第２６話 テイヌシュ大会決勝戦
強烈な回転のかかったボールは、ククククッと大きく曲がり、俺のシングルスゾーンぎりぎりに入った。まさか、これを狙ってやったのだろうか。いわゆるポール回しという技。もし、これを狙ってやったのだとしたら、エルファさんはとんでもなくテニスが上手い。俺の持てる力をすべてぶつけないと、エルファさんとは勝負にすらならないだろう。
「愛の力」
ヨイチとの試合で発現した新スキルを、早速発動する。これでまともな勝負になるはずだ。俺が高速サーブを放つ。エルファさんは打ち返してきた。初見では、サービスエースを取れるだろうとたかをくくっていた俺が甘かった。油断して、反応が遅れてしまった。
だが、それでも十分間に合うだろうと思ったその返球は、全く弾むことはなく転がり、ポイントを取られてしまった。まさか、これも狙ってやったのだろうか？ ノーバウンドドロップ。こんなものをホイホイ打たれたら勝てるわけがない。なんとかこれを打たれないようにゲームメイクするしかないな。
その後もゲームを取られ続け１セットを取られてしまった。だが、じっくり観察して分かったことがある。ノーバウンドドロップは、俺が打った特定のボールにしか使ってこない。いや、使えないのだろう。それに、予備動作も分かりやすい。となれば。
俺はわざとノーバウンドドロップを打ちやすいボールを打った。案の定、エルファさんはノーバウンドドロップを打つ予備動作をしている。俺はダッシュの準備をした。エルファさんがノーバウンドドロップを打った瞬間、俺は全力でダッシュした。
ほぼネットの真上、ギリギリ俺のコート側に入った瞬間に俺は強烈なスマッシュを放った。さすがのエルファさんでも触ることもできずに、俺はポイントを取った。よし！ これでノーバウンドドロップには対応できるようになった。勝ちが見えてきたぞ。
「素晴らしい観察力と判断力です。昇様。……この技は使いたくなかったのですが、こうなっては仕方がありません。分身」
エルファさんが呪文を唱えると、エルファさんの分身が現れた。おいおい、これじゃダブルス対シングルスじゃないか。勘弁してくれ。
その後は、ツイストサーブ、ポール回し、全体的に高い身体能力と、抜群のテニステクニック、何よりも、これらを二人がかりで攻めてくるダブルに、俺は全く歯が立たなかった。２セット目も簡単に取られてしまった。
くそっ、せめて１対１なら何とかなりそうだったのに！ ……待てよ。そうか！ 俺もダブルが使えれば、勝てるかもしれない。
「分析眼」
エルファさんがダブルに使っている魔力の種類を分析した。愛の力で魔法センスも高まっている今の俺なら使えるかもしれない。
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