第111話 エルシドとのデート 五
「俺をかばってくれた、エルシドの気持ちはすごくうれしいけど、俺も結構強くなったんだし、多少のことは平気だ。何より君は女の子なんだ! もっと自分を大切にしてくれ!」
つい、荒っぽい口調になってしまった。だが、エルシドには無茶をしてほしくないから、多少強く言った方が良かったのかもしれない。
「すいません。でも、とっさに体が動いてしまったんです」
エルシドは少し、しょんぼりしてしまった。
「いや、君を責めているわけではないよ。君が俺のことを大切に思ってくれていることは、とても嬉しいんだ。ただ、俺にとっては、自分が傷つくことよりも、君が傷つくことの方が何倍もつらいんだ。だから、俺が君に守られるんじゃなくて、俺が君を守りたいんだ。そのことを分かってほしい。君が、俺のことを大切に思っていてくれているのなら、これからは、もっとエルシド自身を大切にしてほしいんだ」
俺の言葉を黙って聞いていたエルシドは、急に泣き出し、俺に抱きついてきた。
「……ぐすっ。昇さんはずるいです。そんなことを言われてしまっては、ますますあなたを守りたくなってしまうじゃないですか! あなたは私を守ってくれるのに、私にはあなたを守らせてくれないなんて、そんなのずるいですよ。昇さんは、敵と戦うときに、私たちを守るために、いつもボロボロになっているじゃないですか! 私たちは、昇さんに何かありはしないかと、いつも不安なんです! 私だって、もっともっと、あなたの力になりたいんです! あなたを守りたいんです! その気持ちも、わかってください! 私は、あなたを守れるのなら、自分が死んでも構わないんです!」
あのエルシドが、大声を出して、自分の気持ちをさらけだしてくれるなんて。
エルシドが、俺に本音をみせてくれたことが、とても嬉しいと同時に、俺は大きな衝撃を受けた。
俺は、強さが足りないばかりに、エルシドやみんなを、こんなに心配させてしまっていたんだな。
いや、本当は、既に気が付いていたのかもしれないな。だが、気づかないふりをしていた。
みんなが、俺を心配してくれているからといって、俺が、自分が傷つくことを恐れて戦えば、結果的に、みんなが傷つけられてしまうだろう。下手をしたら、死んでしまうかもしれない。
そう思って、ここまで戦ってきた。この先、みんなを心配させないための最良の方法、それは、俺が圧倒的なまでに強くなることだろう。
どんな敵と戦っても、彼女たちが安心して見ていられるほどの絶対的な強さ。それさえあれば、彼女たちを不安にさせることもないだろう。
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