第54話 エルフィーとのデート Ⅷ
その疑問は、トラの赤ちゃんと触れ合う場面でほぼ確信に変わった。
俺の中で、この世のかわいさランキングのトップ50には間違いなく入るであろう、トラの赤ちゃん。
そのトラの赤ちゃんを優しく抱っこしているエルフィーを見て、俺はエルフィーの方がかわいいと思ってしまった。
まさかこの俺が、トラの赤ちゃんよりも、女の子をかわいいと思ってしまう日がくるとはな。正直、想像したこともなかったよ。
エルフィーは、俺の想像の限界を超えてきた。もう間違いない、俺は今までの人生で初めて、本気で女性を愛しているのだろう。
とはいえ、俺はシースもヨイチもエルシドも、アレクやリョフやエルファさんやラビィさんのことも好きだからな。
彼女たちとデートをしてから、もう一度自分の気持ちを整理しよう。
今は、エルフィーへの愛が大きいのは事実だが、みんなとのデートが終わるまでは、とりあえずこの気持ちにはふたをしておこう。
その後もレッサーパンダや子犬やモルモットやウサギやハムスターなど、俺が大好きなかわいい小動物たちと触れ合える機会でも、俺はことごとくエルフィーに見とれてしまった。なんだか、悔しいような嬉しいような、不思議な気分だな。
園内を見て回った俺たちは、喫茶店で小休止することにした。お茶と茶菓子を食べながら、先ほど見た動物について話し合う。
「そういえば、同じ種類の動物でも、体の大きさに随分差があるわよね」
「ああ、それは、生息している地域の平均気温が大きく関係しているんだよ。ざっくり言うと、寒い地域の種類は大きく、熱い地域ほど小さくなるんだ」
まずいな、もっと詳しくうんちくを語りたくてうずうずしてしまう。
自分でも自覚しているのだが、俺は理屈っぽい話が大好きで、うんちくを披露したり、宇宙や古代文明や、人間の脳の特性や動植物の能力や経済学の話など、一般的な女子が全く興味のない話を女子にしてしまい、つまらなそうな反応をされることがよくある。
この手の話なら誇張なしで、何時間でも話し続けられるほど好きだ。
逆に、有名人の不倫や殺人事件のニュースやオリンピックなど、芸能・事件・スポーツの話には全く興味が無い。
女子はそういう話題、特に芸能スキャンダルを好むが、聞いてる俺はまったく楽しくない。もちろん、どういう話題を好むかは、個人の好き嫌いの問題なので、正否、善悪、優劣をつける気は全くない。あくまで、俺の個人的な好みの話だ。
俺は、とうとううんちくを語りたい気持ちを我慢しきれずに、ついつい先ほどの法則の理屈を語ってしまった。
動物の体重と表面積の割合による熱生成と保温能力の話から始まり、緯度ごとの気温の関係から海流や季節風の話になり、さらに緯度で民族の肌の色が大体決定する理由など、語りだすと、次から次へと関連する知識を語ってしまう俺のクセが出てしまった。
まずいな。特に女子と話すときは、このクセは封印しているのだが、またやってしまった。




