第42話 アルミラージの魔人との戦闘
みんなが時間をかせいでくれたおかげで、ばっちり回復した。
しかし、エルシドとヨイチの二人がかりでも、分が悪い。エルフィーの魔法は、奴には全く聞いていない。
いや、それどころか、奴は魔法を吸収する特性があるようだ。おそらく攻撃魔法は、逆に奴に力を与えてしまうだけだろう。
俺はエルシドとヨイチの前に立った。
「二人とも、お疲れさま。奴には攻撃魔法はきかないようだ。みんなはシースに回復してもらっていてくれ」
「でも、昇君、大丈夫なの?」
「ああ、今の俺には、みんなの応援があるからね」
俺は、愛の力を発動させた。
「そうですね。この状態の昇さんなら安心しておまかせ出来ます」
「そうね。昇。信じてるわよ」
「ああ、みんなはゆっくり休んでいてくれ」
「ふん、さっきよりは多少ましになったようだが、人間ごときが調子に乗るなよ!」
奴は、素早く距離を詰めてきた。
「分身」
「ふん、くだらん」
俺が出現させた分身は、奴の右の手のひらから発せられた波動にかき消された。
「ショットガン」
俺が驚いている隙に、奴はさらに近づき、右ストレートを連打してきた。あまりの速さに、手が10本以上あるかのように見える。
俺は、たまらず盾でガードした。パンチは受けきれるものの、視界は狭くなってしまう。
俺の死角から、奴は俺の懐に入ってきた。近すぎて、剣ではまともに攻撃できない。
俺は、奴の強力な左フックを脇腹にくらってしまった。愛の力の効果で防御力も上がっているのだが、鎧越しでもめちゃくちゃ痛い。
奴の素早い動きに対応するには、今の戦闘スタイルでは無理だ。俺は、剣や盾を足元に置き、鎧と兜も外した。
攻撃を受けた際のダメージは増えてしまうが、それ以上にかわすことを優先する。
まさか、昔からやっているキックボクシングが、こんな形で役に立つ日が来るとは思っていなかったな。
俺と奴はステップを踏み、軽いフェイントをかけ、様子をうかがう。奴が左ジャブを打ってきた。
ビリッ! ガードをした腕がしびれる。ただの左ジャブでこの威力かよ。うかつにガードはできないな。できるだけかわしていこう。
奴は、左ジャブを連打して、ときおりキックを織り交ぜてくる。ブオン! 空を切るキックの音からして、威力の高さがうかがえる。
ラビィさんも言っていたが、ウサビトの最大の武器は足技らしい。おそらく、奴もそうだろう。パンチ以上に警戒しなくては。
しかし、奴のハイレベルな攻撃力と攻撃速度を目の当たりにしてしまうと、攻撃を仕掛けるのにはなかなか勇気がいるな。
だが、防戦一方では勝てるわけがない。勇気をだして、俺からも攻撃を仕掛けなくては!
防御に徹しながら、分析眼で奴の動きを分析した結果、奴の攻撃パターンは大体つかめたからな。
俺が奴に近づく、奴は左ジャブを打ってきた。それをかわし、さらに近づくと、右手でショットガンを打ってきた。
ショットガンをもろに受ける。だが、それは分身だ。予想通り、このタイミングで使えば、奴でも簡単には見分けがつかなかったようだ。
本体の俺は、少し下がった位置で隙をうかがう。今だ! ショットガンの打ち終わりに合わせて、一気に距離を詰め、ワンツーを打つ。