らしいし、振る舞いや笑顔だってかわいいのにもったいないな。男装をやめるつもりはないの?」
「そ、そうでござるね。……考えてみるでござる」
ムサシは褒められなれてないのか、すごく照れくさそうにしている。
俺たちが、朝食を食べ終えて1時間ほど雑談していると、ペガサスがやってきた。
「どうやら、この森にかなりの力をもつ魔物が入ってきたようだ。お前たちの話の通りだな。対応はまかせるぞ」
俺たちは、戦闘の準備を整えて、敵を待ち構える。
「近いな、心の準備をしておけ」
ペガサスがそういってからすぐに、でかくて強そうなクマ型の魔物と、同じく10匹ほどのクマ型の魔物が現れた。
俺の見立てでは、ボスらしい魔物は、エルフの森で戦ったミノタウロスの魔物と同じくらいの力だろう。
俺一人では安全に勝てるかどうかわからないが、みんなを召喚すれば楽勝だろう。
だが、みんなにはプルーメやエルフの里を守ってもらっている。ここに召喚してしまっては、守備がうすくなってしまうから、できることなら召喚はしたくないな。事情をムサシに説明した。
「分かったでござる。これくらいの魔物なら、拙者一人で十分。昇殿は、拙者の戦う姿を見ていてほしいでござる」
「そういうことなら、お言葉に甘えて、そうさせてもらうよ。やばそうなら、助太刀するからね」
ムサシは笑顔でうなずいた。同時に、10匹ほどのクマ型の魔物が一斉にムサシに襲い掛かった。
「抜刀術・一閃」
ムサシが、抜刀する勢いを利用して、大きな斬撃の衝撃波を飛ばした。その斬撃をまともにくらって、10匹ほどのクマ型の魔物は、ほとんどが瀕死の傷を負っている。
「抜刀術・二の太刀」
ムサシは間髪いれずに、今度は左手に握った剣で、抜刀し、斬撃を飛ばす。
雑魚のクマの魔物は全滅したが、ボスのクマの魔物は、ムサシの衝撃波を、鋭い爪で受け止めていた。やはり、奴は他とは格が違うな。