第61話
俺たちが1時間ほど探していると、ペガサスの方から姿を現した。
事情を説明すると、すんなり納得してくれた。ペガサスも、魔物よりは人間の方が好きなようだ。
「我は寝なくても大丈夫だが、お前たち人間はそうもいかんだろう。敵が来たら起こしてやるから、安心して眠るがいい」
もう日が沈んでしまったし、ペガサスの言う通り、今日はもう寝よう。特に危険もなさそうだし、リョフは元の世界に戻して、俺とムサシは、ペガサスの近くで寝た。
翌朝目を覚ますと、ムサシの姿が見えない。ペガサスに聞くと、近くの温泉にいったそうだ。
それなら、俺も入りに行くかな。男同士、裸の付き合いで親睦を深めよう。
歩いていくと、硫黄の匂いがしてきた。もう少し進むと、ムサシの着物を発見した。着物はきれいに折りたたまれている。
几帳面な奴だなと思いつつ、俺も服を脱ぎ、温泉に入った。お湯は濁りが強い白濁湯だ。湯気で分かりづらいが、かすかに人影が見える。
おそらくムサシだろう。俺がムサシらしき人影にかなり近づくと、急に強い風が吹き、湯気が吹き飛んだ。
その瞬間、俺の目に映ったのは、裸のかわいい女の子が、温泉の岩に腰かけている姿だった。
その女の子は、まぎれもなくムサシだった。俺が驚いたままたちつくしていると、ムサシも俺に気づいた。
「な、なにをしているのでござるか?」
ムサシは驚き、素早く白濁湯につかって、体を隠した。
「い、いや、のぞくつもりはなかったんだ」
「そんなことはいいから、とりあえず湯につかってほしいでござる!」
「あ、ああ。ごめん」
ムサシに指摘されて、俺もあわてて湯につかって体を隠す。
気まずい沈黙が続く。それにしても、解せない点がある。さきほど見たムサシは、とても胸が大きかった。シースほどではないが、エルシドくらいの巨乳だ。着物を着ていた時は、まっ平だったのだが。
「お、女の子だったんだね? なんで男装なんてしてたの? それに、その……胸はどうやって隠してたんだい?」
「確かに、拙者は女でござる。男装をしていたのは、女だと侮られてしまうかと考えたためでござる。
拙者の国では、あまり女の戦士はいないのでござる。
胸は、魔法のさらしでごまかし、さらに着物には、着ている者を男だと思いこませる、若干の幻惑効果があるのでござる」
「そうなんだ。ごめんね。女の子だって知らなかったから、友情を深めようと思って、一緒に温泉に入ろうとしたんだけど、こんなことになってしまって」
「いえ、昇殿に黙っていた拙者が悪いのでござる。昇殿が気にすることはないでござるよ。それに、裸を見られたのが昇殿でよかったでござる」
「えっ? それってどういう意味?」
俺が問いかけると、ムサシは顔を真っ赤にした。
「な、なんでもないでござる。今言ったことは、聞かなかったことにしてほしいでござる」




