第60話
「では、誰がどこを担当するかだが、万が一、魔王に遭遇した時のことを考えて、真ん中の神獣は、昇君とムサシ君が担当してくれ。
僕たちは、それぞれ遠くの幻獣を担当しよう。この中に、テレパシーを使える者はいるかい?」
「それなら、俺が担当しましょう」
俺は、みんなにN妖精を渡した。戦闘力は低いが、ポケットに入るほど小さく、携帯電話代わりに使うには最適だろう。
「おお、やるじゃないか。昇君」
「さすが、召喚士として一流でござるな」
「うむ、見直したぞ。小僧」
「まあ、戦闘力が低い分はおおめに見てあげるヨ」
みんなにも、多少認めてもらえたようだ。
「うむ。話は決まったようだな。では、そういうことで、よろしくお願いするよ」
そう言うと、少将は部屋を出て行った。
――コンコン
ちょうど、会議が終わるまでを思い出し、装置を外したところで、誰かがドアをノックした。
エルフィーと顔を見合わせる。ここは、俺が出るべきだろう。
俺がドアを開けると、そこに立っていたのはムサシだった。俺を迎えに来てくれたようだ。
俺の顔を見るムサシの表情は、とても嬉しそうだ。特にそのけはない俺でも、ムサシの笑顔をかわいいと思ってしまった。
ムサシに少しだけ廊下で待ってもらい、ドアを閉めた。
「じゃあ、行ってくるよ」
「けがはしない程度に頑張ってね。それじゃあ、行ってらっしゃい」
俺たちは優しく抱き合い、いってらっしゃいのキスを交わした。ふふ、なんだか、新婚夫婦のようなやり取りだな。
エルフィーのおかげで、やる気がみなぎってくる。エルフィーをいったん別の世界に戻して、ドアを開ける。
「昇殿、なんだかすごくうれしそうでござるね」
「そうか? まあ、気にしないでくれ」
エルフィーのことを考えると、つい顔がにやけてしまうな。ここからは気を引き締めなおそう。俺は顔を軽くたたいて気合を入れた。
ムサシと一緒にローラリンの街の門を出て、リョフを召喚した。リョフの愛馬に3人で乗って、プリッチュ村を目指して馬を走らせる。
俺の後ろに乗っているムサシが、俺をぎゅっと抱きしめる。やはり、ムサシは男にしては筋肉が無くて、柔らかい体をしているな。まるで女の子みたいだ。
そんなことを考えつつ、リョフにしがみついたまま、馬はものすごいスピードで走り続ける。
数時間後、俺たちは無事にプリッチュ村に着いた。村長に話を聞くと、この村の近くの森にはペガサスが生息していて、神獣として崇拝しているらしい。
俺たちは、ペガサスがいそうな場所を聞き出し、そこに向かった。ペガサスの森の入り口までは馬で来たが、ここからは歩くしかなさそうだ。
森の中では、何回も魔物に遭遇したが、俺たちの敵ではなかった。
ざっくりとした地図を見る限りではここら辺にペガサスがいるはずだな。
「騒がしいと思えば、人間か。何をしに来た?」




