第30話 進化石 Ⅱ
「じゃあ、入れるからね。力を抜いて、リラックスしてね」
「はい~。昇さんを信用してますから怖くはありません~。私の中に入れてください~」
「いくよ!」
目をつぶっているシースに、俺は一気に入れた。その時に、シースの左胸に触れた。なんて柔らかくて気持ちいいのだろう。指を動かせばどれくらい気持ちよくなれるのだろうか? 俺は、シースの爆乳を揉みたい気持ちを必死に抑え込んで、そのまま手を戻した。
若干緊張していたシースの顔が、気持ちよさそうな表情に変わる。心配していたが、痛いとかつらいとかいうことはなさそうで安心した。
1分位たっただろうか。シースの全身が明るい緑色に輝き始めた。その瞬間、俺の脳内に進化の説明文が浮かんだ。
近接戦闘、攻撃魔法、回復魔法、仲間への支援スキル。これらの中から、習得したり強化したい2つを選択できるようだ。シース本人と相談した結果、支援スキルと攻撃魔法に決定した。
シースの輝きが強くなり、光は体内に入っていった。どうやら、進化の儀式は終わったようだ。シースのステータスを確認してみる。
SRからSR+になって、数種類の支援スキルと攻撃魔法を新たに習得している。各ステータスもかなり上昇している。これだけ能力が上がっているのに、コストは変わっていなかった。ありがたい。
「体調は大丈夫かい?」
「ええ~。すごく良くて、いつもより体が軽いくらいです~」
「そうか、それは良かった。それで、どうだい? 強くなった感覚はあるかな?」
「そうですね~。なんだか、力が湧いてくる感じです~。これからは、戦闘中でも、私も皆さんのお役にたてるように頑張ります~」
「ありがとう。頼りにしてるよ」
無事に儀式も終わり、俺たちは早々に集会所を出た。あれ以上、シースと二人きりでいたら、我慢しきれなくなってしまう。
「あっ、昇。儀式が終わったのね? それで、上手くいったの?」
「ああ、バッチリだ。シースは攻撃魔法と、支援スキルが使えるようになったよ。後で、シースに攻撃魔法を教えてあげてくれないかい?」
「ええ、いいわよ」
「それで、昇君。儀式ってどんなことをしたの?」
「えっ? ……うーん。ちょっと説明しにくいな。いずれまた進化石が手に入ったら、ヨイチに使うこともあるだろうから、その時のお楽しみってことで」
「ふーん、秘密にするんだあ? まあ、言いたくないなら無理にとは言わないけどさ」
ヨイチはちょっと不機嫌そうになった。案外、ヨイチはこういうことに鋭いんだよなあ。
「昇さん。私ももっと強くなって、昇さんやみんなが安心して戦えるような、パーティーの守備のかなめになりたいです」
「おっ。エルシドらしいね。その気持ちはありがたいけど、また進化石が手に入った時に、誰に使うのがいいのかをしっかり考えなくちゃいけないから、エルシドに使うかどうかはまだわからないよ」
「そうですよね。……ええ、その方がいいと思います」
エルシドは少ししょんぼりしてしまった。しかし、最初にあった時とは比べ物にならないくらい、エルシドは表情豊かになったな。
おそらくエルシドは、もともと明るいんだけど、家族や仲のいい人以外にはあまり自分をさらけ出すことが出来ないタイプの子なんだろうな。
俺や他の3人に接する時と、それ以外の人に接する時では、明らかにエルシドの対応が違うからな。それだけ、エルシドが俺たちに心を開いてくれてるってことが、俺はうれしかった。
みんなと話していると、おなかが減ってきた。そろそろ昼食の時間だな。
エルファさんたちと昼食を取っているときに、エルファさんが興味深い話をしてくれた。
「昇様。このエルフの森の最深部には森の精霊がすんでいるらしいのです。私は見たこともないのですが、数代前の長は、精霊に会ったことがあるそうなのです。そして、精霊から加護を与えられたらしいのです」